キリンホールディングスによると、2018年の日本のビール総消費量は約510.8万kl。これは世界第7位の数値となっています。そんな多くの人々に愛されているビールですが、どのようにつくられているのか知らないという人も多いのではないでしょうか? そこで今回は、ビールの醸造方法と各メーカーのつくりのこだわりを紹介していきます。ビールを飲む時の話題にどうぞお使いください!
基本的な原料は「麦」「ホップ」「水」
ビールづくりに必要な主原料は、基本的に「麦」と「ホップ」と「水」で、さらに「酵母」を使います。日本においては二条大麦、六条大麦、はだか麦という麦が代表的な麦のようです。また、これら主原料に加えて「コーン」や「でんぷん(スターチ)」といった、副原料を使う場合もあります。
それでは早速、日本の大手ビールメーカーのこだわりを見ていきましょう。
サントリーのビールのつくり方「ザ・プレミアム・モルツ」
副原料を一切加えない、サントリーのザ・プレミアム・モルツ。厳選された麦芽とホップ、そして天然水を使ったサントリーのビールつくりを見ていきます。
原料には二条大麦とチェコやその周辺国で産出されるダイヤモンド麦芽。加えて、アロマホップと香りの高いファインアロマホップを使っており、さらに自然の地層によってろ過された天然水を使っています。
1:温めた天然水に砕いた麦芽を加え、麦芽中のでんぷんを糖に分解します。
2:ホップを加えて煮沸し、ホップ特有の苦味と香りを持った麦汁をつくります。
3:麦汁に酵母を加えて低温で発酵させます。
4:酵母が麦汁内の糖を取り込み、アルコールと炭酸ガスを生成。ビールの香りとなる成分がつくられます。約7日で麦汁はアルコール約5%の若ビールとなります。
5:発酵を終えた若ビールを低温調整されたタンクに入れて熟成させます。
6:熟成を終えたビールから酵母を取り除きます。
7:最後に缶や瓶などの容器に詰められ、完成です。
【参照】サントリー「ザ・プレミアム・モルツ」のつくりのこだわり
キリンのビールのつくり方「キリン 一番搾り生ビール」
「キリン 一番搾り生ビール」は、製造の過程で麦から出る「一番搾り麦汁」のみでつくられる贅沢なビールです。一番搾り麦汁を使うことで、雑味が少なく上品な味わいになります。
【参照】キリン 一番搾り ビール
一番搾りの主原料は麦、ホップ、水となっています。
1:麦に水を含ませ発芽させ、麦芽をつくります。
2:麦芽を砕いて温度を上げ、おかゆのような「もろみ」をつくります。
3:もろみをろ過します。一番搾りの場合はこの時、最初に流れ出た「一番搾り麦汁」のみを使います。
4:麦汁を煮沸します。この時、ホップを加えてビール独特の香りと苦味を生み出します。
5:十分に冷やした麦汁に酵母を加えて、発酵タンクで低温発酵させます。
6:約1〜2か月ほど貯蔵し、熟成させた後、ろ過をします。
7:瓶や缶などにパッケージングされて完了です。
【参照】キリン 一番搾り製法
アサヒのビールのつくり方:「スーパードライ」
続いては、1987年の登場以来、多くの人に愛されているアサヒの辛口ビール、スーパードライのつくり方を見ていきましょう。
【参照】アサヒ スーパードライ
原料は主に、二条大麦を発芽させ熱風で乾燥して成長を止め、根を取り除いた麦芽と、受精していない雌花だけが用いられているホップ。さらに厳しい水質基準をクリアした良質な水を使っています。このほか ビールの味を調整するために米、コーン、スターチなどを使っています。
1:原料にお湯を入れて仕込み、麦芽糖と栄養源を含んだ麦汁をつくります。
2: 麦汁は「仕込み釜」→「仕込み槽」→「麦汁ろ過槽」→「煮沸釜」→「ワールプール」と順番に送られ、最後に「麦汁冷却機」で酵母を添加し、発酵タンクへと移します。
3:約1週間、ビール酵母を加えて発酵させます。麦汁は若ビールとなり、これを低温で数十日間熟成させます。
4:熟成を終えたら「ろ過機」で酵母などを取り除いていきます。
5:できあがったビールを缶や瓶などにパッケージングして完了です。
【参照】アサヒ ビール工場楽しみ方ナビ
クラフトビールのつくり方は? ヤッホーブルーイング
ここまでは大手ビールメーカー3社3銘柄のつくり方を紹介してきましたが、“クラフトビール”と呼ばれるビールのつくり方は、これら3銘柄のビールとつくり方が異なるのでしょうか。「よなよなエール」や「水曜日のネコ」といったクラフトビールでおなじみの「ヤッホーブルーイング」のビールのつくり方を例に見ていきましょう。
1:様々な種類の主原料(麦芽、ホップ、酵母)から素材を選びます。
2:麦芽を機械で細かく粉砕する「ミリング」という作業を行います。
3:ミリングした麦芽にお湯を混ぜ、かくはんさせつつ温度を上げていきます。この過程で麦芽のデンプンが糖へと変わり、麦のおかゆ「マッシュ」がつくられます。
4:マッシュをろ過して麦汁をつくり、ホップを加えて煮沸します。
5:煮沸した麦汁を冷やしながらタンクに移し、酵母を加えて発酵させます。発酵期間はヤッホーブルーイングが使っているエール酵母の場合は3〜6日。ラガー酵母の場合は6〜10日間ほどとなっています。
6:発酵が終わったら貯酒室のタンクに入れ、0℃くらいに冷やし酵母のはたらきを止めて、2週間ほど熟成させます。
7:熟成が終わったビールから酵母など要らない成分を取り除くため、ろ過をします。ちなみにヤッホーブルーイングでは、ほとんどの種類のビールをろ過していますが、中にはろ過をしない「無濾過ビール」などもあります。最後に完成したビールを缶や瓶に詰めて完了です。
このようにビールつくりの基本的な流れ(麦芽粉砕つくり→でんぷんを糖に分解→ホップを加えて煮沸→酵母を加えて発酵→熟成→パッケージング)は、クラフトビールでも大きな違いは無いようです。しかし、使われる原料や酵母の違い、また製造工程のろ過の有無など、必ずしもすべてが同じというわけではないようです。
【参照】ヤッホーブルーイング クラフトビール屋がビールのつくり方を徹底解説
ビールつくりの過程が見られる“工場見学”ができるビールメーカー
サントリー・キリン・アサヒのビールメーカー3社は、すべてビールつくりの行程が学べる“工場見学”を開催しています。この記事を読んで、ビールつくりに興味を持った人は、参加してみても良いかもしれませんね!
ただし、コロナ禍などの影響もあり、定員数の上限や開催の有無などが変わっている可能性もあるため、見学を希望する人は事前に問い合わせることをおすすめします。
【参照】サントリー <天然水のビール工場>東京・武蔵野ブルワリー
キリン キリンの工場見学
アサヒ アサヒの工場見学
また、キリンでは、オンラインによるビール工場見学「ホップ生産地と工場見学をつなぐ! IoA工場見学 見て、ふれて、味わって おいしさの秘密発見ツアー」を10月8日(木)~12月31日(木)にキリンの工場見学特設ページにて公開しています。
【参照】キリン・オンラインビール工場見学
※データは2020年9月上旬時点での編集部調べ。
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文/髙見沢 洸