
「日本人を速くする」というコンセプトで開発されたアディダスの「アディゼロシリーズ」。その最新モデル「アディゼロ プロ」はトレンドであるカーボンプレートをアディダスで初めて使用したランニングシューズ。この「勝負シューズ」の実力をじっくり40㎞走ってテストを行った。
カーボンプレート×2つのミッドソール素材
アディゼロプロの特徴は、何と言ってもミッドソールに搭載された「カービテクス・カーボンプレート」。着地の際にこのプレートがしなり、蹴り出す時には反発してランナーに大きな推進力を与える。また反発だけではなく、着地の際にプレートが沈み込み過ぎをおさえるため、安定感ももたらしてくれる。
さて、このCARBITEXカーボンプレートを包んでいるのが、アディダス独自開発の「ブーストフォーム」と「ライトストライク」という2種類のミッドソール。クッション性と反発性を兼ね備えたブーストフォームは、かかとから前足部にまで入っており、その上に安定性が高く着地時の横ブレが少ないライトストライクが使われている。
地面と接地するアウトソールは、アディダスではおなじみとなったコンチネンタルラバーアウトソールを使用。タイヤメーカーとコラボした素材を使用することで、いろいろなコンディションでも高いグリップ力を発揮し、路面をしっかりととらえることでエネルギーロスを軽減してくれる。ペースをあげた時ほど、このグリップが効いてくるのを感じた。
ソックスが透けるほど薄く軽量なアッパー
続いて足を包み込むアッパーは、さすがレーシングシューズといったタイトな履き心地。ピタッと足を包み込み、スピードを出してもぶれないフィット感がある。
素材はアディダスランニングシューズのメッシュ素材の中でも最軽量のセラーメッシュを採用。ソックスの色が分かるくらい薄くて軽く通気性も良い。かかと部分はかなり薄く作られているが、アッパーのフィット感が高いためシューレースでしっかり調整すれば、ランニング中にかかとが浮くこともなかった。
スピードランナー用ではあるが扱いやすいシューズ
実際に走ってみると、2種類の素材を使用したソールのクッション性だけでなく、カービテクス・カーボンプレートの存在感を感じることができた。他ブランドのカーボンシューズは、つま先付近で着地することでその性能を発揮するものが多いが、このシューズは中足部やかかとで着地をしても、推進力を生んでくれる。ただ、すごく反発力があるかと言えばそうではない、ごく自然に推進力が高まる感じ。
そのためクセが少なく、通常のランニングシューズと同じように履くことができた。突出した何かがあるというよりは、バランスがよく全てが高機能という印象。ジョグのペースでも使いやすいと感じたので、おそらく多くのランナーがカーボンプレートの恩恵を受けられる。トップアスリートを念頭に作られたモデルだが、われわれ市民ランナーでも扱いやすく、多くのシーンで走行性の高さを感じることができるだろう。
これまでアディダスのシューズで走っていたランナーは、特に使いやすいかもしれない。印象としてはアディダスのこれまでのシューズを進化させたモデルであり、着地のクッション感、カーボンプレートから得られる反発性は確実に上をいくため、シューズの良さが実感しやすいはずだ。
コロナ禍によってランニングの大会が開催されず、走る目標がない、モチベーションが低下しているという方も多いと思うが(私もその1人)、幸運なことにランニング自体はこの状況の中でも行うことができる。新しいギアによってモチベーションが高まることもよくあるので、最先端のランニングシューズを投入して、刺激を入れてみるのも面白いだろう。
アディダス アディゼロ プロ
価格:22,000円(税別)
重量:240g (27cm 片足重量)
ドロップ:9.5㎜
今 雄飛(こんゆうひ):ミラソル デポルテ代表。スポーツブランドのPR業務を行うかたわら、自転車、トライアスロン、アウトドア関連のライターとしても活動中。趣味はロングディスタンスのトライアスロン。