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客がヘルシーなメニューを選びたくなる飲食店の特徴

2020.09.19

 何かと“ソーシャルディスタンス”が意識されてくる昨今だが、そうなると歩行者が多い通りではなるべく人に近寄らないようにして歩かなければならない。かといって気にし過ぎればきりがなくなる。マスクをしている以上はそこまでナーバスになる必要もないのだろう。

日没後の賑やかな飲食店街を歩く

 取材仕事の帰路に新宿駅で降りて少し歩くことにした。急ぎの用事はもうない。猛暑もようやくひと息ついて、少しは歩ける季節になっている。小滝橋通りを大久保方面に向けて歩く。

 少し進むとやたらと飲食店が目立つ。インパクトが強かったりカラフルだったりと目を惹く看板も多く飲食店街の様相を呈している。この後、特に予定のない身としてはそうした看板の誘惑をスルーし続けることはできそうもない。そもそもこの通りにやって来たのも、ちょっとどこかで軽く……という思惑があってのことだ。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 飲食店が目立つ通りではあるが、もちろん一般の店舗やオフィスもある。整体マッサージの店などもあるが、飲食店に囲まれた中での営業はどんなものなのだろう。まったく想像がつかないが、付近の飲食店の数がマッサージ店の客の入りに影響を及ぼすなどということがあるのだろうか。

 そしてもちろん、飲食店同士が隣り合わせていたり、向かい合って店を構えている場所も少なくない。ある一角では牛丼屋とカレー屋、そしてラーメン店が三方向から顔をつき合わせていて、ラーメン店の地下には魚介料理の食堂がある。何も考えずにとりあえず何か食べようとしている者なら迷うこと必至だ。

 ここに密接して並んでいる店はすべて別ジャンルの飲食店で“被らない”組み合わせになっていて、さながらデパートの飲食店フロアに似た状況をつくり出しているともいえる。デパートの飲食店フロアのように、漠然と何か食べたいと考えている者を引き寄せる集客力はこの一角にもありそうだ。そしてその場合はやはり“被らない”ほうが各店舗にとって都合が良さそうにも思える。

 個人的には今、特に食事がしたいわけではなかった。あくまでもちょっと一杯、なのだ。歩みを止めることなくこの一角を左に折れる。

 ともあれ隣接する店は“被らない”ほうがよさそうに思えるのだが、それでもラーメン店などはそれぞれ別の店が隣り合って並んでいるのを見かけたりもする。有名な札幌・すすきのの“ラーメン横丁”の例もある。まさかラーメン店に限っては並んでいると相乗効果でお客の入りが増えるなどということがあり得るのだろうか。それとも、被っていようがいまいが、結局はその店の“実力”の問題なのか。

 小さな公園に行き着き、そこを右折してさらに進む。住宅街の様相を呈してくるが、魚介系の居酒屋や中華そば店など飲食店も目立つ。少し進んだ十字路に良さそうな立ち飲み屋があった。けっこうお客が入っていて人気店のようだ。試しに入ってみよう。

 店に入ると空いているカウンターに通される。店内には背が高い丸テーブルがいくつかあり、団体客が車座ならぬ車立ち(!?)して卓を囲んで飲んでいる。お客はスーツ姿と私服が半々といった感じで、地元の人々も多そうだ。

 カウンターはこのご時世に則ってか透明なアクリル板のパーテーションで区切られている。決して狭くもなく不便でもない。むしろ一人客にとっては、ほかのお客に余計な気遣いをせずに済むので快適といえるのかもしれない。

“ヘルシーメニュー”を選ばせる方法とは?

 ひとまず生ビールを注文する。串焼きも注文するつもりだが、刺身などは冷蔵ショーケースに並べられていて、自分で好きなものを取って来る形式になっている。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 縦長のケースの上段にはザク切りキャベツや枝豆、冷奴などの“ヘルシー系”の惣菜があり、中段にはしらすおろしやマグロの山かけなどがあり、下段に刺身類が並べられている。ざっと15、6種類はあるようだ。

 きゅうりの漬物とシメサバを取り出し、いったん店員さんに渡すとラップを外してワサビなどを盛ったものを改めて席に持って来てくれる。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 ではさっそくはじめることにして、ビールのジョッキを傾けてシメサバを賞味。けっこう歩いたぶん、ビールがうまく感じられる。ひとまず喉を潤してからは、串焼き各種ともつ煮込みも注文。

