学生の研究実装によりJクレジット1トンを創出、地域へ寄付【島根県立大学】
【公立大学法人島根県立大学】

――地域資源を起点とした研究実装が、教育・制度・国際へと展開した事例
概要
学生有志による研究実装の成果として、放置竹林由来のバイオ炭農業を通じた J-クレジット(1t-CO2) の創出が、国の制度に基づき正式に認証・確定しました。
学生は、この成果をどのように社会へ還元するかについて議論をした結果、2025年11月15日、地域企業である島根トヨペット株式会社へ寄付をしました。
現在、本プロジェクトは次のフェーズへと移行しており、寄付されたJ-クレジットを地域のためにどのように活用するかについて、島根トヨペット株式会社と学生による検討・協議を継続しています。本プレスリリースは、寄付の完了と、それに続く活用策検討の開始をご報告するものです。
本取り組みでは、伊藤豊ゼミの学生有志が中心となり、放置竹林を原料としたバイオ炭農業の実践に取り組みました。卒業研究を起点に、農業実験、消費者調査、商品開発(クラフトビール2年連続)、文化財の3Dアーカイブ、環境教育、国際研究、さらにはJ-クレジット制度への申請・第三者認証へと展開し、約3年間にわたる連続した研究実装として進められてきました。
学生たちは、放置竹林の伐採・製炭、バイオ炭の農地施用と作物栽培、消費者調査、商品開発、文化財の記録、制度申請まで、複数の実践を横断的に行ってきました。
これらの過程を通じて、「研究の知見は、制度や市場を通じて社会に届きうるのか」という問いに、実践を通じて向き合ってきました。
最終的に創出された1トンのCO2削減量は、売却ではなく寄付という形で地域に還元されています。削減量を単なる「数字」として終わらせるのではなく、地域の中で環境価値を循環させることを重視した選択です。単なる「譲渡」で終わらせず、活用方法の検討プロセスまでを学生が企業と共有している点も、本活動の特徴です。
本プロジェクトは、環境対策・地域連携の事例であると同時に、研究を通じて社会と向き合う力を育てる教育実践でもあります。1トンという数値の背後には、問いを立て、検証し、説明し、制度を通じて社会に返す──その一連のプロセスを経験した学生たちの時間があります。
研究が教育であるとは何か。
本取り組みは、その問いに対する一つの具体的な答えを示しています。
現在地:J-クレジット1t-CO2の創出と寄付
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-380c697639b4b7b854115011ffbae25f-2575x1927.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]島根トヨペットにて実施したJ-クレジットの贈呈式の様子(2025年11月15日)学生有志は、島根県大田市大森地区において、放置竹林を原料として製炭したバイオ炭を農地に施用し、作物栽培に取り組みました。あわせて、炭素貯留量を国の制度に基づき算定・申請した結果、1トン分のCO2削減(Jクレジット)の認証を取得しました。2025年、本クレジットは島根トヨペット株式会社へ寄付され、現在は同社とともに、その環境価値を具体的にどのような形で地域へ還元するか、具体的な用途についての検討・協議を進めています。単なる「譲渡」で終わらせず、活用方法の検討プロセスまでを学生が企業と共有する点も本活動の特徴です。
出発点:学生の問いから始まった研究実装
本プロジェクトの出発点は、学生の問いでした。「環境に良いとされる取り組みは、なぜ“活動”で終わってしまうのか。研究の知見は、制度や市場の中で社会に届かないのか」。学生たちは、理念や啓発にとどまるのではなく、現場で確かめ、数値で示し、制度で認められる形へとつなげることを目指しました。
実装1.:バイオ炭農業と価値の検証(WTP)
最初の実験は、バイオ炭を施用した農地の農作物に、消費者はどの程度の価値を見出すのかという検証でした。
地域実装の現場:炭焼き
バイオ炭の製炭にあたっては、大田市大森地区の地域企業である中村ブレイス専務取締役・中村哲郎氏が、竹の伐採作業を実務面で支援するとともに、炭焼きの場として敷地(駐車場)を提供しました。研究のために新たな設備を設けるのではなく、地域に既にある空間や関係性を活用することで、研究実装が進められました。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-d5d2d9b7ba1d770f94d08940e061cd1b-1477x1108.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]中村ブレイス駐車場での放置竹林の炭化作業の様子[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-51e449f2000144a09d451e84f8efe5c9-2048x1536.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]完成したバイオ炭
畑の整備と栽培
畑は、大学周辺の住民から休耕地を借り受け、学生自身の手で開墾して整備しました。地域の理解と協力のもとで、研究の基盤となる農地が整えられました。
