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ホップの里からビールの里へ!岩手県遠野市のホップ栽培で地域活性化に貢献するキリンの新しいビジネスモデル

2020.09.10

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

日本産ホップの未来を担う「遠野ホップ」のさまざまな試み

キリンは、日本産ホップのブランド化によるクラフトビール市場の活性化と、ホップの収量を通した生産地域の活性化で、経済的価値と社会的価値の共創(Creating Shared Value=CSV)に取り組み、2027年に日本産ホップ収穫量100トンを目指している。

取り組みの背景にあるのは、日本産ホップ生産量の減少。生産量は直近約10年で半減、40年で1/10 以下に減少している。ホップは世界約30か国で300 品種以上あるといわれているが、アメリカとドイツが作付面積の1、2位で、日本の総生産面積は120ha。世界全体で見ると0.2%しか生産していない。アメリカの大規模農家は一軒で100haの面積のところもあり、規模の違いがわかる。日本では主に東北地方と北海道で生産され、キリンは日本のホップ生産の約7割を担っている。

岩手県遠野市は半世紀以上に渡りホップ栽培を続けている。CSVの具体的な例が遠野との取り組み「TK(遠野 × キリン)プロジェクト」で、2007年に遠野市、遠野ホップ農業協同組合、キリンビール岩手支社で発足。ホップ生産を通し、それぞれの保有する資源、組織などを生かしながら地域振興を図っている。

「技術と製品」で日本産ホップを「価値化」したのが、TKプロジェクトのきっかけともなった「一番搾り とれたてホップ 生ビール」。今年で発売17年目を迎える、遠野産の生ホップを使った期間限定のビールで、今年は11月4日から発売される。

「通常、収穫したホップは、水分を多く含み変敗しやすいため、水分含量を10%以下にして 乾燥させてから、保存性、輸送性、製造現場でのハンドリングに優れた加工形態を高めるペレット加工を行うのが一般的。しかし『一番搾り とれたてホップ 生ビール』は、収穫した生ホップを凍結してから冷凍車で出荷、凍結粉砕して使う。

キリンが栽培する日本産ホップは『IBUKI』 と『MURAKAMI SEVEN』の 2種。IBUKIは『一番搾り とれたてホップ 生ビール』にも使われており、爽やかな香りのする柑橘系のホップで、レモン、グレープフルーツ様(よう)と表現される。見た目も味わいもやわらかく、かわいらしい女性のような印象を持つホップ。

近年栽培を開始したのがMURAKAMI SEVEN。農学博士号を持つ“ホップ博士”としても知られ、私の師匠でもある村上(敦司さん/元キリンホールディングス株式会社R&D本部 酒類技術研究所 主幹研究員が育種、開発した品種。優れた栽培特性があり、収量が従来種より約1.5倍と高く、作業が少ない省力化栽培ができるホップ。

見た目は力強い男性的な印象で、世界に類をみない個性豊かな香りのするホップ。イチジク、マスカット様(よう)、みかんのような和柑橘の印象がある、非常に珍しい香味を持つ品種で、海外のクラフトブルワーからも『ぜひ使ってみたい』という声が寄せられている」(キリンホールディングス 飲料未来研究所 杉村哲さん)

MURAKAMI SEVENを使用した、質のよい苦みが心地よいIPA「スプリングバレーブルワリー MURAKAMI SEVEN IPA」は、6月より全国の「Tap Marché(タップ・マルシェ)」のある店舗、SVB東京/横浜/京都の店舗、キリンオンラインショップ「DRINX」で販売している。

遠野ホップ畑から中継!「オンライン遠野ビアツーリズム体験会」

遠野ではホップを足掛かりに「ビールの里構想」を展開、遠野産ホップの安定生産により、ホップの里からビールの里として、地域活性化に貢献するビジネスモデルへ進化させていくという。 

ビールの里構想を担っているのが、2018年に設立されたBEER EXPERIENCE(以下BE社)。日本産ホップ生産の拡大と高度化、ビールのおつまみ野菜「遠野パドロン」生産の拡大と高収益化、遠野ビアツーリズム事業の展開という、3つの取り組みを行っている。

収穫時期が間もなく終わるBE社の遠野ホップ畑より、同社の取締役副社長・浅井隆平さんのガイドによる「オンライン遠野ビアツーリズム体験会」が開催された。BE社の取り組みが紹介され、IBUKIの今の様子も生中継。

BE社は日本産ホップ生産の拡大と高度化を目指して活動している。集積団地化による、IBUKIとホップ新品種MURAKAMI SEVEN の生産規模拡大。手作業による栽培・収穫を見直し、ドイツのホップ栽培技術を取り入れ、日本に合う栽培技術の革新を行う。従来の集団での収穫作業が、農機具を操作する一人でできるようになり、機械化、省力化、作業効率化により高品質なホップの安定生産を実現。高齢化が進んだ農家が多く、ホップ生産体制を維持する人材獲得のため、新規就農者を育成するプラットフォームを構築する。