 外食でのサラダ的なメニューや居酒屋では漬物のような“箸休め”の一品を注文しない人も少なくないが、個人的にはけっこう注文するほうだ。こうしたメニューを注文することは、当人の健康面でのメリットもさることながら、地球環境にとっても優しいことであるとして推奨されている。そうした“ヘルシーメニュー”を摂ることで、食べ物の中での食肉の割合が抑えられ、大量の二酸化炭素を排出する畜肉生産の需要を減少させることができるという理屈だ。

 何もベジタリアンやビーガンにあえてなることはないにしても、毎回の食事で一定量の“ヘルシーメニュー”を加えることをぜひ心がけたいものだが、どうしたら人々にヘルシーメニューを選ばせることができるのだろうか。これにまつわる話題として、興味深い最新の研究が報告されている。ヘルシーメニューを選ばせるには“距離”が鍵を握っているというのだ。

 英・ケンブリッジ大学の研究チームが2020年8月に「Nature Food」で発表した研究では、大学の学生食堂を実験の舞台にして、作り置きメニューの配置が消費に及ぼす影響を探っている。


 食堂のカウンターで展示される食事の順序を変更することは、肉の消費量を減らす方法として提案されていますが、ほとんどテストされていません。

 これに対処するために、イギリスの大学の食堂で10万5143の食事の選択を含む2つの実験的研究を行いました。菜食メニューのオプションを最初にカウンターに配置し、1.5m以上の間隔を空けた場合で一貫して売上が増加しました。

 しかしながら菜食メニューと肉食メニューを1m以内に近づけるとこの効果は確かめられませんでした。これは順序効果がオプション間の物理的な距離に依存することを示唆しています。

※「Nature Food」より引用


 これまでの研究で、作り置きメニューの配置においてヘルシーな菜食メニューを動線の前にすることで、菜食メニューがより多く選ばれることが報告されているのだが、その詳しいメカニズムはよくわかっていなかった。今回研究チームは複数の大学の学食の大量のデータを検分したところ、菜食メニューを動線の前に配置し、そこから1.5m以上の間隔を空けて肉食メニューを配置した場合において、菜食メニューの消費が増えることを突き止めたのだ。そしてこの場合、その日の全体の売り上げも増加するというのである。

ますます重要な“距離感”の問題

“ヘルシーメニュー”を手の届きやすいところにもってきて、多くが本命視するメニューを遠くに置くということでは、先ほどの冷蔵ショーケースもおおむねそのように並べられているともいえる。目の高さに近い最上段にキャベツや枝豆、漬物などが並んでいて、一番下の棚に刺身が置かれているのである。

 このよう配置にすることで、刺身に目を向けるまでに多くの品が目に入り、「これもいっておこうか」と手にとりやすくなるかもしれない。やはり“距離”は重要ということだろうか。

 串焼きともつ煮込みも運ばれてきた。串焼きはカシラ、ハラミ、タン、ハツにシシトウにシイタケをすべて塩で。タンは歯ごたえがあって美味しいし、煮込みも期待通りである。生ビールを飲み干してチューハイを注文する。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 このご時世で“ソーシャル・ディスタンス”が重要であるのはいうまでもないが、社会生活においては何かと“距離感”が大切である。それぞれの人間関係の距離感はもちろんのこと、自宅と職場の間の物理的な距離などもこの状況下であるからこそますます重要になっているのではないだろうか。

 串焼きはどれもうまかった。ほかの部位も追加で注文してみようかとも思ったが、今日はこれでいいだろう。チューハイが尽きてしまったので今度はハイボールを注文する。

 串焼きも美味しいし価格もリーズナブルで、店の雰囲気も良いので自宅の近くにあったら週に何度も通ってしまいそうな店である。実際にラフな格好をした近隣住民のようなお客さんもいる。

 しかしここでも“距離感”は重要だろう。もしもこの店が自宅の鼻先三寸にあった場合、距離的には容易に毎日でも通えるとは思うが、到底自分にはできそうもない。あまりにも近過ぎると外で飲んでいる気がしなくなると共に、お店で見知った人々に日常生活の徒歩圏内で出くわす確率も高まる。

 以前に、隣の建物の一階が中華料理店の賃貸物件に住んでいたことがあるのだが、とうとう最後までその中華料理店に入ることなく引っ越した経験がある。どんなに外出が億劫な時でも外食はその店以外のところで食べていたのだ。別に中華料理が嫌いなわけではない。もちろんそこまで気にすることはなかったのだろうが自分にはできなかった。まさに“距離感”の問題である。

 さて、そろそろお会計をして店を出ることにしよう。帰路にシメで何か食べていってもよい。密集した距離で“被らない”店が並んでいる一角か、それとも2店が軒を並べているラーメン店か、はたしてどちらに食指が動くだろうか……。

文/仲田しんじ

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