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MURAKAMI SEVEN、IBUKI、ソラチエース、ビールメーカーが取り組む日本産ホップへのこだわり

2020.09.03

ソラチエースのホップ畑。

大手ビールメーカーが使っているホップや、世界のトレンドについてのレポートはこちら(その1)。次は、日本産ホップの今を紹介しよう。すでに世界的な評価を得ている「ソラチエース」や、昨年IPAが発売されて話題になった「MURAKAMI SEVEN」をはじめ、クラフト好きにはたまらない将来が楽しみなホップが、いくつも成長中である。

遠野のホップ畑でMURAKAMI SEVENが順調に

日本のホップ生産の現状は、かなりきびしい状況にある。生産量は1970年代の10分の1以下にまで減少。他の農作物と同様、高齢化と人手不足の問題を抱えている。

日本の大手ビールメーカーは原料の大半を輸入に頼る一方で、国産ホップの育種も連綿と続けてきた。最近その成果が製品化して実を結びつつある。ホップの育種と今後の計画についても、キリンビールとサッポロビールに話を聞いた。

キリンビールは昨年(2019年)、「MURAKAMI SEVEN IPA」を発売した。MURAKAMI SEVENとは、キリンでホップ博士と呼ばれていた農学博士、村上敦司さん(元キリンホールディングス株式会社R&D本部 酒類技術研究所 主幹研究員)が20年かけて育種したホップだ。イチジクのような、マスカットのような、みかんのような独特な香り。このMURAKAMI SEVENの栽培は、2017年から岩手県遠野市で始まっている。

遠野市は古くからのホップの名産地である。といってもご多分にもれず、生産農家、作付面積ともに減少の途にあった。キリンビールは2007年から遠野市、遠野ホップ農業協同組合と協力して、IBUKIというキリンが育種したホップの生産の後押ししてきた。

その成果として2002年、「毬花 一番搾り」が発売を見る。収穫したてのIBUKIを生の状態で凍結して工場に出荷し、生のまま熟成中に添加するという技法を用いた画期的なビールだった。まだIPA人気が到来していなかった日本で、このビールはホップ好きに熱烈歓迎された。その後「一番搾りとれたてホップ生ビール」という名になり、今では秋になるとホップ好きが楽しみ待つ風物詩的ビールである。

2018年には,キリンホールディングスと農林中央金庫が出資し、遠野市に農業法人BEER EXPERIENCE社を設立。その目的のひとつが日本産ホップの生産の高度化だ。現在、ホップ畑を新設し、来春から3年ほどかけて苗を植えていく。3年後の2023年には、IBUKI,MURAKAMI SEVENと合わせて10トンの収穫を目標にしている。

「今年は梅雨明けが遅くて出来が心配されましたが、8月の暑さで盛り返しました。MURAKAMI SEVENの収量は初めてトンの大台に乗る見込です」(BEER EXPERTENCE社の浅井隆平さん)

IBUKIのホップ畑から。季節限定で発売される「TONO IBUKI HOP IPA 遠野ホップ収穫祭ラベル」(ズモナビール)。

参考までにアメリカの2017年のホップ生産量は4万トン以上。実にささやかではあるが、これから毎年MURAKAMI SEVENが収穫される。この独特な香りは、新しいフレーバーを求める海外の醸造家からも注目されていると聞く。海外の醸造家の手による「MURAKAMI SEVEN IPA」の登場も楽しみにしたい。

アメリカで再発見され、逆輸入されたソラチエースのこれから

今、海外で一番有名な日本出身ホップはソラチエースだろう。1970年代からサッポロビールが北海道の空知郡上富良野町で育種してきたホップで、1984年に「ソラチエース」として品種登録された。

「他のホップとぜんぜん違う香りがつきます。レモンのようなとか、針葉樹のようなとか表現されますが。ゲラン酸という成分が非常に多いことが、こうした特性を生んでいるようです。

開発当時はフレーバーホップとして育成していたわけではありません。その頃はホップと言えば苦み成分という認識で、ビターホップとして育てていたのです。むしろフレーバーはジャマくらいに思われていたのです。そのためソラチエースは,当時の日本では日の目を見ることがありませんでした。その香りが認められてブレークした点はアメリカ産のカスケードとよく似ています」(サッポロビール北海道原料研究センター・鯉江さん)

1994年、ソラチエースはクラフトビール人気が黎明期にあったアメリカに渡った。その数年後、ソラチエースを使用した醸造家からは「完成度が1ランク上がる」と評判になり、アメリカのクラフトビール界に広まり、間もなくしてヨーロッパにも知られるようになった。

知らずにいたのは日本である。そのときドイツにビール留学していたサッポロビールの新井さん(前出)は、海外の醸造家から「ソラチエースはいいホップだね」と言われたが、その生みの親がサッポロビールであることを知らなかった。

帰国した新井さんは、さっそくソラチエースを使ったビールづくりに取りかかる。2016年に初めて製品化したが、全国発売にこぎつけるまでは5年がかかった。2010年代初め、IPA人気はごく一部のファンに限られていた。「とりわけ個性的な香りを持つソラチエースを使った商品の発売には慎重にならざるを得なかった」(新井さん)からだ。

2019年、ようやく通年商品の「サッポロSORACHI1984」(缶)が出来上がった。
原料の大半はアメリカ産のソラチエースである。日本では上富良野町のサッポロビール原料開発研究所でしか作られていなかったのである。

今年から、上富良野町の農家による契約栽培が始まった。北海道においても現在、契約栽培ホップ農家はわずか4戸しかない。そのうち1戸の畑で、ソラチエースが栽培されることになった。

サッポロビールではソラチエースのほか、フラノスペシャルというソラチエースを母として品種改良されたホップがある。この生ホップを使ったビール「サッポロクラシック富良野VINTAGE」も製品化されている。ただし、秋の収穫後の北海道でのみの発売で。東京では手に入らない。垂涎もののビールだ。

「フラノスペシャルのほうがソラチエースよりも収量が多いのです。現在は、北海道でのみ契約栽培をしています」(鯉江さん)

将来の目標についてたずねると、「いつか、国産ホップ100%のビールを造るのが夢です」と、新井さん、鯉江さんは口をそろえる。

このように日本ではビールメーカーが主体になって、ホップの新品種づくりに取り組んでいる。

今年6月、北海道上富良野町、栽培契約した畑にソラチエースの苗植えが行われた。

もっと小さい規模で見ると、ホップの栽培を手がけるクラフトビールの醸造家も増えている。

志賀高原ビールの玉村本店(長野本店)では2006年からホップ栽培を手がけ、畑と品種も増やしつつ、現在、カスケード、信州早生、センテニアル、ウィラメットという品種を栽培している。ちなみに信州早生はサッポロビールが育種したホップだ。

常陸野ネストビールの木内酒造の額田醸造所(茨城県)では、チヌーク、カスケード、ガレナ、センテニアルというホップを栽培している。

そのほかにベアードビール(静岡県)、ライディーンビールの八海醸造(新潟県)など、小規模ながら自家製ホップを育てる醸造所は増えている。いずれも収穫したてのホップを使った期間限定のフレッシュホップビールが造られ、多くはあっという間に売り切れる。

ホップがこれほどまでに研究され、注目された時代がかつてあっただろうか。しかしホップがなければビールは出来ないのであり、今日のビールも生まれなかった。ホップが多様化し、魅力が高まるということは、ビールの魅力がますます高まるということだ。一ビールファンとして、今後いっそうのホップの多様化と、日本産ホップの発展を願う。

取材・文/佐藤恵菜

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