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ミスターセレッソからJクラブ社長へ!今でも熱い気持ちを持ち続ける森島寛晃社長の覚悟

2020.09.05

 新型コロナウイルス感染拡大に翻弄された2020年Jリーグだが、8月末までにJ1・14節が終了し、セレッソ大阪は勝ち点27で暫定2位につけている。かつてビジャレアルなどで指揮を執った名将・ロティーナ監督も「いい位置につけている」と手ごたえを口にしたが、最近の好調を誰よりも喜んでいるのが、「ミスターセレッソ」の異名を取った森島寛晃社長だろう。

2度のW杯出場、チームを牽引し続けたエースナンバー8

「僕が現役の時はJ1タイトルをあと一歩のところで逃してますから、何とか今の選手たちには優勝してもらいたい」と力を込めた。
 ご存じの通り、森島社長は前身のヤンマーディーゼル時代の91年から2008年まで桜のユニフォームを身にまとい、チームをけん引したエースアタッカーだった。神出鬼没なプレースタイルで敵を翻弄し、ゴールを量産。Jリーグ通算106得点という偉大な数字を残している。92年から彼が背負った8番は「エースナンバー」と位置付けられ、その後、香川真司(サラゴサ)、清武弘嗣、柿谷曜一朗へと引き継がれて現在に至っている。

 加えて言うと、森島社長は日本代表としても活躍。98年フランス・2002年日韓の両ワールドカップにも参戦している。2002年大会のチュニジア戦の2点目は今も多くの人々の脳裏に焼き付いているはず。地元・大阪も歓喜に湧きかえり、約2000人とも言われる人々が道頓堀に飛び込んだのも有名な話だ。そんなスーパースターが2008年の引退後、セレッソ初のアンバサダーに就任。広報・宣伝活動やサッカー教室などの業務に携わり始めたのがセカンドキャリアの第一歩だった。

「現役最後の1年半は首を痛めてほとんど試合に出られなかったので、クラブの動きを外から見て学ぶ機会に恵まれました。そして引退後、有難いことにアンバサダーという立場を与えてもらい、Jクラブの運営を1から勉強する機会に恵まれました。解説をやったり、イベントに出たりしながら、多くの出会いもあり、本当に充実していました。数年後には指導者ライセンスも取得し、そちらの方に進むことも考えたんですが、強化部スタッフ就任の話が舞い込み、2016年からはそちらの方に本格的に関わるようになりました」

 森島社長が強化に携わった2016~2018年には、スイス・バーゼルでプレーしていた柿谷の復帰、清武のセビージャからの復帰、そして山口蛍のヴィッセル神戸移籍と大がかりな戦力移動がいくつもあった。こうした動きに間近で関わったことは、1つの大きな経験になったという。強化スタッフとして徐々に自信がついてきた森島社長に舞い込んだのが、社長就任の打診だった。

経営者の経験ゼロからの社長就任

「2018年10月頃だったと思います。最初はメインスポンサーのヤンマーさんから『社長をやってくれないか』と言われて面食らいました。いきなり『やります』というものでもないし、経営者の経験もない。気持ちが整理できませんでした。そういう中で『周りがサポートするからできることをしっかりやってくれればいい』と言われて、最終的には覚悟を決めました。玉田稔前社長からも『しっかり頑張ってほしい』と声をかけられ、気持ちが引き締まりましたね」

 社長ともなれば、クラブ全体に目を配るのはもちろんのこと、経営状況を逐一チェックし、必要な策を講じていく必要がある。強化担当時代に戦力補強費の算段をしていた分、収支のチェックはある程度できたが、東海第一(現東海大翔洋)高校卒業後、サッカー選手の道をひた走ってきた彼には理解できない部分も少なくない。「書類が沢山回ってきて、ハンコを押すことも多いんですけど、中身を1つ1つ勉強し、確認しながら進める感じでした。多くの先輩社長から『収入と支出を見とけば大丈夫や』と言われたので、そこだけはしっかりやるようにしています」と森島社長は苦笑いする。

 広島・大河(おおこう)FC時代の恩師・浜本敏勝先生から「京セラの稲森和夫会長の著書『生き方』を読むように」とアドバイスされ、早速購入したり、高校時代に清水でしのぎを削った同期のコンサドーレ札幌・野々村芳和社長に何かあると相談したりと、彼なりの努力をして社長業への理解を深めていった。
「僕は頭のメモリーカードが小さくて…(苦笑)。大型のカードに入れ替えなきゃいけないんですけどね」と本人は笑うが、アジア戦略を強化し4~5年で大幅増収を達成した札幌の実例も踏まえながら、自チームでできることを模索した。セレッソはすでに行っているタイ・バンコクグラスとの提携やハナサカアカデミーでの少年少女育成を強化し、収入増につなげたいとも考えたという。