[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-67496f943ab21abee62283ae99a906e6-2972x2261.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]借りた農地での抜根作業[画像5: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-3d155559fdaaaf1df27f58d220458c05-3024x2232.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]開墾作業[画像6: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-0cc252e8846f92ebf55193135c5e7a98-2762x2088.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]サツマイモの苗植え
[画像7: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-68800102c2ae61e1a2ba92b6df785a8d-2656x2120.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]獣害対策[画像8: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-2a7d7f451e34369681ba2560f814a1e9-2991x2385.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]鳥よけ用の手作りカカシの設置[画像9: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-f58301fcd54edff7b0db7ad93c9080d0-1416x1106.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]夏の畑の様子
調査の実施
学生は、
・2024年度安来市環境フェア(調査実施テントエリア提供)
・大阪府京阪百貨店すみのどう店(売り場提供)
・石見銀山資料館(敷地提供)
という異なる文脈の場で、支払い意思額(WTP)調査を行った結果、地域イベント、都市商業、観光の三つの文脈において、環境配慮型作物に対する統計的に有意な付加価値を確認しました。
[画像10: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-044b1d755d4b885c6a6ac0a1d8722955-3900x2925.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]2024年度安来市環境フェアでの消費者調査[画像11: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-78acb126ee794efffbda524ec3dc6889-559x411.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]京阪百貨店すみのどう店利用者への消費者調査[画像12: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-a3ffad9f60ffc5653e477175233fc8e6-961x742.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]石見銀山資料館での観光客への調査
収穫物の活用
畑で収穫された野菜は、大学の学生食堂や2024石州浜っ子夏まつりで販売され、研究成果を日常の消費の場へ還元する形で活用されました。なお、本畑での取り組みは、「2024年度みどり戦略学生チャレンジ中国四国ブロック大会」においてチャレンジ賞を受賞しています。
[画像13: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-66e508221aa4345d94242c32126447ec-1314x955.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]大学の学食食堂でのキュウリの活用[画像14: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-faf6fa9b3d1050b2242231c2122bf156-930x660.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]2024石州浜っ子夏まつりでの販売[画像15: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-9449dadd218d9184688d43f6fcd8dfe8-1492x1043.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]みどり戦略学生チャレンジ賞受賞
実装2.:商品開発(クラフトビール2年連続:検証→内在化)
次に学生たちは、商品化を通じた研究実装に挑戦しました。本取り組みでは、クラフトビールの商品開発を2年連続で実施していますが、これは同一の実践を単に繰り返したものではなく、研究目的の異なる二段階の実装として位置づけ、それぞれの段階で異なる問いと検証を行ってきました。
1年目:CRMによる付加価値の検証
