
株式取引を始める前にまず知っておきたい「PER」「PBR」は、株価が割安か割高を見る指標のひとつです。現在高値圏となっている日本の株式市場はこの2つ指標で見ると割高?それとも割安なのでしょうか。
今の株価は割安?PERとは?
PERは、株価収益率ともいい、株価が会社の利益に対してどれだけ買われているかを表し、利益に対して現在の株価が割安か割高かを見る指標です。
PER(株価収益率)=株価×発行済株式数(自社株は含まないことが多い)÷当期純利益
または株価÷1株利益(EPS)で計算されます。
当期純利益は1年間の純利益で、1年間で企業が稼いだ利益を投資資金(株価)で割ると、何年で回収できるかを表します。すなわち、数値が高いほど投資資金を回収できるのに多くの年数がかかるため株価は割高といえ、数値が低いほど少しの年数で投資資金を回収できるため、割安といえます。
つまり、PERの数値が低いほど今の株価が割安で、高いほど割高だといえます。
会社や業種によって利益額や株価水準が異なるため、PERの数値は同業他社と比べたり、その企業の過去と比較したりして割安かどうかをみます。
計算の基となる純利益の数字は、今期の純利益を使用する場合と来期の予想純利益で計算する場合があります。株価は先行して動くため、株式を購入する際に参考にしたいのは、会社が出す来期業績予想を基にした純利益です。証券会社等が示すPERも、来期の業績予想による『予想PER』となっています。
ただし、予想PERの計算の元となる純利益の数字は、あくまで予想であることに注意しましょう。
さらに、AI、自動運転、5Gなど今は利益になっていないものの、今後大きな利益を生みそうな企業の場合、先行して買われることで利益がそこまで出ていないのに株価水準が高いこともあります。
その場合PERの数字は100倍近くなどとんでもない数字になっており、PERがまったく参考にならないこともあります。そういう場合は割安かどうかではなく、その企業の事業内容の成長性を見て判断しましょう。
株式相場が暴落したときに参考になるPBR
PBRは、株価純資産倍率ともいい、株価が純資産に対してどれだけ買われているかを表し、これも株価が割高か割安かを見る指標です。
PBR(純資産倍率)=株価×発行済株式数(自社株は含まないことが多い)÷純資産
または株価÷1株あたりの純資産(BPS)で計算されます。
純資産は会社の財産である資産から借入などの負債を差し引いた金額となります。そのため、会社が解散するとこの純資産の金額は残ることになります。
分子となる「株価×発行済株式数」つまり時価総額は、この資金があれば市場で会社をまるごと買うことができる数字です。
このPBRが1を割り込むということは、純資産より分子である時価総額の数字が低いということになるため、会社をまるごと買えばこの純資産の金額分儲けになるということになります。
通常そんなことは考えられないため、1を割り込むことはあまりありませんが、リーマンショックのように株式市場が大きく下落し、企業価値が正当に評価されていない場合など1を割り込むことがあります。
赤字または今後利益が大きく減り負債が増えて純資産が減る可能性があるなどを除き、今後景気が持ち直せば正当に評価されるだろうと考えるなら、1を割り込む企業は大変お買い得に買えるので、投資してみてもよいでしょう。
最近の日本株式市場のPER、PBR
2020年9月9日現在、前期基準の日経平均のPERは17.96倍(予想は21.82倍)、PBRは1.08倍となっています(参考:日本経済新聞)。
日経平均のPERがここ3年平均10倍~15倍で推移しているところを見ると割高だといえます。
なお、予想PERについては、新型コロナウィルスによる業績への影響が見通せず、多くの企業が業績予想開示を見送っているため、予想を出している企業のみで出された数字となっています。今後、2021年3末予想が開示されれば、現在開示を見送っている企業は好業績であるとは考えづらいため、この株価水準が続けばPERはさらに高い数字となるかもしれません。
文/大堀貴子
フリーライターとしてマネージャンルの記事を得意とする。おおほりFP事務所代表、CFP認定者、第Ⅰ種証券外務員。