 こうして周りの話を聞きつつ、彼なりのアイディアを積極的に出した就任1年目の2019年は、営業収益(売上高)37億8600万円、営業費用42億6300万円。残念ながら4億8300万円の赤字を計上するに至った。とりわけチーム人件費が24億円超と大きく、それを圧縮しながら、営業拡大を図らなければならない。それが森島体制2年目の命題だった。
「恒常的にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)に出場できる常勝クラブを目指す中、経営面もしっかり黒字化しようということで中期計画を立てたんです。1つ目の柱がスポンサー収入増。特に大口スポンサーの金額アップを目指すことにしました。2つ目は入場料収入の拡大。2021年完成に向けて桜スタジアム(旧キンチョウスタジアム)が改修中で、2019年は器の大きいヤンマースタジアム長居で全ホームゲームを開催したこともあって、入場者数は過去2番目に多かったんです。それでもまだまだ増やせる余地があると考えて、『2020年は総観客動員数の40万人越え』という目標を設定。新シーズンをスタートさせました」

「なんかせなあかん!」

 ところが、2月16日にYBCルヴァンカップ初戦・松本山雅戦を本拠地で開催したのを最後にJが中断。コロナは拡大の一途を辿り、再開見通しが立たなくなり、4カ月間も試合ができない状況に見舞われた。
「2月26日がベガルタ仙台とのルヴァンカップ第2戦だったので、これから移動という時に中止が決まりました。あの時点ではまさか4カ月も試合がないなんて考えもしなかったけど、時間が経つにつれて危機感がどんどん募ってきました。中期計画の見直しはもちろんのこと、『なんかせなあかん』という気持ちが高まってきましたね。そこでクラブとして動き始めたんです」

 コロナ禍真っ只中の5月に立ち上げたのが、その名の通りの「なんかせなあかん!」プロジェクト。「長居をピンクに染めよう」「クラブ初ギフチィング企画」「THE ROLAND SHOW~セレッソには俺がいる」など複数の施策をスタートさせ、森島社長が前面に出て大々的にPRを行った。
「長居をピンクに染めよう」の企画では、スタンドに応援バナーを掲示する代わりに選手の試合当日着用ユニフォームや選手の寄せ書きサインフラッグなどがもらえて、好きな選手とズームで10分間オンライントークもできる「30万円コース」を10セット売り出したところ、見事に完売した。

(C)CEREZO OSAKA

「『セレッソ坊や』という高さ135㎝・幅58㎝・重さ5キロの特製飛び出し坊やを直々に購入者にお渡しに行ったんですが、みなさんものすごく喜んでおられましたね。
 30万コースの方は巨大な応援バナーを掲示する形だったんですが、座席Tシャツコース、パネルメッセージコースに参加していただいた方も沢山おられて、再開後初戦だった7月8日の清水エスパルス戦前には3日がかりでスタッフ総出で設置作業を行いました。そうやってみんなが一丸となって盛り上げようとしていることを、選手たちもしっかり受け止めてくれたと思います」

 森島社長は長年、多くの人々に支えられる側にいた。が、が引退後はサポートする側に回り、今では会社をリードする人間になっている。このように立場は大きく変わったが「強いセレッソ愛」は変わらない。そこは改めて強調しておきたい点だという。

「僕はピッチで駆け回っていた頃と同じように、チームを日本一、アジア王者にしたいと強く思っています。今年はコロナ禍で経営的にも厳しいですし、10億円近い赤字が出ることも覚悟していますけど、何とか乗り切っていけるように知恵を絞るしかない。自分も社長としてしっかり今後の方向性を示せるような人間にならないといけない。ようやくパソコンも使えるようになり、パワーポイントで書類作成もできるようになりましたけど、1人の経営者として日々勉強を続け、クラブの役に立てるように頑張っていきます」

 観客の5000人制限が9月末まで延長され、入場料収入のさらなるダメージが懸念されるが、チームの方が快進撃を続け、悲願のタイトルを取ることができれば、優勝賞金も入り、スポンサーからの支持も集まる。そんな好循環に持って行くべく、森島社長は今日も明日も奮闘を続けていく。

取材・文/元川悦子

長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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