
リーダーシップは、リーダーとしてのスキルであるだけでなく「万能コミュニケーションツール」であることをご存知だろうか。つまりリーダーとは無縁の人にも使える技術なのである。リーダーシップに関する講演やコンサルティングを行う折戸裕子さんに、リーダーシップの解説と培うポイントを聞いた。
「リーダーシップ」はリーダーだけの特別なスキルではない!?
「リーダーシップ」のスキルと聞いて、「自分には無縁」「自分にはリーダーの素質がない」と思う人は多いかもしれない。しかし、リーダーシップは特別なスキルではないという。
折戸さんは、次のように話す。
【取材協力】
折戸裕子さん
中央大学法学部卒、英国国立ウェールズ大学経営大学院MBA。組織行動を分析する専門家。リーダーシップに関する講演・コンサルティング多数。【主な著書】『やむなくリーダーになる人が結果を出すために読む本』(明日香出版社)
株式会社カレントリンクス
http://www.currentlinks.co.jp
「多くの人が『リーダーシップはリーダーだけの特別なスキル』というイメージを持っています。そのイメージに合わない自分はリーダーにはなれないとも考えています。
例えば『明確なビジョンを示す』『目標達成のためにメンバーを引っぱる』などはよくあるリーダーシップの一部です。でも『リーダーになれない』と感じている人はきっとこう思うでしょう。『ビジョンはどうやって描く?』『どうすればメンバーを引っぱることができる?』
もしかしたらこんな風に思っているかもしれません。『ビジョンを示したのに効果がなかった』『メンバーが誰もついてこない』。
リーダーシップを『カタチ』でとらえていると、そのカタチにハマるやり方を知らなければ『自分にはムリ』となりますし、たとえそのやり方を行ってみても『自分にはできなかった』となりがちです。『カタチ』や『やり方』は決まっていないので、以前通用したこともうまくいかなくなったりします。つまり、テクニックやノウハウだけではリーダーシップは得られないのです。
大事なのは『自分』です。例えば、社内でゆるキャラ的に慕われる人が、リーダーになった途端にノウハウを駆使して『オレについて来いよ!』な振舞いをしても違和感しかありません。この場合は『みんなに支えてもらいたい』態度を示すほうが有効でしょう。多くの人が、この『自分らしさ』を忘れてカタチとやり方にフォーカスしたリーダーシップばかり意識してしまうのです」
リーダーシップは「万能のコミュニケーションツール」
つまりリーダーには「自分」がある限り、誰でもなれるし、リーダーシップを発揮することができるということにもなる。
実は、リーダーシップは「万能のコミュニケーションツール」でもあるという。
「『Leader is Reader』という言葉があります。リーダーは、状況を察知し、メンバーや資源の可能性を捉え、自分自身をも冷静に俯瞰できる、いわば『読む人』です。配慮してモノゴトを進める人間力のある人には信頼も集まるでしょう。人々はこれを『リーダーシップの発揮』と考えます。これは何もリーダーという立場に限らずとも発揮できるコミュニケーションです。
周囲から信頼を勝ち取る振舞いを心がけることで味方が増え、その人数分の知恵と経験値が強化されるわけですから、結果的に様々な相手や状況に対処することができるようになるのです。まさに万能のコミュニケーションを手に入れることになります。
モノゴトをよく読み、周囲を良い意味でまきこんでいくと、『あの人でよかった』『あの人は頼りになる』『あの人についていくとよさそう』となり、ひいてはリーダーを任されるということになるのだと思います」
リーダーシップの培い方
では、その万能のコミュニケーションツールであるリーダーシップは、どのように培うことができるのか。
「リーダーの『やり方』ではなく『あり方』を意識することです。突然持ち出されたテクニックの薄っぺらさはすぐに見透かされます。影響力発揮のコツやリーダーのノウハウを一生懸命調べても、『あり方』を理解しなければ、その『やり方』も使えません。
まずは、リーダーもメンバーの一人だということを忘れず、自分は他のメンバーを活かすために何ができるかという、自分なりのリーダー像をとらえることがポイントです。メンバー一人ひとりとの関わり合い方から見直していきましょう。
リーダーシップの歴史は約1世紀。わずか100年程で特性(資質)論、カリスマ(変革)型、サーバントタイプなど、時代背景とともに多様に変化しています。研究領域では、リーダーの定義や概念は未だに特定されていません。だからこそ、日々の生活の中で、自分なりのリーダー像を見つけることは意味のある取り組みになるものなのです」
リーダーシップを培うには、まず自分なりのリーダー像を見つけること。「リーダーなんて向いてない」などと自信をなくしている人こそ、ぜひイメージすることからはじめてみよう。
取材・文/石原亜香利
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