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部下の能力を最大限に伸ばそうとする上司とチームとしての規律を優先する上司の境界線

2020.09.12

■連載/あるあるビジネス処方箋

今回は、専門学校や大卒、大学院などの新卒時に中小企業への就職を私が積極的には勧めない理由をあらためて書きたい。結論からいえば、20~30代半ばまでの人が安心して働き、納得感を持ち、キャリアを積んでいくのは相当に難しい環境であることを確信するからだ。

そのように感じたエピソードを紹介しよう。数日前、サッカーJリーグの元選手を取材した。1時間半にわたり、チーム作りをテーマに話を伺った。特に上司と部下の関係を集中的に聞いた。

強く印象に残った次の言葉を紹介したい。監督が選手を育成する際に、必要以上に指導や助言をして、戦意を喪失させてしまう可能性があることを指摘したものだ。

「選手に脳を使わせないようにしてしまう監督はいましたね。そのような監督は「俺の言うことになぜ従わないんだ!?」「俺の言っているとおりに、どうしてしないんだ!」といった意識が強かったように思います。それが選手の発想やアイデアを破壊してしまう場合もありました。それほどに、選手の脳を活性化させる監督は珍しいんです。ほとんどの場合が、選手の能力を最大限に伸ばそうとするよりは、チームとしての規律を優先します」

元選手は、10代の頃からサッカーのエリートコースを歩んできた。プロを引退するまでに20人近くの監督やコーチに仕えた。いずれも、コーチチングや育成方法を学んでいたようだ。それでも、選手の考える機会を奪い、発想やアイデアを潰してしまう指導者はいたという。

ここで、読者とともに考えたい。ごく普通の会社員の管理職で、果たして部下の育成を時間内できちんとできる人は何人いるだろうか。私は会社員の15年間(1990年~2005年)をふりかえり、11人の上司に仕えたが、1人もいなかった。他の部署の管理職を観察していても、その下にいる部下たちに直接聞いても、育成力を兼ね備えている人は相当に少なかった。むしろ、前述の元Jリーガーが指摘するように、「俺の言うことになぜ従わないんだ!?」「俺の言っているとおりに、どうしてしないんだ!」とたたみかけるほうがはるかに多かった。

私は企業の人事部への取材が多いが、人事部の部長や課長から「管理職の部下育成力が(その会社にとっての)課題である」とよく聞く。部下育成がなかなかできないのだという。管理職中心の態勢を作り、常に自分に従わせようとするのだという。これは、部下の能力を最大限に伸ばそうとするよりは、チームとしての規律を優先しているとも言えるだろう。

確かに、私が仕えた上司のほとんどが「自由に意見を言え!」「フランクに話し合おう」と部下に呼びかけていた。だが、自分が推す案をいかに実現させるかといった議論しかさせなかった。上司の案を否定する部下を評価はしないようだった。たとえば、私である。つまりは、部署をある意味で私物化しているようでもあった。これで部下の意識を高め、仕事により一層に取り組むようにするのは難しいのではないか、と思う。育成などは、まず不可能だろう。

こういう管理職は中堅、大企業にもいるが、私の観察では中小企業やベンチャー企業に目立つ。その理由には、中堅、大企業に比べると、新卒時の採用試験の難易度が相対的に低く、定着率も概して低いことがある。結果として、管理職の昇格が中堅、大企業よりは容易になる傾向がある。しかも、管理職研修など教育態勢が整備されていない。そのうえ、20∼30代の社員の定着率が低く、部下が次々と辞める。部下が育たないから、上司はいつまでも上司であり続ける。これでは、部下育成力は身につかないだろう。

結局、「俺の言うことになぜ従わないんだ!?」「言っているとおりに、どうしてしないんだ!」と高圧的な態度で部下に迫る管理職が増える可能性が高い。

上司と部下の関係は、古くて新しい問題である。上司は、常に「自分は部下の発想やアイデアを破壊していないだろうか」。部下は「自分の上司は選手の能力を最大限に伸ばそうとしているか」と機会あるごとに考えたいものだ。読者諸氏の上司は、部下の能力を最大限に伸ばそうとするよりは、チームとしての規律を優先していないだろうか。

文/吉田典史

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