VTuber事業を手掛ける上場企業、ANYCOLORとカバーの方向性の違いが鮮明になってきました。
海外市場を開拓しようとしていたANYCOLORが、国内へと回帰。一方、カバーは「COVER USA」を設立して海外展開を強化しています。
市場が過熱化する国内においては、両社の特長と課題がくっきりと見えてきました。
売上規模はカバーが肉薄するも営業利益率で差をつけるANYCOLOR
ANYCOLORは、2022年9月に時価総額が3100億円に達して話題となりました。当時の日本テレビホールディングスやTBSホールディングスを超える規模。VTuberという新型のエンタメがテレビ局を追い抜くさまは、令和というテクノロジーの新時代を象徴するような出来事でした。
カバーが上場したのは2023年3月。初値をつけた際の時価総額は1069億円。このとき、ANYCOLORの時価総額は1000億円台後半から2000億円前半で前後していました。
時価総額に差が生じていた要因の一つに、ANYCOLORが業績予想の上方修正を重ねていたことがありました。
現在、両社の時価総額は近いところで競い合うように推移しています。
2024年8月1日の終値時点でのANYCOLORの時価総額が1473億円、カバーが1166億円。
カバーのPERは23.0倍でANYCOLORが14.2倍。PERにおいてはカバーが上回りました。
PERは株価収益率のことで、1株当たりの純利益の何倍まで買われているのかを見る指標。ある銘柄が割高なのか、割安なのかを判断するのに使われます。この場合、カバーは割高であると見ることができます。
実はこのPERは今期の業績予想をもとに算出します。つまり、カバーの成長期待が高いと読みとることもできるのです。
過去3期における平均売上成長率はカバーが78.6%増、ANYCOLORが63.6%増。売上規模そのものはANYCOLORが勝っていますが、カバーはそれを追い越す勢いで売上を伸ばしているのです。なお、2022年度はANYCOLORがカバーの売上を20%近く上回っていましたが、2023年度は5%ほどまで差が縮まりました。
※決算短信より筆者作成
ただし、ANYCOLORの営業利益率は38.6%で、カバーが18.4%。利益率においては、ANYCOLORが圧倒しています。
※決算短信より筆者作成