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メルシャン・長林道生社長が語る日本ワインの未来「カジュアルスパークリングとオーガニックワインで市場を牽引していきたい」

2020.08.27

メルシャンの長林道生社長へのインタビュー後編。前編ではワインづくりで心がけていること、ワイナリーがある地域とメルシャンの関係、「ワールド ベスト ヴィンヤード2020」選出について話を伺ったが、後編ではコロナ禍で難しい舵取りを迫られている2020年度の経営の概況を中心に、今後の経営課題や社長就任後から取り組んでいる組織風土改革について話を伺った。

若いワインファン獲得のための商品展開が奏功

--新型コロナウイルスにより多くの企業で経営が厳しくなっていますが、貴社は今のところ、2020年度はどのような見通しを立てておりますでしょうか?

 まず上半期のワイン市場を分析すると、新型コロナウイルスの影響で業務用市場が相当の痛手を受け、売上を落としました。一方で家庭用市場は、飲食店の営業自粛などにより家庭内の需要が拡大し売上が伸びたものの、業務用の落ち込みを完全にカバーするまでには至っていません。この間のワイン市場全体の売上は対前年比で、90%ほどに落ち込んでいます。

 しかし、同時期のメルシャンの売上は対前年比で、98%程度と健闘しました。業務用市場の落ち込みを家庭用市場で何とかカバーできています。

--なぜ売上の落ち込みを最小限に抑えることができているのでしょうか?

 ワインファンの間口を拡大するために、若い人たちに興味を持ってもらえる商品を展開してきたことが奏功したからだと考えています。缶チューハイをはじめとするRTDに流れていきがちな若い人に向け、アルコール度数がそれほど高くなく、一度開けたら飲み切りやすい容量の商品を揃え、ワインに入ってきてもらいやすい環境をつくってきました。下半期はこの流れを進化させることができれば、対前年比をクリアすることができると考えています。

 代表的な商品が、『おいしい酸化防止剤無添加ワイン シードル』です。2019年3月に発売したところ大変好調で、大ヒット中です。当社ではシードルのように飲みやすく、買いやすく、気軽に多様なシーンで楽しめるスパークリングワインを「カジュアルスパークリング」 と呼んでいますが、2020年1月から6月にかけてカジュアルスパークリングは、対前年比で169%と大きく伸びています。

成長しているオーガニックワイン市場をけん引する

--若いワインファンを拡大するには、『おいしい酸化防止剤無添加ワイン シードル』や2015年3月に発売した『ギュギュッと搾ったサングリア』のようなワイン初心者向けの商品がこれからも重要なカギを握ります。今後、初心者向けの商品はどのように展開していくお考えでしょうか?

 これから注力していきたい商品としては、この9月に発売される『オーガニックスパークリング N…』があります。

 ワイン市場を見ていると、健康、環境、社会への貢献、地球温暖化に対する意識が高い人は、オーガニックに賛同してくれます。それに、今の若い人たちは私たちの世代では考えられないほど環境問題に対する貢献意識が高いです。日本のオーガニックワイン市場はヨーロッパなどにくらべるとまだまだ小さいですが、それでも市場は輸入ワインを中心に成長しており、当社でも2020年1月から6月までのオーガニックワインの販売数量が前年比で約1.6倍になっているほどです。

 こうした背景から、メルシャンブランドとしてコストパフォーマンスの高いオーガニックワインを提供するために開発したのが『オーガニックスパークリング N…』です。NにはNeo-(新しい)、Natural(自然な)、Non chemical fertilizers(化学肥料未使用)という3つの意味があります。同じく9月に発売される『ビストロ オーガニック』とともに、オーガニックワインに今後も力を入れ、市場をけん引していきます。

今後力を入れていくオーガニックワイン。左2本が『ビストロ オーガニック』右2本が『オーガニックスパークリング N…』

--『オーガニックスパークリング N…』の想定価格はいくらほどでしょうか?

500ミリリットル入りで600円ほどを想定しています。

--かなり安いですね。驚きました。おいしい酸化防止剤無添加ワイン シードル』もリーズナブルですよね。

おかげさまで『おいしい酸化防止剤無添加ワイン シードル』はヒットしています。でも実はもう1つ、 若いワインファンを獲得するための間口拡大商品としてヒットしている商品があるんです

--それは何ですか?

 この6月に発売されたばかりの『メーカーズレシピ スパークリング ウィズ ホップ』です。発売から3週間で年間目標の半分を達成しました。ホップの香り、ぶどうのフルーティーな味わい、スッキリとした後味が特徴です。

--ワインにホップを活かす発想はユニークですね。

 アルコール度数が8%と、普通のワインよりも低めで、ビールに近い感覚で飲める、食事の邪魔をしない味わいに仕上がっています

 ビールに使われているホップの浸漬技術を活用したのですが、この商品はキリングループ内で人材・技術交流があるからこそ実現できました。多様性や違いを力にしていくことは、これからのものづくりで大事な視点になると思います。専門性も大事ですが、専門性が高ければ高いほど今までにない視点が入りにくいことがあるので、もしかしたらワインに先入観のない人の方が発想の点では新しさや豊かなアイデアが生まれるかもしれません。

若いワインファンを獲得し間口を広げるために展開している商品群。左から『ギュギュッと搾ったサングリア』『おいしい酸化防止剤無添加ワイン シードル』『同 グレープフルーツシードル』『メーカーズレシピ スパークリング ウィズ ホップ』

低価格化の流れを、業界をあげて変えていきたい

--新型コロナウイルスによって見えた課題などはありますか?