さらに、ホップを使った加工品や、スペイン原産のビールによく合う野菜「パドロン」の生産にも取り組んでいる。

「欧米ではホップがハーブの一種として認知されており、ドイツでは安眠が期待できるホップティーやタブレットなどの加工品もある。BE社でも『ホップシロップ』を発売。炭酸水で割ってドリンクにしても、ハチミツのようにパンケーキやアイスクリームにかけてもおいしい。

8年前から遠野パドロンというおつまみ野菜の生産にもチャレンジ。さらに昨年より『オランダ式環境制御型養液栽培ハウス』を導入して、長期間、遠野パドロンを安定出荷することができるようになった。露地栽培の時は7~9月までの短期間しか収穫できなかったが、栽培ハウスでは4月上旬から翌年の1月上旬まで収穫ができる環境が調ったので、年間の収穫量は増えていくと思う」(浅井さん)

ホップ畑の見学やビール試飲などの着地型観光体験と、飲食店やバイヤー向けの視察研究を行う「遠野ビアツーリズム」事業も展開。新たな観光コンテンツとして2015年から開始した「遠野ホップ収穫祭」は初年度の2500人から2019年は1万2千人が来場するまでに成長。さらに、日本のビアカルチャーを盛り上げたい、減少するホップ生産者の一助になりたいと、この5年で若い世代を中心に遠野に20名が移住した。ホップ農家として独立した人や、ビール産業を盛り上げるため新たな事業を立ち上げた人も。こうして「ビールの里構想」は着々と成果をもたらしている。

しかし、好循環の状況に水を差したのが、今年のコロナ禍。遠野に来られなくてもつながりを持ちたいと、BE社ではECサイトで遠野パドロン、ホップシロップの販売を開始、ZoomやYouTubeを使ったオンライン企画も実施している。

「TONO HOP BOX」もコロナ禍で生まれた商品。それぞれの会社の商品を詰めて、ストーリーと共に発売。第一弾は「IBUKI HOP IPA」(収穫祭ラベル)、「ONE AND ONLY LAGER」に、あんべのおかず味噌、燻製とうふ、干し大根などの遠野食材のおつまみをセットにしたもの。今年は中止となってしまった「遠野ホップ収穫祭」だが、2020年と入った収穫祭のリユースカップも同梱。

第一弾の初回セットは8月で完売してしまったが、今後も内容を変えて順次販売する。現在は第二弾が「遠野風の丘オンラインショップ」で販売中。遠野市ふるさと納税の返納品としても入手できる。

「ホップシロップ」「遠野パドロン」は、ECサイト「ポケットマルシェ」や、「食べチョク」で取り扱っている。ただし、遠野パドロンは長梅雨の影響で収穫量が下がったことや、全国から購入者が増えたことから、現在は売り切れ中。生産が確保でき次第、ECサイトで販売を再開するとのこと。

【AJの読み】「TONO HOP BOX」で遠野に思いを馳せる

「TONO HOP BOX」(発表会向けの特別版)が届いたので、さっそく開けてみた。ホップ畑のパッケージの中には、遠野ホップ収穫祭ラベルの「IBUKI HOP IPA」、「ONE AND ONLY LAGER」、「MURAKAMI SEVEN IPA」と「ホップシロップ」、おつまみの「遠野パドロン」「燻製とうふ」、VISION BOOK vol.1、#いつかホップ畑で会いましょう ポストカード、おつまみレシピが同梱されていた。

夏の期間限定ビール「IBUKI HOP IPA」は、遠野のズモナビールの商品。売上の一部は遠野ホップの生産活性化に使われている。ラガータイプの「ONE AND ONLY LAGER」は遠野にある2つのブルワリー、ズモナビールと遠野醸造が初めて一緒にレシピ開発したダブルネームのビール。クラフトビール会社が、コロナで影響を受けた飲食店や医療従事者に支援寄付を行うONE AND ONLY キャンペーン対象商品。どちらのビールも遠野産IBUKIが使われている。

MURAKAMI SEVENを使った「MURAKAMI SEVEN IPA」は、イチジクやミカンのような香りを感じる。苦味がやわらかく、一般的なIPAと比べて(6~8%)、少し低めのアルコール度数(5.5%)で飲みやすい。

遠野パドロンは唐辛子の一種で、若いときは緑でほろ甘く、時々ピリ辛だが、成長して赤くなると旨辛、激辛になる。緑のパドロンはそのまま食べることができて、油、熱との相性が良く、おすすめの食べ方は素揚げ。

揚げ油は少なめの量で、鍋に手をかざして少し温かい程度の170℃ほどでOK。衣はつけずに素揚げし、白っぽく皮が膨れてきたら油から上げる。時間は30~45秒ほど。

味はししとうにそっくりで、これまたししとうと同じく、時々ピリッと辛めの“アタリ”がある。素揚げに塩をぱらっと振っただけのシンプルな味わいは、ビールのお供にぴったり。

「燻製とうふ」はそのまま食べてもスモーキーで風味が良いが、オリーブオイル、ブラックペッパー、粉チーズをかけるとスパイシーになり、ビールにさらに合う。

IBUKI、MURAKAMI SEVENの遠野産ホップを使ったビールと遠野のおつまみで杯を傾けながら、遠野に思いを馳せる。……来年こそは遠野のホップ畑に行きたいな。

文/阿部純子

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