現場で流動化させる低コストな覆工用高流動コンクリートを用いた「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」を実工事に初導入
【鹿島】

あらゆるニーズに対応可能な全自動打設システムが完成
鹿島(社長:天野裕正)は、“現場で”流動化させる覆工用高流動コンクリート(以下、本コンクリート)を開発し、「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」(以下、全自動打設システム)と組み合わせて、中日本高速道路株式会社発注の「東海環状自動車道 養老トンネル南工事」(三重県いなべ市)に初導入しました。
本コンクリートは、生コンクリート工場(以下、工場)で製造したベースとなるスランプ15cm程度の普通コンクリート(以下、ベースコンクリート)に、新開発の混和剤を現場で添加し、流動化させたものです。高流動コンクリートは締固めが一切不要なため、全自動打設システムのメリットを最大限に活かすことができますが、工場で製造する覆工用高流動コンクリートは、製造コストが高いという課題がありました。一方、本コンクリートは、工場製造の覆工用高流動コンクリートと比べ、製造コストを大幅に低減可能なため、コストを抑えながら全自動打設システムの最大のメリットである省人化を実現し、生産性および品質の向上を果たすことができます。
鹿島は、全自動打設システムを2020年に開発し、これまでに覆工用高流動コンクリートから中流動覆工コンクリートまで導入範囲を広げ、3車線断面のトンネル工事2件に導入してきました。今回、本コンクリートを2車線断面のトンネル工事に導入したことで、様々な流動性の高いコンクリートや断面に対応可能な「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」が完成しました。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/116603/129/116603-129-599207880a35e477c0522a6b9fac13cc-256x248.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]型枠内に打ち込まれた覆工用高流動コンクリート
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/116603/129/116603-129-86fd058495a236aa3fb7491edb7fdadc-378x241.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]養老トンネル南工事での覆工用高流動コンクリート打設状況
【本コンクリートの開発および導入背景】
山岳トンネルの覆工コンクリートは、狭隘な空間に打込みを行うため、高い流動性および材料分離抵抗性、早期の強度発現性が求められます。鹿島は2023年に、これらの要求性能を実現する工場添加型の混和剤を開発し、覆工用高流動コンクリートと全自動打設システムを組み合わせて実工事に導入しました。しかし、工場で製造する覆工用高流動コンクリートは、製造コストが高いという課題がありました。
そこで今般、覆工用高流動コンクリートの製造コストを抑えるため、現場で混和剤を添加して流動化させる覆工用高流動コンクリートを開発し、全自動打設システムと組み合わせ、実工事に導入しました。
【本コンクリートの概要】
本コンクリートは、製造コストが比較的安価であるベースコンクリートを工場で製造し現場に運搬後、新開発した現場添加型の混和剤を用いて流動化させた覆工用高流動コンクリートです。コンクリートの良好な流動性を一定時間以上保持しつつ早期に強度が発現する分散成分と、材料分離を抑制する増粘成分を調合しています。
本コンクリートは、工場で製造する覆工用高流動コンクリートより安価で、中流動覆工コンクリートと比較しても、若干のコストアップに抑えることができます。
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/116603/129/116603-129-f1c0d7393c428b5a22b356e58b0deea6-643x247.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]ベースコンクリートに、現場で混和剤を添加することで流動化
【現場への導入とその効果】
覆工用高流動コンクリートの規格値(スランプフロー600±50mm)を得るために必要な混和剤の添加率は、ベースコンクリートのスランプフローと温度から算出します。事前に作成した早見表から添加率を導き出し、現場で混和剤をベースコンクリートに添加し流動化させました。その結果、所定のスランプフローが安定して得られ、工場で製造される覆工用高流動コンクリートと同等の品質が確保できることを確認しました。
また、既存の覆工コンクリート用繊維投入機に、混和剤の自動添加装置を組み合わせ、混和剤と繊維をベースコンクリートに同時投入する仕組みとしました。添加率をもとに自動計量された混和剤は、タンクからノズルを通してアジテータ車に投入され、投入量は自動で記録されます。これにより、従来、人の手で行っていた混和剤の計量・投入および管理が自動化され、省力化を実現しました。
[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/116603/129/116603-129-a593030c4b9f3392bcb151b438d9e5fd-295x204.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]混和剤と繊維の同時投入状況
さらに本工事では、2019年に鹿島が開発した「コンクリート全量受入管理システム」を導入し、品質管理を行いました。アジテータ車から荷卸しされる覆工用高流動コンクリートの全量を連続的にモニタリングし、規格値に満たないスランプフローのコンクリートを自動で検知可能です。
本コンクリートの導入により、覆工用高流動コンクリートの製造コストを抑えながら、全自動打設システムの最大のメリットである省人化を実現し、生産性向上を果たしました。
また、早見表から導き出した添加率に従い混和剤を添加することで、所定のスランプフローを安定して得られるため、コンクリート表面の品質向上にも寄与しました。
[画像5: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/116603/129/116603-129-5533b9043a0424cf3d79c30e99b3c26a-276x180.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]覆工用高流動コンクリートの仕上がり全景
【全自動打設システムの完成】
既開発の覆工用高流動コンクリートおよび中流動覆工コンクリートに、今回開発した“現場で”流動化させる覆工用高流動コンクリートが加わったほか、3車線の大断面だけではなく、2車線の標準断面の実工事への導入実績を積んだことで、施工条件に応じて様々な流動性の高いコンクリートと断面の組み合わせが可能な「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」が完成しました。
【今後の展開】
今後鹿島は、製造コストを抑えながら、全自動打設システムのメリットを最大限に活かすことができる本コンクリートの導入を推進し、さらなる合理化施工の実現を目指します。
また、全自動打設システムに、お客様のニーズに合った流動性の高いコンクリートを組み合わせることで、様々な施工条件や断面のトンネル工事における生産性および品質の向上に貢献してまいります。
【工事概要】
工事名称: 東海環状自動車道 養老トンネル南工事
工事場所: 三重県いなべ市二之瀬
発注者 : 中日本高速道路株式会社名古屋支社
施工者 : 鹿島建設株式会社
工事諸元: トンネル延長(本坑)2,062m、掘削断面積90.3平方メートル
工期 : 2022年8月~2026年10月
(参考)
動画でみる鹿島の土木技術 「山岳トンネル」
https://www.kajima.co.jp/tech/c_movies/index.html#anc_mountain_tunnel
動画像分析を活用したコンクリートの全量受入れ管理システムを開発(2019年12月25日プレスリリース)
https://www.kajima.co.jp/news/press/201912/.htm25c1-j
「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」を実工事に初導入(2023年3月7日プレスリリース)
https://www.kajima.co.jp/news/press/202303/7c1-j.htm
高流動コンクリートを用いた「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」を実工事に初導入(2023年9月7日プレスリリース)
https://www.kajima.co.jp/news/press/202309/7c1-j.htmlPR TIMESプレスリリース詳細へ