昭和の時代を知っている人なら懐かしい、家庭用のクーラー。今はエアコンと呼ばれることがほとんどだけど、何が違うのだろうか? そして、その仕組みはどうなっているのだろうか?
クーラーとエアコンの違い
クーラーとは、Cool+er=冷やすもの。冷房機能のついた装置を指す。
エアコンとは、エアコンディショナーの略で、空気の温度・湿度を総合的にコントロールするもの。冷房と暖房、加えて除湿ができる装置を持つことが多い。
つまり、クーラーはエアコンの一部、仲間といえる。そこで、エアコンの冷暖房のメカニズムをご紹介する。ここから、クーラーの仕組みをご理解いただきたい。
エアコンの原理は熱力学を応用したもの
物質は「固体」「液体」「気体」の3種類の状態(=「物質の3態」)があり、エアコンの冷房と暖房、除湿機能はその変化を利用している。
「液体」が「気体」になることを「蒸発」というが、その時周囲の熱を奪う。注射の前に消毒のためアルコールを肌へ塗ると、ヒンヤリするのと同じ現象だ。
逆に「気体」が「液体」になることを「凝縮」というが、その時は周囲に熱を放出する。
【参考】冷房と暖房のしくみ 物質の三態|三菱電機ビルテクノサービス
冷暖を切り替える仕組み
エアコンは冷房と暖房を切り替えできる。
先ほどご説明した「蒸発」と「凝縮」の順番を入れ替えることで、冷房と暖房の切り替えをしているのだ。
エアコンには室内機と室外機があるのをご存じかと思う。
室内機
室外機
室内機と室外機の間には、血管のようにパイプが通っていて、そのパイプの中には「冷媒」が詰まっている。
パイプには途中、「圧縮機」と「膨張弁」が配置されている。
冷媒を圧縮して高圧にすると、周囲の熱を吸い取り高温になる。
また、冷媒を膨張させて減圧すると、周囲に熱を放出し低温になる。
この低温、高温になった冷媒を、室内機・室外機それぞれにある「熱交換器」で周囲の空気と熱のやり取りをする。
冷房の仕組み
1.室外機の熱交換器を出た液体状の冷媒が、膨張弁で減圧されて低温になる。
2.低温の冷媒が室内機の熱交換器で部屋の中の熱を取り込み(蒸発)、気体になる。
3.冷媒は圧縮機で高温・高圧な気体の冷媒になる。
4.高温・高圧な気体の冷媒が室外機に入り、熱交換器で外気に熱を放出(凝縮)して、冷媒が液体に戻る。
以上の繰り返しで部屋が涼しくなる。
※冷房の仕組みを模式化したものです。実際とは異なる場合があります。
暖房の仕組み
暖房の場合はその逆サイクルになる。
1.室外機の熱交換器を出た低温・低圧な冷媒(気体)が、圧縮機で高温・高圧な気体になる。
2.高温・高圧な冷媒が室内機の熱交換器で部屋の中に熱を放出(凝縮)し、液体に戻る。
3.冷えた冷媒は膨張弁で減圧されてさらに冷える。
4.低温な液体の冷媒が室外機の熱交換器で外気から熱を取り込み(蒸発)、冷媒は気体に戻る。
その繰り返しで部屋が暖まる。
※冷房の仕組みを模式化したものです。実際とは異なる場合があります。
エアコンの空気の流れ
エアコンから冷気、暖気を部屋に取り込むためには、空気の流れを作る必要がある。
その風を起こすのが、クロスフローファンとよばれる低騒音の装置。クロスフローファンは風を散らさず、まっすぐ遠くへ飛ばしやすい。
このクロスフローファンが空気の流れを作る。
室内機の空気取り入れ口には、ホコリなどを取るためにフィルターが設置されている。もしフィルターが詰まると空気の流れが悪くなり、エアコンの効きが悪くなるので、清掃はこまめに行いたい。
また、フィルターを通った空気は、熱交換機により、冷やされる/温められる。その冷気・暖気がクロスフローファンにより部屋の中に流れていくのだ。
つまり、エアコンは室外機から外気を取り込んでいるわけではない。
エアコンやクーラーが排水する仕組み
エアコンで冷房を使うと、排水されるのを見たことがあるだろうか? これは、夏に氷を入れた冷たいジュースのコップに水滴がついたり、冬の寒い日に窓の内側が曇るのと同じ、「結露」という現象だ。
結露は空気の中に含まれている水蒸気が、冷やされて水に変わる(気体から液体になる)ために起きる現象だ。
これと同じ原理で、エアコンやクーラーで室内が冷やされると、水蒸気が水に変わる現象を起こす。
ちなみに除湿機能も同じ原理を活用、室内の水蒸気を水にして屋外に排出し湿度を下げる。
※データは2020年9月下旬時点での編集部調べ。
※情報は万全を期していますが、その内容の完全性・正確性を保証するものではありません。
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文/中馬幹弘