ここ最近のランニングシーンを牽引する”厚底シューズ”といえば「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%」のこと。このシューズをベースに、ソールなどの耐久性をアップさせたトレーニング用が「ナイキ エア ズーム テンポ ネクスト%」。機能や走り心地など、どんな違いがあるのか実際に使って試してみた。
トレーニング用として使いやすいモデルが登場
▲レーシングシューズ「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%(3万3000円:税込み)」。スピードも価格もプレミアム。
2020年も残り2か月ほど。箱根駅伝の予選会もそろそろ行われるが、今年はじめランニング界の話題は、厚底シューズ「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%(以下アルファフライ)」がほぼ独占していた。レーシングシューズとして記録を次々に更新。ランニングに興味のない人まで巻き込んだひとつのブームを作り出していた。
あの厚底シューズのトレーニングモデルとして登場したのが、ここで紹介する「ナイキ エア ズーム テンポ ネクスト%(2万4200円:税込み)」だ。
最新テクノロジーを採用した妥協なしの仕上がり
ナイキ エア ズーム テンポ ネクスト%(以下テンポ ネクスト%)は、トレーニング版だからといって妥協はない。その見た目からすでに”速さ”が伝わってくるが、ナイキの最新テクノロジー全部乗せといっても過言ではないほど、速く走るための機能が満載だ。
大きな特徴はアルファフライと同じナイキ ズーム エア ポッド(以下エア ポッド)が搭載されていること。(写真の緑色の部分)ここがこのシューズの肝。着地する度に内部のエアが圧縮され、次の瞬間跳ね返って前に進む推進力と変えてくれる。この反発力がスゴイ。2歩3歩と足を着いた瞬間に感じることができる。
そして、このシューズにもアルファフライと同様にプレートが入っているが、素材はカーボンではなく合成素材。
長距離でも快適に走れるように柔らかめになっている。硬めのカーボンプレートは、脚力がないと反発力を生かせないこともあるがこれは扱いやすい印象だ。
ミッドソールにはズームX フォームとリアクトフォームという2種類の異なる素材が使用されている。反発性が高いズームXフォームはエア ポッドの前後、前足部と中足部のプレートの上に配置されており、着地衝撃をエネルギーリターンに変えて、スピードを生んでくれる。
衝撃からの保護と耐久性を高めるために、かかとには軽くて丈夫なリアクトフォームを使用。スピードを生むことを最優先にしながらも、トレーニングに耐える耐久性を出すための素材選定になっている。
見た目にも分かるが、改めて紐とくと機能が盛りだくさんのミッドソール。エア ポッド、プレート、2種類のフォーム、これらのおかげで、着地安定性、衝撃吸収力、反発力がしっかり備わっている。弾むような走り心地で走るのを楽しくさせてくれる。思わず速く走ってしまうので、ペース管理はご自身でしっかりと。
ソックスのように履ける薄く軽量なアッパー
足を包み込むアッパーは、ナイキ独自のニット素材、フライニットと合成素材でできている。前足部、側面、履き口とそれぞれの場所に適した硬さに編み込むことで、ソックスのようなフィット感がありながら、しっかりとしたサポート感もある履き心地。
さらにシューレースを締めると、足をダイレクトに縛っているような、固定感。フワッと柔らかい、優しい履き心地ではない。あくまでもレースモデルと同じような履き心地だ。
ニット素材だけでは不足する強度を、内側のケージで補っている。
全体的にアッパーは薄く作られているが、かかと付近のホールドは十分ある。かかとの上部内側にクッションが入っていて走っている途中でも”浮く”感じはない。個人的には足と一体化する履き心地はかなり心地良く、トレーニングから感じる事ができるアッパーとなっている。
大きな違いはソールの「耐久性」
ここまで見ていくと、レースモデルと遜色のない機能を持っている「テンポ ネクスト%」。トレーニング用といいつつもレースでも十分に使えると感じられる。ただアルファフライとの大きな違いは、ソールの部分。
アルファフライのアウトソール(上)は前足部中心に配置されているが、テンポ ネクスト%にはガッチリと硬いアウトソールラバーが足全体に搭載されている。やはりこのようにアウトソールの部分が増えれば、その分重さも増す。比べると70gほど重い277g(27㎝:実測値)になっている。
その代わりに耐久性は十分。10㎞ほど走ってみたが削れている様子もなく、長い距離を履きこんでも問題はなさそう。このあたりは自分のような市民ランナーにはうれしいところだ。
レース用モデルのアルファフライのトレーニング用として作られたテンポ ネクスト%だが、跳び箱の時に使うロイター板に乗っているように、バンバン跳ねてスピードが快適に出せるこの走行性能がある。
市民ランナーのレベルではスピードトレーニング、ペース走などといった練習はもちろん、レースでも力を発揮すると感じた。耐久性もあるので、多くのランナーが速さの面でこのシューズの恩恵を感じることができるだろう。
しかしエア ポッドが搭載されたこのシューズの機能を活かすには少し慣れが必要だとも感じた。個人的な感想ではあるが、やはり前足部で着地をして走らないと、このシューズの良さが引き出せない気がする。とはいえ、この良さを活かそう、感じようと意識して走っていくことで、速い走り方(足を回してピッチで走る、反発を活かしてストライドを大きくしていく)が学べると感じた。
まさにネクストステージにいくためのシューズ。
1足あると確実に走りの幅が広がるおもしろいシューズ。さすがナイキ。とまたしても思わされた一足だった。決してトップアスリートのためだけのシューズではないので、自分自身でその機能を体感してほしい。
ナイキ エア ズーム テンポ ネクスト%
価格:2万4200円(税込み)
https://www.nike.com/jp/
今 雄飛(こんゆうひ):ミラソル デポルテ代表。スポーツブランドのPR業務を行うかたわら、自転車、トライアスロン、アウトドア関連のライターとしても活動中。趣味はロングディスタンスのトライアスロン