[画像16: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-9d3d6d432ab9acdca8641c690b14b91f-1054x1632.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]クラフトビール(1年目)1年目には、地域資源を用いたクラフトビールを、地域企業・石見麦酒の協力のもとで製造・販売しました。この年の主眼は、Cause-Related Marketing(CRM)の視点から、環境・社会的価値が市場においてどの程度「価格として評価されうるのか」を検証することにありました。単なる商品開発や広報にとどまらず、研究として検証可能な形で価値を測定することを目的としています。具体的には、大学の教育・研究活動を支援するというコーズ(Cause)を設定し、商品購入を通じて社会的価値を提示した場合と、提示しない場合とで、消費者の支払い意思額(WTP:Willingness to Pay)がどのように変化するのかを分析しました。検証にあたっては、仮想評価法(CVM)および選択型コンジョイント分析を用い、学生・教職員・関係者を対象としたアンケート調査を実施しました。
[画像17: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-18bc3660e19feba0d73027ee6ed44f64-1077x1523.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]クラフトビールのコンセプト(学生作)仮想評価法の課題とされる「現実感の不足」を補うため、実際に開発したクラフトビールを試飲した上で回答する形式を採用し、消費行動に近い条件での検証を行っています。その結果、利益の一部が大学の教育・学生活動に還元されると想定した場合、寄付を伴わない商品と比べて、支払い意思額が高まる傾向が統計的に確認されました。また、寄付の有無だけでなく、「寄付の用途」や「容器の種類」「味の特性」といった商品設計の要素が、評価に大きく影響することも明らかになっています。この年の実践では、ラーメン天水 駅前店の協力のもとで試飲会を実施し、実際の購買場面に近い形で調査・検証を行いました。開発したクラフトビールは完売し、売上の一部は大学の研究・学生活動費として寄付され、次年度以降の研究・実装へと還元されています(※寄付は1年目のみ)。
2年目:環境価値を商品設計に内在化する実装
[画像18: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-15233c6267ee06bf4fe0cd6a241ffa59-2194x2925.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]クラフトビール(2年目)2年目には、1年目の検証結果を踏まえ、寄付による価値付与ではなく、環境価値そのものを商品と情報の両面に内在化させる実装へと発展させました。具体的には、バイオ炭によって炭素を貯留した畑で栽培したハーブを副原料として使用するとともに、その環境配慮の内容が消費者に正確に伝わるよう、クルベジ シールを貼付し、原料や環境価値に関する情報を明示しました。本実装では、環境価値を情緒的に訴求するのではなく、「どのような環境配慮が、どの工程で行われているのか」を情報として可視化することで、消費者が自ら判断できる設計を目指しています。
2年連続実装の位置づけ
この2年間にわたるクラフトビール開発は、「1年目:市場における環境・社会的価値の検証」、「2年目:研究成果を商品設計に内在化する実装」という、異なる研究段階を担う連続した実践でした。単なる商品開発にとどまらず、研究成果を「測る」段階から「組み込む」段階へと進めた点に、本取り組みの研究実装としての意義があります。
実装3.:文化財・産業遺産の再実装(頌徳碑3D/坑道熟成)
[画像19: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-71356b3c0f1b6963050f23a91ff38f80-688x891.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]頌徳碑(海士町)取り組みの舞台である大田市大森地区は、江戸時代、度重なる飢饉に見舞われてきた地域です。当時この地を治めていた代官・井戸平左衛門は、当時この地域ではまだ馴染みのなかった外来作物であるサツマイモを導入し、人々の命をつなぎました。
その功績は、現在も地域に残る頌徳碑に刻まれています。学生たちは、大田市文化協会が提供した位置情報データを基盤に、県内外で約530基確認されている頌徳碑を対象として、調査および3Dアーカイブ化に取り組みました。
本取り組みの研究上の特徴は、約530基という網羅的な対象を、スマートフォン技術を用いて記録した点にあります。位置情報と3Dモデルを紐づけて公開する手法は、高齢化や過疎化により維持が困難になりつつある文化財を、「保存」と「生活の中での活用」の両立という観点から再定義する試みとして位置づけられています。なお、3Dモデリングについては、日本ミクニヤ株式会社の齋藤めぐみ氏が技術面でサポートしました。これらの成果はいわみ文化振興センターにおいて展示会として公開されました。さらに、2024年1月13日には、浜田市熱田町・福恩寺にて3Dスキャン体験イベントを実施し、浜田商業高校の学生とともに文化財記録の体験を共有しました。
