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客のモラルも向上!?コロナ禍の飲食店に設置された客席を仕切るパーテーションの見えないチカラ

2020.08.28

 先日、先延ばしにできない買い物(要するに紙マスクだ)があり仕事を中断して久しぶりに街に出た。言い訳するわけではないが決して不要不急の外出ではない——。

コロナ禍の中、久しぶりの外食で居酒屋ランチ

 JR高田馬場駅周辺はまるでお正月の三が日かと見紛うほどの閑散ぶりで、当然ながら学生たちの姿などは皆無だ。早稲田通りを走る車がまばらで、とにかく街が静かである。語弊はあるが何だが北陸あたりの地方都市にいるような錯覚さえ覚える。正午を迎えてまだ薄曇りの空も、普段は活気に溢れた街を地味にさせていた。

 一時はどこにもなかったマスクがようやく出回るようになり、某ディスカウントストアで首尾よく購入できた。それにしても店内は感染症対策にぬかりなく、手指の消毒用スプレーはもちろん、レジ前は透明なビニールシートで遮られ、来店客にフレンドリーなはずの店内に僅かな緊張感を呼び込んでいる。

 こうした感染症対策を施された店舗に入ると、やはりあまり余計なことはせずに目的を果たしたらすぐに店を出ようという気分になる。店にとっては“ついで買い”をする客が減って売り上げに大きく響くかもしれない。

 現在進行形の感染症拡大によって、我々の生活が少なからぬ影響を受け、実際に店舗内の対策のように身の回りの環境も変容している。そして環境が変われば我々の気持ちにも変化が訪れるのだろう。買い物が終わった今、さっさと帰宅しなければならない気にもなってくる。

 余計なことは考えずに店を出て帰路に就いたのだが、大通りの交差点の雑居ビルの前に、黒板を持った紺の作務衣姿の男性が立っていた。抱えている黒板にはチョークで居酒屋ランチのメニューが書かれている。そのリストの中の「和牛焼肉丼」が目に留まった。

 もちろんまっすぐ帰宅するつもりだったのだが、久しぶりの外食となるこの機会にランチを頂いていこうと決めた。もちろんこの焼肉丼だ。

 店はビルの3階にある居酒屋で、ずいぶん前に夜に来たことがあったことを思い出す。ランチで来るのは初めてだ。

 和風居酒屋を地で行く趣ある店内だが、やはり感染症対策は念入りに講じられていてやや物々しい。入口にも店内にも消毒スプレーがあり、先客の男性が1人座っている壁に面したカウンター席は天井から吊るされたビニールシートで一席分ずつ区切られていた。このパーテーションによって、カウンターには普段の半数しか座れないようだ。

 カウンターに案内されて席に着き店員さんがおしぼりとグラス、そして水の入った大きなポットを持ってきてテーブルに置く。水は自分で注いで自由に飲むようだ。当初の思惑通りランチメニューの和牛焼肉丼とサラダを単品で注文する。

 ともあれビニールシートで仕切られた区画でランチを食べるというのはこれが初めての体験だ。これが今後は“ニューノーマル”ということになるのだろうか。仕方ないとは思うし決して不快ではないが、かといってどこかしらリラックスできない感じにもなる。

 注文したメニューがやって来た。焼肉丼はどんぶりも大きくボリューム満点だ。肉は細かくカットされたものが使われていて食べやすい。

※画像はイメージです(筆者撮影)。

 単品で頼んだサラダはまさに居酒屋ならではサラダで具材が多く、酒の肴になるメニューになっている。今は飲まないがランチ用のグラスビールもあるようだ。

※画像はイメージです(筆者撮影)。

パーテーションでモラルが向上する!?

 やはり外食は良いものだ。物理的に移動して自宅ではない場所で食事をすれば、気持ちがリセットできて文字通りひと息つくことができる。そのうえ料理が美味しければいうことはない。

 パーテーションなどのない店内でゆっくり食べたいものだが、もちろん今の状況では仕方がない。だがこうした人々を遮る環境は必ずしも悪いことばかりではなさそうだ。最新の研究では、人との間をパーテーションで区切ることで不正を働きにくくなりモラルが向上することが報告されている。

 米・カリフォルニア大学サンディエゴ校、カナダ・トロント大学、中国・杭州師範大学の合同研究チームが2020年7月に「PNAS」で発表した研究では、子どもたちが参加した実験を通じて教室の席にパーテーションを設置するとテストでのカンニングが減ることが報告されている。


 この研究は、物理環境が人間の行動に影響を与える可能性があるという建築における何世紀にもわたる仮定を確認しています。これは、多くの企業がワークスペースの設計に多くの時間とお金を費やしている理由の1つです。これら(空間デザイン)が私たちの日常生活の中でどれほど強力であるかを示す証拠もあります。たとえば、空港のロープラインが人々が並んで待つべき場所を示したり、“ソーシャルディスタンス”が人々にどこまで離れるべきかを示したりする場合です。

※「UC San Diego News Center」より引用


 350人の中国人の児童(5〜6歳)が参加した実験では、それぞれの児童に教室の中でパズル問題のペーパーテストが課された。児童の隣の机には、正解が記された問題用紙が置かれていて、それには児童たちも気づいていた。

 テストでは最後の問題が特に難しくなっていて、その問題になると2人に1人の児童が隣の机にある正解が記された問題用紙をのぞき見てカンニングをした。そして別の設定では、隣の机との間に透明なアクリル板かまたは金属のフレーム(ハンガーラック)で仕切った状態でテストを行ったのだが、どちらも隣の席の問題用紙を見ることができるにもかかわらず、カンニング率は20%から30%程度に減ったのである。

 さらに面白いことには、先生が何もない机の間に魔法で“想像上の仕切り”を置いたと児童に伝えることでもカンニング率は減少したのだ。

空間デザインが人の意識にもたらす影響力

 なかなか興味深い現象だが、人の手でパーテーションが設置されている状況では、カンニング行為は意識的に行われることになり、そのぶんだけ罪悪感を感じやすくなっていると言えるのかもしれない。そう考えれば、店内がパーテーションで仕切られている今の状況は、ひょっとすると来店客のモラルが向上することが期待できる可能性もある。

 ご存知のようにどんなお客が来るかわからない飲食店では人的トラブルも少なくない。お酒を提供する店ではなおのことだろう。そのような残念な事件がたまにニュースで報じられることもある。その意味では店内のデザインやレイアウトをデザインすることでこうした人的トラブルを少なくできるのならそれに越したことはない。

 コロナがきっかけで今までは顧みられなかったこうした側面にも注目が集まるとすれば、いい“気づき”にもなり得る。これまで気づかなったことが見えてくるとすれば今回のコロナ禍は何もかもが酷いことだらけではないかもしれない。

 ともあれ焼肉丼は食べ応えじゅうぶんで大満足だった。ほぼ満腹である。3階にある店内の窓から早稲田通りを見下ろしてみればまるでパラレルワールドなのかと錯覚するような、車も人もまばらな寂しい光景が広がっている。

※画像はイメージです(筆者撮影)。

 コロナ禍によって我々の認識や考え方の一部は大きな変更を余儀なくされているが、それはコロナそれ自体の影響というよりも、コロナによって変容した我々の生活環境からもたらされているのだろう。そしてその影響力は我々が考えているよりも強いのである。いずれにしてもコロナによって我々の社会と暮らし最終的にどのような形態になるのか、その全容が見えてくるのはもう少し先のことになりそうだ。

文/仲田しんじ

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