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テレワークの浸透は企業の東京集中を見直すきっかけになるか?

2020.09.27

「テレワーク」は企業の東京集中を見直す契機になるか?

政府が「地方創生」政策の柱として策定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の 5 カ年計画では、2020 年までに地方と 1 都 3 県の人口転出入が均衡化することを目標の一つとして定め、企業の移転による雇用創出をはじめとした地方創生を促してきた。

こうしたなか、政府は東京圏から地方への本社移転をより進めるため、2015 年度に導入した東京 23 区などから地方への企業移転を後押しする税優遇措置「地方拠点強化税制」について、19 年度末まで 2 年間延長することを決定していた。

15~19 年度までの 5 年間で 7500 件の企業の地方拠点強化を目標としており、企業の東京一極集中の是正に向けた取り組みを本格化させている。

そこで帝国データバンクは、保有する企業概要データベース「COSMOS2」(約147万社収録)のうち、2019年に都道府県間を跨ぐ本社所在地の移転が判明した企業(個人事業主、非営利法人等含む)について分析を行った。

転入超過社数 3年連続で「神奈川県」が最多 

2019年に本社移転を行った企業は、全国で2011社だった。18年から1社減少し、2年連続で減少したほか、2010年以降の10年間では過去2番目の低水準だった。

2019年に、転入企業数が転出企業数を上回る「転入超過」となったのは26府県に上った。なかでも「神奈川県」は、19年中の転入超過数が48社となり、全国で最も多かった。神奈川県が転入超過数で最多となるのは、17年以降3年連続。一方、転出企業数が転入企業数を上回る「転出超過」となったのは20都道府県。なかでも「大阪府」は、転出超過数が77社となり、1991年以降29年連続での転出超過だった。

税優遇措置「地方拠点強化税制」が創設された2015年と、最新の19年を比較すると、同期間を通じて転入超過を維持したのは、東京圏の神奈川県・埼玉県と長野県、奈良県の4県のみ。同様に、5年間を通じて転出超過となったのは、北海道、大阪府、島根県、広島県、香川県、長崎県の6道府県。総じて、西日本地域で転出超過傾向が続く地域が多い。

 東京圏(1都3県 [東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県])の動向

2019年に東京圏へ転入した企業は312社となり、2年連続で前年を上回った。一方、東京圏から転出した企業は246社に上り、4年ぶりに前年を下回った。転入企業が漸増傾向の一方、東京圏から転出する企業数が減少した。

この結果、東京圏は転入企業数が転出企業数を上回る「転入超過」が、18年比43社増の66社となった。東京圏の転入超過は、東日本大震災が発生した2011年(13社)から9年連続となった。

東京圏への転入元は40道府県。このうち「大阪府」(66社)が最も多く、「愛知県」(34社)、「福岡県」(25社)、「茨城県」(19社)と続く。東京圏からの転出先は35道府県。このうち「大阪府」(32社)が最も多く、「茨城県」(30社)、「静岡県」(20社)、「福岡県」(18社)と続く。

特に茨城県は、高速道路網の全線開通による東京圏へのアクセス性向上のほか、広い本社・工場用地の確保、AI(人工知能)など先端分野施設の移転で最大50億円を補助する「本社機能移転強化促進補助金」など支援政策も用意。19年も東京都から大手企業が本社・工場を移転するなど、東京圏からの移転候補先として近年急速に台頭している。

大阪圏(2府2県 [大阪府・京都府・兵庫県・奈良県])の動向

2019年に大阪圏へ本社を移転した企業は126社となり、3年連続で前年を上回り、1991年以降で最多。一方、大阪圏から本社を移転した企業は161社となり、2年ぶりに前年を上回った。

この結果、大阪圏では転出企業数が転入企業数を上回る「転出超過」が、18年比19社増の35社となった。大阪圏の転出超過は、比較可能な1991年以降29年連続となった。近年、大阪圏では圏外より転入する企業数が増加傾向にある。2025年の開催が決定した大阪・関西万博や、カジノを含むIR事業の誘致計画など大型プロジェクトが相次ぐなか、圏内経済の活性化に対する期待感も含まれているとみられる。