[画像20: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-2651bf2f2c8fdb312bd8166d3735c288-3408x2407.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]齋藤めぐみ氏による浜田商業高校生へのレクチャー[画像21: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-26c62771ae45af82a6ec5044e742d491-3216x2311.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]大田市文化協会主催のいも代官頌徳碑展示会準備の様子
坑道熟成:産業遺産の再実装
[画像22: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-59ca64a5c9c06f4468b03b736f19e129-1479x1109.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]坑道に学生が実験用のサツマイモを設置する様子さらに、同じ地域に残る鉱山坑道を活用し、サツマイモの坑道熟成実験を実施しました。本取り組みは、石見銀山世界遺産センター(島根県大田市)のサポートを受け、世界遺産の保全と地域農産物の付加価値化の観点を踏まえて進められました。
熟成作業には、大田市大森地区の熊谷家の協力も得ています。温度・湿度の安定した地下環境が糖組成に与える影響を科学的に分析しました。
また、坑道で熟成したサツマイモについては、島根県産業技術センターで糖度分析を行い、地下の安定した環境が甘さに与える影響を確認しています。これらの成果は、大田市大森地区において地域住民へ最終報告され、研究成果を当事者へ返すプロセスまで含めて完結しました。
制度との接続:J-クレジット申請とクレジット創出支援感謝状
[画像23: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-37a2a09147ae357bbee0bfc38fa954f2-1694x1182.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]意見交換の様子実践を重ねた学生たちは、Jクレジット制度に挑戦しました。原料調達、製炭および施用量の管理、書類作成、第三者認証に至るまでの一連のプロセスを、学生自身が確認し、制度の「使い方」を学びながら実装を進めました。
この過程では、(一社)日本クルベジ協会のサポートを受け、制度運用上の要件整理や算定方法の確認を行っています。
また、現状課題に関するヒアリングや意見交換は、立命館大学日本バイオ炭研究センターにおいて実施されました。その結果、CO2削減1トンが、Jクレジット制度として正式に認められました。
1トンを“売らなかった”理由
Jクレジット1トンの創出という成果を前に、学生たちはその扱いについて議論を重ねました。最終的に選ばれたのは、売却ではなく、地域企業への寄付という選択でした。この判断は、Jクレジットが本来「取引可能な環境価値」であることを十分に理解したうえで、あえてなされたものです。学生たちは、削減量を金銭的価値として回収することよりも、地域の中で環境価値を循環させ、次の実践につなげることに重きを置きました。
贈呈式の場で学生は、「地方の学生と、自治体や企業が一緒になって環境問題に取り組める組織や関係が増えてほしい」と語っています。この選択は、単なる社会貢献ではありません。研究成果をどのように社会へ返すのかという問いに対する、研究的かつ教育的な意思決定です。
波及:国際研究/環境教育への展開
バイオ炭の実装は、国内にとどまらず国際研究へも展開されました。ジブチ共和国では、侵略的外来種であるメスキートを炭化し、土壌改良に活用する可能性を検討しました。あわせて、気候変動の影響により脆弱化する遊牧民の生計や定住化の可能性への影響を分析しました。これらの成果は、学生が国際開発学会においてポスター発表を行っています。
一方、国内では、研究成果を次世代へと接続する教育実装にも取り組みました。大田市大森小学校・おおもり児童クラブ渡辺家の協力のもと、放置竹林の竹を活用した製炭、学校所有の畑へのバイオ炭施用、CO2削減量の可視化(表彰状)までを含む、一連の環境教育プログラムを設計・実施しました。児童は、地域の放置竹林の竹を原料にバイオ炭を製造し、自らの学校の畑に施用する過程を通じて、炭素循環、地域資源の活用、環境と暮らしの関係について学びました。本取り組みは、研究知見を教育現場へと翻訳した実践事例として整理され、日本炭化学会で報告されています。
[画像24: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-e17cd3091f87475e6b25501e9a34b8e0-1278x985.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]日本炭化学会での発表の様子1[画像25: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-333943d84260a8a56b16bf37287cf4b2-2152x1649.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]日本炭化学会での発表の様子2[画像26: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-2874e48ad57525ac54d638b1f7286476-2690x1912.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]ジブチでの遊牧民への調査の様子
