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コロナ禍の今、スイスから一時帰国して感じたゆるくてグレーな日本の水際対策

2020.09.25

WHOのパンデミック宣言から半年、世界の新型コロナウイルス感染者は3000万人を突破し、収束の兆しは見えない。早々に「コロナとの共存」方針に切り替えた欧州の国境開放とは異なり、日本は世界159か国を「入国拒否対象地域」に指定し事実上の「鎖国」状態にある。

仕事や家庭の事情で帰国する日本人、またタイやオーストラリア、シンガポールなどビジネス目的の往来など、渡航者が直面する、20年9月10日前後における日本の水際対策はどうなっているのか? スイスに長年住み、今回危急の用事により帰国を余儀なくさせられた、筆者の体験をレポートしたい。

スイス・ジュネーブ国際空港は賑わいを取り戻している

日本への出発地スイス・ジュネーブ国際空港のチェックインカウンターは、早朝から長蛇の列でごった返していた。急激な感染拡大が懸念されるフランスやスペインなど自主隔離の条件が課され始めたゾーンはあるが、EU・シェンゲン域内は基本的に自由な往来が可能であるため、空港も機内もまるで「コロナ以前」のような様相を呈している。

Photo by Yumiko Misaki

Photo by Yumiko Misaki

一方、マスク姿のスタッフや渡航者たち、プラスチックで囲われたカウンター、床のソーシャルディスタンスのサイネージが「コロナ禍の旅」を否応なく思い出させる。ジュネーブからアムステルダムへのKLM機は、3人掛けの座席の中央を空ける人数制限いっぱいの満席で、軽食時にはマスクを外して大声で談笑する渡航者で賑わい、非常時の緊張感も暗さもない。

アムステルダム・スキポール空港の日本行きフライトゾーンは閑散

Photo by Yumiko Misaki

Photo by Yumiko Misaki

1時間半でアムステルダム・スキポール空港に到着。これまで通り多くの渡航者が行き交っている欧州のフライトゾーンから、パスポートコントロールを経て日本行きのフライトゾーンに入るや、閑散とした侘しい光景が広がった。免税店は店開きしていても客はまばら、ビールバーやカフェは営業停止となっている。

関西空港行きフライトのゲートに近づくと、なぜか白い防護服に身を固めた、アジアの方と思われる渡航者が目についた。ピンク色のつなぎ風防護服姿で買い物をする女性もいた。海外へ渡航する際に義務付けられているのだろうか?

搭乗者は40人あまりで機内はガラガラ。エコノミークラスの4人掛けの席を独り占めし、手すりを上げて余裕で横になれるほど空いている。KLMでは、毎日運行する成田便、週5日運行の関西便が、10月下旬までわずか週1〜2本程度への間引き運転を余儀なくされている。この状況がいつまで続くのかを考えると、久しぶりの帰国なのに気分が上がらない。

かつてエコノミークラスでも定評のあったKLMの機内食は、パスタサラダにペンネのトマトソース、キャラメルケーキという謎のメニュー一択。バランスの良いメニューとは言い難いが、感染症対策のためにサラダなどの生野菜は提供できないようだ。少なくともワイン付きで暖かい食事を口にできるのはありがたい。

日本入国の様子と入国者の国内移動

Photo by Yumiko Misaki

11時間のフライト中に、到着後の検疫の手順、健康カード、質問票などが配布され、あらかじめ記入しておく。以前は鼻の粘膜を採取して行われていた抗原定量検査は唾液採取の方式に変わり、大幅に検査時間が短縮された。到着時刻や人数にもよるが、到着から大勢の検疫・空港スタッフにスムーズに誘導され、1時間半程度で検疫・入国審査をすませることができた

海外からの帰国者にとって問題なのが、検疫所に提出すべき「質問票」の内容だ。過去14日間に「流行地域」(入国拒否対象地域159か国)への滞在歴があるか、自宅やホテルなど14日間の自主隔離中の日本における滞在先の住所と滞在期間、さらに「公共交通機関の使用なし」にチェックを入れ署名しなくてはならない。票の下部に小文字で「虚偽の申告をした方は、検疫法36条の規定により罰せられることがあります。(6か月以下の懲役または50万円以下の罰金)」との記載がある。

検疫済みの赤い紙と検査結果 / Photo by Yumiko Misaki

抗原定量検査の結果が陰性であろうとも、コロナウイルスの潜伏期間とされる14日間の自主隔離を経た上でなければ、飛行機、新幹線、バス、タクシーなど一切の公共交通機関を使うことはできない。そのため、帰国者は家族や友人、同僚などが運転する車で、またはレンタカーを自分で運転して自主隔離場所まで移動するしかない。

特定の客だけが乗る貸切ハイヤーや、空港出迎え付きの自主隔離用民泊がこのビジネスチャンスを掴み、激減したインバウンド観光の穴埋めに勤しんでいる。貸切ハイヤーは関空-広島10〜12万円、成田-九州30万円の高額サービスでも需要があり、自主隔離民泊もGo Toキャンペーンが追い風になりそうだ。

しかし実際は、14日間の自主隔離、公共交通機関の利用自粛に法的な拘束力はなく、あくまでも「要請」にすぎない。検疫法36条の適用は「虚偽の申告」に対するものなので、「公共交通機関の使用なし」にチェックを入れずに提出し、バスや電車で帰宅すれば良い、という論理も成り立つのではないか。検疫の際、「公共交通機関は使いませんね」と口頭で確認されたのみで、どの手段を使うのかも聞かれず、係官が到着ロビーでハイヤーに乗り込むまでチェックすることもなかった。実態を知る由もないが、陰性が出たから、とこっそり公共交通機関で帰宅する帰国者がいても不思議ではない。

閑散とした関西空港到着ロビー / Photo by Yumiko Misaki

とはいえ、多くの日本人の習性として、「万が一」や「周囲の目」を考える。大都会はともかく、多くの地域で海外からの帰国者は目につく。お盆休みに東京から地方への帰省者でさえ病原菌のように忌み嫌われた日本に帰国するにあたって、あえて「要請」に背く日本人は多くないかもしれない。そこにつけ込んだ緩くグレーな水際対策は外国人には通用しないだろう。いつこの「鎖国」状態が解けるのか。来年本当にオリンピックが開催できるか否かが、重要なターニングポイントになるのではないだろうか。

参照リンク:
外務省 海外安全ホームページ(日本における新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際対策措置)
法務省 新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について|新型コロナウイルス感染症の感染拡大に係る上陸拒否措置及び国際的な人の往来の再開の状況(概要)

取材/文:三崎由美子

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