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なぜ「ジョブリターン制度」が即戦力人材確保の決め手となるのか?

2020.09.29

「中途採用した社員が戦力になる前に退職してしまうケースが多くて困っているよ。貴重な時間とコストをかけて採用しているけど、社員からは、かえって忙しくなっていると不満を言われているし、やっぱり、育児が理由で退職したあの人の代わりが務まる人なんて、そうそう見つからないよ」

「ジョブリターン制度を検討してみましょうか?」

「なに、それ?」

 この会話は、育児が理由で退職した社員の補充として中途採用を行なってもうまくいかないことを嘆くある中小企業の社長からの相談です。

 中小企業にとって優秀な社員の退職はダメージが大きく、コロナ禍の現在においても即戦力となる人材を確保することは難しい状況が続いています。残された社員たちの連鎖的な退職を防ぐためにも、自社を退職した社員を、本人の希望等により再雇用するジョブリターン制度は、企業にとってさまざまなメリットをもたらす可能性があります。そこで今回は、ジョブリターン制度の導入のポイントを解説していきたいと思います。

ジョブリターン制度を広く認める企業が登場

 ジョブリターン制度を採用している企業で多いのは、育児・介護・配偶者の転勤等によりやむを得ず退職した社員に限って認めるものですが、そのような制限は設けず、原則すべての自己都合退職者に認める企業も増加しているようです。

 例えば、森永乳業は正社員として3年以上勤務した者が退職した場合には、離職理由や退職から再雇用までの期間に制限なく再雇用を認める制度を2008年から導入しています。また、明治も今年から同様の制度である「リ・メイジ制度」を導入しました。

 どちらも制度導入のときは、出産・育児等のやむを得ない理由で退職した社員に限り認めていましたが、自社での経験からノウハウや企業文化を熟知している社員を再雇用することで、即戦力の人材を確保する等の理由から、対象範囲を拡大しました。その他、大日本印刷やコニカミノルタなどの大企業が制度導入を公表しており、高い効果が認められた制度といえます。

一方、中小企業は制度導入を公表しているケースは少ないですが、即戦力の人材が必要なのは、むしろ中小企業の方です。東京都では、結婚・配偶者の転勤・妊娠・出産・育児または介護を理由に退職した社員が元の会社に戻って働ける環境を整備する中小企業等を後押しするため、「育児・介護からのジョブリターン制度整備奨励金」を受付けています。

戻ってきやすい制度作成がカギ

ジョブリターン制度が成功するかどうかは、戻ってきやすい制度作成がカギになります。退職した社員を優遇するだけでなく受け入れる側の社員への配慮も必要です。

1.制度設計の方法

制度設計の方法はさまざま考えられます。例えば、退職時にジョブリターン制度の登録を希望する人に対して退職後の連絡先を登録してもらい、定期的にメールマガジンの配信等を行うものや、通常の中途採用ルートとは別に優先的に採用する方法等があります。また、特別な優遇はしないが、不利に扱うことをしないことを表明し、いつでも戻ってきてよいというスタンスを明確化している企業もあります。

2.適用範囲と条件の設定

まずは、適用対象者の範囲を「育児・介護等によりやむを得ず退職した社員に限る」のか、「よりよい労働条件やキャリアアップのために転職した社員も含める」のかを検討してみるのがよいでしょう。自分の意思でキャリアアップのために転職した社員を戻すことに対して、受け入れる側の社員の不満や不公平感が高まる事態になることは絶対に避けたいところです。次に、適用条件ですが、多くの場合、一定の勤続年数要件を設けています。例えば、「3年以上勤続して退職した者を対象とする」等です。あまりにも勤続年数が短いと、制度の適用になじまず、通常の応募者と同様の取扱いにすることが公平だからです。また、退職してから再雇用するまでの期限を検討するのもよいでしょう。例えば、「退職後5年まで」等と定めることです。職種によっては退職後、あまりにも長期間が経過すると、かつて在籍していたからという理由で優遇する意味が失われるからです。

中小企業では導入が難しいのか

 ジョブリターン制度は、即戦力の人材の確保、ミスマッチと採用コストの抑制等が期待でき、大企業だけでなく全ての中小企業にとっても大きな効果が見込めます。中小企業は大企業と異なり、働くメンバーが同じになりがちで部門異動が難しい側面もあり、自分の都合で退職した社員を再雇用すると受け入れる側の不満が生じやすいですが、決して、導入が難しいということはありません。まずは、再雇用者と受け入れる側の社員で不公平感が生じないよう、制度の目的や再雇用者の待遇について十分に話し合うことから始めてみてください。仮に制度化までできなくても、戻ってきたいと言ってくれる即戦力となり得る人が出てくるかもしれませんし、退職者に寛容な職場風土の醸成にも期待でき、社員にとって働きやすい会社に一歩近づくことになるからです。

文/和賀成哉

社労士。大槻経営労務管理事務所所属。不動産の営業から同事務所に転職し、長時間労働の問題に取り組む中で社労士の資格を取得。「なぜできないのか」ではなく「どうすればできるのか」をテーマに、日々クライアントへの提案を行っている。また、労働と保険制度に関するセミナー講師としての顔も持つ。https://www.otuki.info

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