小学校での環境教育は、単発の体験活動にとどまらず、「資源の発生 → 炭化 → 農地施用 → CO2削減量の可視化」という一連の流れを児童が理解できる形に再設計した教育プログラムとして実施されました。研究成果を年齢や文脈に応じて翻訳し、次世代に手渡す試みである点が、本プロジェクトにおける教育実装の特徴です。
[画像27: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-24df556f99d0ad8166c7711373f462d7-1369x929.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]環境教育で活用した教材例[画像28: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-edb07b2f4c70b199b46eb40fae665d29-385x260.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]環境教育で活用したスライドの例
研究成果を外に出す場の設計
[画像29: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-c34473df76fb6080e3e93273c2ed4264-1472x1053.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]卒論発表会後の集合写真学部再編後の1期生となる学生の研究成果については、当該年度に、学生およびゼミの判断により、オンラインによる卒業論文発表会を実施しました。発表は義務ではなく任意とし、研究内容を社会と共有したい学生のみが参加しました。本発表会は、成果を回収するための場ではなく、研究者として必要な説明責任を果たすための場として位置づけられています。
研究が大学にある意味 ―― 教育としての実装
[画像30: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/88950/248/88950-248-57f13d1cd31529322e68631c57ce5332-2140x1456.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]大学裏の農園本取り組みは、環境対策や地域連携の事例であると同時に、大学における研究と教育の役割を問い直す実践でもありました。学生たちは、問いを立て、データで検証し、社会に説明し、制度を通じて返すという一連のプロセスを経験しています。
それは体験学習ではなく、研究者として社会に向き合うための訓練でした。
創出された1トンのCO2削減量は、その結果として社会に還元された一つの数値に過ぎません。しかし、その背後には、研究を通じて社会と向き合う力を身につけた学生たちの時間があります。本プロジェクトで行われた実装の多くは、卒業論文や学会発表として整理されると同時に、地域・企業・学校・制度といった異なる主体に向けて説明され、検証されてきました。研究を閉じた成果として終わらせず、社会の中で試し、問い直し、次の実装へとつなげていく--
そのプロセスこそが、本取り組みを通じて学生たちが得た、最も重要な成果であると言えます。
研究が教育であるとは何か。
本取り組みは、学生が研究を通じて社会と向き合い、その成果を地域に還元していくという、大学ならではの教育実践の一例です。
プロジェクト概要
主体:伊藤豊ゼミの学生有志
主な実施地:島根県大田市大森地区、浜田市
内容:バイオ炭農業、休耕地開墾、野菜販売(学食・地域祭り)、商品開発(クラフトビール2年連続)、坑道熟成、制度申請
協力:石見麦酒、ラーメン天水駅前店、中村ブレイス株式会社、日本ミクニヤ株式会社中国支店しまねオフィス、熊谷家住宅、大田市文化協会、いわみ文化振興センター、石見銀山世界遺産センター、石見銀山資料館、福恩寺、大田市大森小学校、おおもり児童クラブ渡辺家、中国四国農政局、(一社)日本クルベジ協会、立命館大学日本バイオ炭研究センター、株式会社林田商店、安来市地球温暖化対策地域協議会、安来市役所、島根県産業技術センター、島根トヨペット株式会社、地域の皆さま
成果:Jクレジット1t-CO2創出、地域企業へ寄付
表彰:2024年度みどり戦略学生チャレンジ中国四国ブロック大会 みどり戦略学生チャレンジ賞
※本活動の学術的背景について
本取り組みの設計にあたっては、以下の研究プロジェクトで培われた評価・検証に関する知見を参照・活用しています。
SATREPS「広域緑化ポテンシャル評価に基づいた発展的・持続可能水資源管理技術確立に関する研究」(研究代表者:東京農業大学 島田沢彦教授)
JST-CREST「Cyborg Crowd」(研究代表者:筑波大学 森嶋厚行教授)PR TIMESプレスリリース詳細へ







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