大阪圏への転入元は24都県。「東京都」(43社)が最も多く、「滋賀県」(20社)、「神奈川県」「和歌山県」「広島県」(6社)と続く。大阪圏からの転出先は27都県。「東京都」(86社)が最も多く、「滋賀県」「和歌山県」(12社)、「愛知県」(8社)が続く。大阪圏内から転出する企業は、東京圏のほか、大阪圏近郊に多く集中する傾向がある。

名古屋圏(東海3県 [愛知県・三重県・岐阜県])の動向

2019年に名古屋圏へ本社を移転した企業は58社となり、2年ぶりに前年を上回った。一方、名古屋圏から本社を移転した企業は62社に上り、2年連続で前年を上回ったほか、1991年以降では最多となった。この結果、名古屋圏は転出企業数が転入企業数を上回る「転出超過」が、18年比11社減の4社となった。また、リーマン・ショックが発生した翌年の09年以降、17年を除くすべての年で転出超過となった。

名古屋圏への転入元は18都府県。「東京都」(20社)が最も多く、「大阪府」(8社)、「滋賀県」「福岡県」(5社)と続く。名古屋圏からの転出先は14都県。「東京都」(32社)が最も多く、次いで「大阪府」(9社)、「神奈川県」(8社)が続く。

名古屋圏は、東京・大阪双方へのアクセス性に優れるほか、自動車製造など製造業が基幹産業であるため、大規模な本社移転が困難な企業は多い。他方、小売やサービスなどでは、人材獲得目的のほか、巨大な消費市場を持つ東京・大阪でのシェア獲得などを目的に移転を検討するケースが比較的多いことも、名古屋圏外への転出超過が続く要因の一つに挙げられる。

政府は地方への企業移転を後押ししてきたものの、東京圏への企業流入は止まらず

政府は、東京一極集中の是正及び地方経済活性化を実現するため、東京23区などから地方への企業移転を後押しする税優遇措置「地方拠点強化税制」を2015年度から導入。

以降、同制度の適用は19年度末まで延長され、地方での正規雇用を促す内容や、愛知県、大阪府など三大都市圏も移転型事業の対象地域に追加する要件緩和なども盛り込むなど、東京圏から本社移転を計画する企業を積極的に後押ししてきた。

こうした環境の下、近年はオフィス賃料などが高い東京圏から、物価も安く従業員の生活費を低く抑えられる北関東などへ本社を移転するケースも目立っていた。ただ、企業にとっては企業移転によるメリットに比べ、アベノミクス以降の景気回復による企業業績の向上、取引先や人材の採用、海外や地方の移動など企業経営における高い利便性が上回ったとみられ、結果的に企業の東京圏流入が続いた要因とみられる。

他方、大阪や名古屋といった主要都市圏では企業の転出超過傾向にあり、特にかつて企業の本社が多く立地した大阪圏では、1991年以降29年連続で転出超過となるなど、三大都市圏でも本社移転動向には明暗が分かれている。

新型コロナで急速に普及した「テレワーク」、企業の東京集中を見直す契機になるか

ただ、今後の企業の本社移転動向は三大都市圏、特に東京圏を中心に、災害対策などの面からも本社の周辺地域の移転や拠点の分散化などの動きが本格化する可能性がある。新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、本社機能や主要拠点の東京圏への集中が事業継続の面からも弊害が出ていた。

一方、在宅勤務やテレワーク、Web会議といった、出社せずとも業務が可能な制度の導入を進めるケースが企業規模を問わず進んでいる。これまで、地方創生の在り方の一つとしてテレワークが非常に有効であるとされてきたものの、あまり普及が進まなかった。

しかし、新型コロナによる対応をきっかけにテレワークへの認識には変化も見られており、その有効性が徐々に認められつつある。そのため、必ずしも都市部に本社機能を有する必要がない企業などでは、賃料の低い地方部への移転やサテライトオフィスの開設などの動きが増加する事も見込まれる。

構成/ino.

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