
コロナ禍でLGBTQが抱える不安や困難
「コロナ禍に限らないが、LGBTQも安心して相談できる職業相談所があればなと思う」(20代前半・バイセクシュアル男性)
新型コロナウイルスの感染拡大は、様々な分野において中長期的な影響が予想されるが、LGBTQ当事者が直面する不安や困難についての声は、社会における差別や偏見が根強く残り表面化しにくい。
特にLGBTQユースは、更に孤独感を抱えたり、居場所を見つけにくくなっており、適切な支援が届きにくい状況だ。
そこでプライドハウス東京は若い世代のLGBTQなどのセクシュアル・マイノリティが抱える不安や困難についての声を集める緊急アンケート調査『LGBTQ Youth TODAY』を実施した。
1)セクシュアリティについて話せる人・場所とつながれなくなることによる困難
LGBTQユースの約37%は、普段から自身のセクシュアリティについて安心して話ができる人・場所がなく、更にコロナ禍で「つながりがなくなった」「つながりづらくなった」という割合は、36.4%にのぼった。
コロナ禍の暮らしの困りごとや不安についての自由回答では、当事者の友人やパートナーと会えない心理的負荷を抱える様子が窺える。
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2)無理解な家族・同居者とステイホームすることによる困難
LGBTQユースの73.1%が、家族などの同居者との生活において困難を抱えていると回答した。その具体的な困難状況は、「同居者からLGBTQでないことを前提とした言動がある」(41.6%)、「同居者にLGBTQであることを隠さないといけない」(36.3%)、「同居者がLGBTQに否定的な言動をする」(27.9%)という結果で、同居者のLGBTQへの無理解が困難の背景にあることがわかる。
また、自由回答には、家族と衝突している、家族から暴力を受けているという喫緊な状況や、緊急時に安心して暮らせるハウジングを求める声などが寄せられた。
一方、同居者との生活に困難を感じていないと回答したLGBTQユースの7割弱が、本人のセクシュアリティを肯定的に捉えている同居者が少なくとも一人はいると答えていることから、LGBTQユースが家で安心して過ごすためには、家族等の同居者からの理解が非常に重要であると言える。
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3)休校やオンライン学習で見えない新学生生活、今後の進路・将来への不安
LGBTQの学生の約35%が、普段から学校が安心できる場所ではないと回答している。コロナ禍において休校やオンライン学習に切り替わり、LGBTQの学生の約55%が進学・受験・就職等の進路についての不安を抱えていると答える一方で、約17%は「これからも学校に行きたくない」と回答。
自由回答では、キャンパスでの受講がないことから、学校にLGBTQ関連の相談をしづらい等の新生活への不安の声があがった。また、就職を控えるLGBTQの学生からは、景気の悪化から企業におけるLGBTQへの取り組みが減少する、就職難の加速によりマイノリティであるLGBTQの就活が更に困難になる等を、懸念する回答があった。
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4)収入減少や失業・休業による経済的な不安・困難
LGBTQユースの24.9%が、新型コロナウイルス感染拡大前後で失業・休職/休業などを経験していることがわかった。また、LGBTQユースの38.5%が、今後収入が減少する見込みだと答えている。
LGBTQユースの世帯全体においても、収入が減少(36.5%)、経済的に困窮している(14.6%)、今後が経済的に心配(38.6%)、と経済的影響が見られる。
自由回答でも、アルバイトや就業における収入減少への不安のコメントが多く、収入減により学校へ通えなくなる不安や、実家に戻ったことで高まる同居による困難など、複合的な不安や困難も挙げられた。中長期化する経済状況の悪化のなかで、LGBTQの存在に配慮した就業支援を望む声なども寄せられている。
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5)感染時の対応や、医療アクセスに関する不安
他団体が実施した調査結果同様に、新型コロナウイルスに感染した際に医療現場で同性パートナーが家族として扱われるか、入院時に自認する性で扱われるか、望まない形でセクシュアリティが知られてしまわないか等、感染時の医療などの対応について、セクシュアリティに由来する不安の声が寄せられた。
また、性ホルモン投与や性別違和に関する理由で定期的に通院しているトランスジェンダーのユースの約72%が、コロナ禍での通院に不安を抱えていることがわかった。主な不安の理由は、本人と周囲の新型コロナウイルス感染リスクに対する懸念となっている。自由回答には、通院がしづらくなり、心身の健康状況が悪化している声も。
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概要
新型コロナウイルス感染拡大により、LGBTQなどのセクシュアル・マイノリティの若者(12歳~34歳)に、どのような困難が起こっているのかを把握し、国や各種団体、メディア等に届けることで、状況の改善に繋げていくことを目的としている。
期間:2020年5月11日(月)~6月14日(日)
構成/ino.