
2019年 焼酎メーカー売上高ランキング 50
TDBによると、焼酎の消費量は約77万9500キロリットルと、依然として根強いファンを抱えているものの、さかのぼって確認できる2007年度(100万4700キロリットル)以降、初めて80万キロリットルを割り込んでいる。
酒類合計も5年前の2013年度(859万1100キロリットル)から4.0%減少の824万5900キロリットルと酒離れが進んでいる傾向が見受けられ、消費者の嗜好の多様化と相まって、焼酎業界は厳しい状況に立たされている。
3位 オエノングループ 390 億 6200 万円(前年比 2.7%減)
オエノンホールディングス(株)では、傘下の合同酒精(株)(東京都墨田区)、福徳長酒類 (株)(千葉県松戸市)、秋田県醗酵工業(株)(秋田県湯沢市)の3社で焼酎を製造してお り、本調査では同3社の焼酎事業の売上高[有価証券報告書記載のセグメント別アイテム(主 要製品)別の販売実績]を集計対象としている。
2008 年以降、連結売上高に占める焼酎の比 率が5割を下回って集計対象外となっていたが、2017 年からランキングに復帰した。 しそ焼酎「鍛高譚(たんたかたん)」をはじめ、本格焼酎「博多の華」シリーズ、北海道に おいて大きなシェアを握る甲類焼酎「ビッグマン」シリーズなど多様なラインナップを展開し ている。
「博多の華」シリーズ、甲類乙類混和焼酎の「すごむぎ」「すごいも」シリーズが好調に推移したものの、メーカーと組織小売業者等が商品を共同開発するPB(プライベートブランド)商品の減少が全体を押し下げる要因となった。また、甲類焼酎の「そふと新米」の売り 上げ伸び悩みも減収の一因となった。 なお、トップ 10 の顔ぶれや順位は前年と変わらないが、全社が減収となった。上位 10 社全 てが減収となるのは調査開始以来、初めて。
2位 三和酒類 429 億 2700 万円(前年比 3.6%減)
三和酒類(株)(大分県宇佐市)は、8年連続で2位をキープ。“下町のナポレオン”の愛称 で知られる「いいちこ」シリーズを主体に、地元大分県産の麦を使用した「西の星」ブランド を展開。関東・関西・中部などの大都市圏をはじめ、北米やアジアなど世界各国・地域に販路 を構築している。
2019 年 4 月に「いいちこ」発売 40 周年を記念して発刊 40 周年になる週刊 ヤングジャンプとコラボキャンペーンを開催したほか、2019 年 9 月に開催された「ラグビー ワールドカップ 2019 年」にちなんだラグビーボール型のいいちこボトルを販売するなど主力 商品の拡販に努めたが、減収を余儀なくされた。
1位 霧島酒造 619 億 2000 万円(前年比 6.0%減)
全国焼酎メーカーの 2019 年(1月期~12 月期)の売上高ランキングは、8年連続 1 で霧島 酒造(株)(宮崎県都城市)がトップとなった。「黒霧島」を主体に、「白霧島」、2018 年 10 月 から通年販売になった「赤霧島」などを展開している。
期中に「黒霧島」の醸造に用いる「黒 麹」と清酒の醸造に用いる「黄麹」を掛け合わせて製造した「虎斑霧島」を新発売した。ま た、イギリスで毎年開催される酒類品評会「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ (ISC)2019」において『茜霧島』が芋焼酎部門でトロフィー(最高賞)を受賞するなど、高 い知名度を維持した。
しかし、ハイボール缶などのRTD飲料の台頭により前年比 6.0%減と なった。これまで 3 月と 9 月に販売していた赤霧島を通年販売に切り替えたことで、決算期で ある 3 月のまとめ買い需要がなくなったことも売り上げ減少要因の一つとなった。
今後の動向として酒税法の改正と新型コロナウイルスによる影響は考慮すべき点だ。2018 年の酒税法改正により、2026 年の10 月までに、3段階で酒税が変更になる。
第一段階として 2020年10月からビールや日本酒が減税され、新ジャンル(第三のビールなど)や、ワインは増税する。 焼酎に直接関係ないものの、最初の一杯として根強いビールや、年々、輸出量が伸びている日本酒が減税となることは焼酎業界にとっても油断できない内容だ。
加えて、2020 年は新型コロナウ イルスの流行で“外飲み”より“家飲み”を選択する人が増えている。長期自粛を余儀なくされる期間もあったことから、スーパーやディスカウントストアなどで販売する紙パックやペットボトル商品の需要が伸びている可能性が高い。
しかし、自宅で飲む頻度が高い人にとっては大容量で自身の好みに割って飲める甲類焼酎等がお得だが、たまにしか飲まない人には缶を空けたらすぐに 飲めるRTD飲料が目に留まるだろう。
若者の酒離れや健康志向の増加を考慮すると、後者の方が売り上げを伸ばしている可能性が高い。また、飲食店での焼酎消費量の落ち込みが売り上げの推移にどれだけ影響を与えるのかも注視したい。
いずれにせよ焼酎業界に留まらず、酒類消費量の低下は酒業界全体の課題である。消費者の嗜好の多様化に合わせた商品の開発を行うか、海外市場の取り込みを狙うのか、国内市場の先細りがみえるなかで、生き残りをかけた戦略を構築する必要がある。
帝国データバンク福岡支店では、売上高に占める焼酎・泡盛の割合が5割以上となった酒類製造業者(焼酎・泡盛以外の事業で計上した売上高も含む)を『焼酎メーカー』と定義。
企業概要ファイル「COSMOS2」(約147万社収録)より、全国の焼酎メーカーの2019年(1月期~12月期)売上高をランキング形式により抽出し、上位50社の売上高や利益動向などについて集計した。なお、調査は2019年8月に続く17回目となる。
構成/ino.