どこか自分ごととして感じられる要素を大事にしました
『ファイナルファンタジーXVI』
プロデューサー
吉田直樹さん
スクウェア・エニックスの取締役執行役員 第三開発事業本部長。『FF16』のプロデューサーを担当するとともに、2010年12月に就任した『FF14』のプロデューサー兼ディレクターも継続中。公式YouTubeチャンネルなどを通じて同作品の最新情報などを積極的に発信している。
──『FF16』の物語を作るに当たって、ストーリーの根幹をどのようにして決めたのでしょうか?
吉田 36年間の歴代シリーズのおかげで、世界中にはたくさんのファンがいらっしゃいます。それと同時に、皆さんが思い描く『ファイナルファンタジー』のイメージも、ファンの数だけ存在するとも感じています。今のビデオゲーム市場をふまえたうえで、どういったものを作るべきか、開発チームが挑戦したい、開発したいと思える『ファイナルファンタジー』はどういったものか。それに加え、人によって解釈が異なる〝ファイナルファンタジーらしさ〟をどう表現しようかと思った時に「クリスタル」と「召喚獣」のキーワードから物語を組み立てることにしました。どちらも『ファイナルファンタジー』の重要な要素である一方、その在り方が定型化しつつある印象でした。今作では強い意味を持ち、必然性のあるかたちで組み込めないかと考えたのです。
──クリスタルに着目すると、マザークリスタルをめぐる今作の物語はエネルギー問題を抱える現代に通じるものがあると感じます。舞台設定について、どのようにして着想を得たのでしょう?
吉田 世界にとって意味のあるマザークリスタルって何だろうと考えた時に、自分ごとにできるリアルさが大切だと考えました。「そもそも魔法はなぜ使えるのか?」という部分から掘り下げた結果、巨大なマザークリスタルが油田のように点在し、そこから石油のように生成されるエーテルを消費して魔法を使う……という設定なら、現実社会に置き換えて理解していただけるのではないかと。ヴァリスゼアでは現代ほど科学技術が発展していないので、なぜマザークリスタルが生まれたのか、なぜ枯渇しつつあるのかわからない。そうすると、時の支配者たちは周囲の別領土にあるマザークリスタルに手を出し始め、争いが起きる。このような設定であれば、マザークリスタルの存在する必然性があり、戦争が起こる流れもリアルに感じられるだろうと考えました。
──登場キャラクターが召喚獣に変身する設定は、今までにない召喚獣の捉え方ですね。
吉田 『ファイナルファンタジー』の召喚獣は、その多くが世界各国の神話から着想を得ています。結果として、神話の設定がベースになってしまうため、キャラクター性をつけるのが難しいという課題もあったと思います。でも「人そのものが召喚獣になる」のなら、人の性格が召喚獣に反映されることも、逆に強大な召喚獣の力が人格に影響を与える可能性もある。これは描き方としておもしろくなりそうだと思っていたのです。なお、今作のオファーを受ける前から温めていたネタでもありました。
──〝ファイナルファンタジーらしさ〟について、クリスタルと召喚獣をキーワードとする物語として、共通認識を持ちやすくする一方で「自分たちが作りたいもの」をどう反映させたのでしょうか?
吉田 『FF16』の開発を担当している第三開発事業本部は、ゲーマー揃いで、生粋の『FF』ファンが多い。そして共通して中世ヨーロッパのようなファンタジーが好きでもあります。一方、ユーザーアンケートを見ると「最近の『ファイナルファンタジー』は、雰囲気がSFに寄っている」という意見も多く、イメージが固定化されているのかもしれない、という懸念もありました。ならば、ここでハイファンタジーに大きく寄った作風の『ファイナルファンタジー』を新たに作ることは、今後のためにも悪くないのではと思いました。世間が求める『ファイナルファンタジー』のイメージは多様化しており、好き/嫌いが相反していることもたくさんあります。それらすべてをかなえようとすればゲームとして成立しなくなる可能性が高い。我々がやるべきは『ファイナルファンタジー』というエッセンスをプレイヤーが感じられるようにする強い意志のもと、自分たちが「これだったらおもしろい!」と思える作品を作ることなのだろうと思ったのです。
取材・文/桑元康平(すいのこ) 撮影/干川 修 © 2023 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
※本記事は、雑誌「DIME」8月号に掲載されたものを転載しております。
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※電子版には付録は同梱されません。
構成/DIME編集部