 メルシャンは本当にワインが好きな人に対してプレミアムなものをつくりつつありますが、日本のワイン市場はこの数年間、低価格シフトを進め、ビールのように価格競争になってしまった面があります。ワインの本当の良さを知っていただいて飲んでいただくというよりも、低価格でコストパフォーマンスがいいから飲んでいただいているという感じを受けます。この傾向がさらに進むと、RTDにシフトしてしまいます。RTDも技術が進歩して果汁感が増し、アルコール度数の調節も自由自在。お客様がRTDの方に流れてしまったことはワインメーカーとして反省すべき点だと思っています。

 今後はこの反省を踏まえ、ワインを「美味しい」と思って興味をもってくださった若い人たちが次のステップに移行してみたいと思えるものを用意することが重要になります。今までにない付加価値のあるものを飲んでみたいと思ってくれれば、中高年の人たちも含めてワインファンの裾野がさらに広がり、ワイン市場の活性化につながっていきます。

--しかし低価格化の流れを変えることは、貴社の力だけではどうにもなりません。

 低価格化についてはメルシャンも関わってしまったところがあり反省しています。業界全体で考え、ワインの原点に立ち返って低価格化の流れを変えていかなければなりません。

--ワインに興味を持った初心者の人がメルシャンのファンになってもらうためには、ブランドでは何を奨めていきたいですか?

 究極を言えば『シャトー・メルシャン』です。われわれの遺伝子を持ったものですし、椀子ワイナリーが「ワールド ベスト ヴィンヤード2020」で30位に選出されたこともありますので、今はメルシャンファンを拡大できる大きなチャンスだと思っています。

--今後、シャトー・メルシャンのブランド価値を上げていくために、マーケティング面を強化するなどのお考えはありますでしょうか?

 具体的なことはまだ申し上げられませんが、現在チャレンジを始めたところです。つくり手の想いなど、お客様に共感いただけるようなワインづくりのストーリーを発信すればブランド価値を高められますので、この考えに根ざしたマーケティングを展開できればと思っています。

『シャトー・メルシャン』ブランドのワイン(一部)

社員と一緒に真剣に、本気になって、現状を打破する

--長林社長はキリンビールのご出身ですが、キリンビールにいらしたとき、メルシャンにはどんな印象を持っていらっしゃいましたか?

 キリングループにはいろんな会社がありますが、メルシャンはワインが好きで、「メルシャン愛」が強い会社という印象を持っていました。メルシャンというブランドを強く愛していると感じました。それから、みんな非常に真面目。想いを持って一生懸命ワインと向き合っているように見えました。

 その一方で、良い意味での反骨精神というかガッツが少し足りないような印象もありました。この点を強化すれば、新しいことに対して怖がることなくチャレンジしていけるようになり、もっと強い会社になると思っていました。

--そのために社長就任後、何か取り組み始めたことはありますか?

 チャレンジ精神旺盛な組織風土を変えられるよう、社内コミュニケーションで社員の心に火をつけるような対話を心掛けてきました。現状の成果としては、うまくいけば、組織風土改革が加速するのではないかと考えています。外からはわかりづらいですが、組織風土が変わり物事の感じ方や社風が変わると、会社は業績も含めて大きく変わっていきます。社内コミュニケーションなどを通して、組織風土を変革することが私の一番のミッションです。

 社員はみんなワインが好きで、ワインに対して想いを持っていますから、火がつけば目の色を変えてチャレンジを続けてくれるはずです。そうなればメルシャンはより強い会社になりますし、実際そういう力を持っています。

--『メーカーズレシピ スパークリング ウィズ ホップ』のような商品はひょっとしたら、以前の組織風土では生まれなかったかもしれませんね。

 そうかもしれません。新型コロナの影響で新常態を余儀なくされ、これまでの常識が常識でなくなり、固定観念が間違った方向を導く時代です。誰にも正解が分からないからこそ、大胆に「やってやろうじゃないか!」というチャレンジ精神を発揮し、自らの体験でチャンスをつかむ会社にしていきたいですね。コロナ禍でも、ピンチをチャンスに変える、という気持ちを組織全体に浸透させていきたいと思います。

--最後に、2019年3月の社長就任から現在までを振り返ってどうであったかをお聞かせください。

 社員と一緒に真剣に、本気になって、現状を打破していくことに携われるのは嬉しいこと。大変やりがいがあります。もっと多くの人たちにメルシャンブランドことを知ってもらうことは私のミッションです。

長林道生(ながばやし みちお)

メルシャン代表取締役社長

1964年生まれ。1988年3月、上智大学外国語学部フランス語学科卒業。同年4月、キリンビール入社。インターフード社(ベトナム)代表取締役社長、キリンビールマーケティング 執行役員広域販売推進統括本部統括本部長、キリンビール 執行役員マーケティング本部広域販売推進統括本部統括本部長を経て2019年3月より現職。

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取材・文/大沢裕司
撮影/深山徳幸

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