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ポスト・コロナ時代を生き抜くビジネスのヒントは「他者の知」とつながることにあり

2020.10.01

 先日、ある金物・雑貨の店から、レジ袋有料化後のユニークな取り組みのご報告をいただいた。それ自体も大いに学びになるが、この取り組みからはもうひとつ重要な学びがある。まずは取り組みを紹介しよう。レジ袋の有料化後、同店でも、多くのお客さんはマイバックを持参して来たり、そのまま持って帰るようになった。その際、お買い上げになったお印として市販のストアテープを貼っていたのだが、店主は、これはなんだか味気ないなと感じ、あることを思いついた。

 それは、ストアテープの代わりに、同店オリジナルのラベルを作って貼ることだ。さらにもう一工夫加え、パートさんごとに「マイカラー」「マイフォント」を決めてもらい、自分のラベルには一言メッセージを書いてもらって、担当した人が自分のラベルを貼ることにした。

 メッセージの内容は、

「まいどありがとうございます!パートの〇〇(名前)です!」という挨拶に続き、

「毎日2匹の猫にいやされてます」

「娘は高校3年生。付属高校でよかったです」

 などといったものだ。

 それらのラベルを実際に貼り始めると、お客さんとは「へえー。猫が2匹もいるのね」「〇〇さんの娘さん、どこの付属?」と会話が弾み、味気なさもなくなり、新たな会話の機会となった。

他者の知恵を自分の知恵として使う

 この取り組み、ストアテープを貼るだけでは「味気ない」と感じる感性、その解決策をお客さんとの楽しい会話の機会にしてしまう発想も素晴らしいが、もうひとつ着目したい点がある。それは店主がこの着想を得たのが、他業種の2つの事例からだったことだ。

 ひとつは、あるバーにおける名札の取り組み、もうひとつは、ある漬物店における商品ラベルの取り組みだ。それもこの後少しご紹介するが、なぜ私がそこに着目するのか。それは今日、この変化が激しく速い社会では、一人で考え行えることには限りがあり、他者の知恵を自分の知恵として使い、課題解決の着想を得、結果を出し続けていく必要があるからだ。それは「集合知の活用」というものだが、それがこの事例に潜む重要な点なのである。

周りにありふれたものを見直すことで、コミュニティー強化につなぐ発想へ

 先の金物・雑貨店主が着想を得たという2つの事例。そのうちの「あるバーにおける名札の取り組み」をご紹介しよう。それは、名前を書かない名札。では何を書いているのかといえば、例えば店主の名札には「鶴は千年、亀は万年、僕はバーテンダー歴30年」「趣味 極真空手」、マダムの名札には「昔雅楽やってました。越天楽はハナ唄でうたえます」などとある。

 これならまだ自己紹介なので名札的とも言えるが「国産ライムはジントニックでしょ」といったドリンクメニュー関連ものや、「朝カレーしませんか?」といった他の商品もの。さらには「お盆は休まず営業します」といった告知ものや、「今、洗濯機壊れてます!」といった、商品でも告知でもないものまで実に多彩だ。

 ちなみに、最近最もウケたものは「今、洗濯機壊れてます!」。これはマダムの名札だったが、来店客に大いに話しかけられるきっかけとなった。このユニークな名札の狙いは、店主によれば「名札を名札として使わずコミュニケーションツールとして使うことにより、こちらから会話の糸口を切り出さずして、お客様に興味を持っていただく」。

 その道具として名札は最適であり、そうして興味を持っていただいたり、「実は僕も極真空手、習ってました」などと共通の話題が見つかれば、初対面でも話は弾み、住所・氏名などの個人情報もいただきやすくなるとのことだ。

 もうひとつの、漬物店における商品ラベルの取り組みも同様。こちらは商品に貼られている、通常は材料や消費期限などが書かれた商品ラベルの一部を利用して、お客さんとのコミュニケーションを意図したメッセージを記載、発信したものだ。

 さてここで最初のラベルの事例を思い出してほしい。これらは一見、場面もツールも異なるが、似たところはないだろうか? そう。お客さんとのあらゆる接点・機会をコミュニケーションに活かそうという発想。そして実際に、名札や商品ラベル、お買い上げのお印など、ありふれたものを見直して、活用していく着眼点である。

「一人で考えない」ことが実は成功のカギ

 しかしこういう取り組みはユニークで、一般的ではない。参考にする“考える材料”がなければ思いつくことは難しい。そこで重要なことは、いつも考える材料をインプットしておくことであり、その最良のもののひとつは具体的な事例だ。そしてそのためには、そういう事例が多く集まる「場」――物理的な場とは限らないが――に参加し、常にそして自然にインプットできる環境に身を置くことだ。

 最初のラベルの取り組みを行った店主は、まさにそういう環境のなかで先の2つの事例を知り、その成果と共にインプットしておいた。そして今回のお印の課題解決にあたって、共通項のあるそれらの事例が思い出され、考える材料とした。それが今回の発想と成果につながったのである。

 そういう環境にあるものを、専門的には「集合知」という。この変化が激しく速い社会では、一人で考え行えることには限りがある。だから集合知を活用し、多くの他者の知を自分のものとして、常にユニークな発想で、結果を出し続けていくことが不可欠だ。こういう時代には、“一人で考えない”ことが、実は成功のカギとなるのである。

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文/小阪裕司

こさか・ゆうじ。オラクルひと・しくみ研究所 代表/博士(情報学)。山口大学人文学部卒業。1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「感性」と「行動」を軸としたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県から約1500社が参加。2011年工学院大学大学院博士後期課程修了、博士(情報学)取得。著書は『価値創造の思考法』など計39冊。https://kosakayuji.com/

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