野良犬の消えた日本は平和なのか?
子供の頃を思い返してみると、あちこちに野良犬の姿があったものだ。
「山には野良犬が群れてるから近づくな」みたいなことを言われた記憶もあるし、道を歩いていると首輪のない犬に遭遇することも多かった。
そうそう。
たまには学校の敷地内に野良犬が入り込んで、子供たちにとっては一大イベントみたいに大騒ぎしたこともあった。先生が慌てて捕獲しようとするけど、犬は遊んでもらっていると勘違いしてか、尻尾を振って駆け出してみたり。
こういうことがしばしばあったのが、少し前の日本だった。
ほんの20年ほど前まで、野良犬はもっと多かった!
今現在、野良と名のつく動物の代名詞は猫である。
各地に野良猫という存在は多数見受けられ、さまざまな問題を引き起こしている。彼らは彼らで厄介な存在だけども、野良犬はその比ではなかった。
なにせ犬は体も大きく、アゴの力も強く、歯だって頑丈だ。
日本では狂犬病は封じ込められて久しいが、それを差し引いても野良犬は危険な動物だった。
実際、筆者も子供の頃、学校の帰り道に遭遇した大きな野良犬に絡まれ、腕と足を噛まれて怪我をしたことがある。
特に空腹と思しき野良犬は恐怖の対象だった。飢えた野良犬は目がガチなのだ。あの特有の恐ろしさには戦慄したものだ。
たまたま車が通りがかって、運転していた大人が助けてくれたけど、もしあのまま誰も来てくれなかったら、洒落にならない事態になっていたのかもしれない……。
冒頭で触れた、“校舎に入り込んだ野良犬”という事例だってそうだ。
大勢の子供が騒ぐものだから、興奮した野良犬は手当たり次第に人を追いかけて、噛み付くといった事態も目にした。まあ、これは追い詰められた側の当然のリアクションなんだけど、なんにせよ危険であった。
野良犬の消えた日本、危険の消えた日本
ひるがえって現在。
野良犬を見かける頻度は信じられないぐらい下がっている。これは非常に喜ばしい事態と考えてもいいんじゃないだろうか。
野良犬が減るということは、その野良犬に襲われる人も減っているということだし、野良犬が媒介する感染症のリスクもなくなったということ。
そして野良犬が減ったということは、彼らが交通事故や飢え、喧嘩による死傷などの憂き目に遭う頻度も低下したということになる。
個人的に、最後に野良犬を目撃したのがいつなのか。
もうかなり前のことに思えてならないし、すぐには思い出せない。ひょっとすると、90年代の終わりに見かけたのが最後だったのかも……。
野良として生きる犬は、決して幸せではない。
不幸な犬は、新たに発生しないに越したことはない。
おわりに
もちろん、野良犬が屋外から全て消えたというわけでもない。未だに日本には僅かながら野良犬も、文字通り野放しにされている。
最近も山口県周南市で餌やりが原因で野良犬が多数目撃される状況になっているという報道もあったばかりだ。
これは野良犬に限らない対応になるが、中途半端な干渉は事態を悪化させるだけ。せっかくここまで不幸な犬が屋外から減り続けているわけなので、餌やりをするぐらいなら飼育すべきなのである。
でないと、現在の野良猫問題と同じ事態に逆戻りしてしまう。野良として過酷な日々を送る猫と同じ苦労を、犬に押し付けるのも酷い話だ。
野良犬も、野良猫もいなくなり、元野良犬・元野良猫として適正に愛されること。これこそが本来あるべき姿ではないだろうか。
文/松本ミゾレ(PETomorrow編集部)
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