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お酒に合う〝夜パン〟は予約で連日完売!人気レストランがパンの販売を始めた理由

2020.08.28

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

レストランがパン販売を始めた理由とは

東京・麻布十番にある「Courage(クラージュ)」は、イタリアン・フレンチをベースに和食などの要素も加えた“東京キュイジーヌ”を提供している、ラグジュアリーなレストラン。

新型コロナの影響でレストラン利用が激減したことから、同店が始めた持ち帰り用の食パン「クラージュブレッド」が、お酒に合う“夜パン”として連日予約分で完売するほどの人気を呼んでいる。

クラージュのオーナー・相澤ジーノさんは、「イル・テアトリーノ・ダ・サローネ」、「81」などの有名レストランや「下鴨茶寮」の顧問など、サービスマンとして30年以上のキャリアを持つ。培ってきた経験を活かして50歳を機に独立して始めた店が、2018年3月にオープンした「クラージュ」だ。

入口を飾るのは片岡鶴太郎さんの次男で画家の荻野綱久さんのアート

クラージュは、食に精通したフーディーや、遊び慣れた大人の集まる店として知られているが、実は大きなボリュームを占めるのが接待での利用。新型コロナの影響で、同店でも2月末からキャンセルが入り始め、4月16日の緊急事態宣言後、営業時間が20時までとなってからは、接待利用は皆無となった。

こうした事情から、メインのコース料理をやめアラカルトを始めることになり、アラカルトメニューと同時に開発を進めたのが、持ち帰り用のクラージュブレッドだった。

「コロナの影響で、さまざまなレストランがテイクアウトを始めましたが、レストランで作った料理を家に持ち帰って食べてもおいしさは保てません。おいしくないものを売るというのは僕の中ではNGでした。パンならテイクアウトでも品質が保てますが、本来パンは専門家が作るもの。こだわりのないものは出したくなかった。ところが偶然にも、祖父、両親がパン工房を営んでいるスタッフがいて、それならばクラージュならではのパンを作ろうと、工房の協力を得て3月ぐらいからパンの試作を始めたんです。

しかし、あくまでレストランが作るパン。何種類も作ってメジャーになろうとは思わなかったので、パンは1種類、けれど素材にはとことんこだわろうと、天然酵母、オーガニック素材とマストにして開発を始めました。

食パンはやはり朝食で食べるイメージですが、うちは隠れ家的な大人が集う夜の店なので、『ブラン・ド・ノワール』(黒ブドウのみで造られるシャンパン)に合うパンをイメージして作り上げました」(相澤さん)

「開発期間の1か月半は毎日パンとパスタを食べ続けたので、お腹が出ちゃいました」と笑う相澤さんだが、こうして生まれたクラージュブレッドは、天然酵母、オーストラリア産オーガニック小麦、国産黒豆、豆乳、和三盆を使ったずっしりと重みのある食パン。

料理と並行して厨房で作ることに加え、発酵から焼き上げ、寝かせまで3日かけているため、3日前までの予約制で1日限定20本。1本(2斤サイズ)1650円(税込)。予約電話番号は03-6809-5533、毎週火曜~土曜、12時~20時の店頭渡しとなる。

withコロナ時代のレストランはどうあるべきか

レストランのコンセプトは「非日常」。いつもとは違う時間を楽しんでもらうために、料理やマリアージュなど、お客様の顔を思い浮かべながら、何をしたら面白いか常に考えていると話す相澤さん。緊急事態宣言が出された後も営業を続けていたが、客足はばったりと途絶えた。

「4月は9割減という状況でしたが、閉めようとは一度も思いませんでした。今まで“予約の取れない店”に携わってきましたが、そういう店は知らないうちに予約が埋まり、気が付くと予約の取れない店になっていたというパターンが多い。それを経験してきたので、いつか突然予約がいっぱいになる日が来ると思って、楽観的としか言いようがないですが、やめるという選択は思い浮かばなかったんです。

しかし店がなくなればおしまいになってしまう。そこで始めたのがクラウドファンディング。批判的な意見もあったので迷いましたが、目の前の来月を生き残らなくちゃいけないと決断しました。町場の一軒でやっているレストランで、しかも自分の最後の人生を賭けて50歳から始めた店であり、何を言われようがとにかく生き残らなくてはと必死でしたね」(相澤さん)

大人の遊び場として様々な人たちが集う

緊急事態宣言中も休業はせず、感染症対策を行いながら昼の12時から20時までアイドルタイム無しでアラカルトを提供した。クラウドファンディングではランチ・ディナーで利用できる7種類のチケットを販売。5月末から1か月間実施し、331万円という多くの支援をえて終了した。

「売上よりも、だれも来ないことが一番辛い。厳しい状況でしたが、幸い、来客ゼロの日はなかったんです。クラウドファンディングを見て、お客様からたくさんメッセージをいただき、実際に来店される方もいて、やっていてよかったと励みになりました。あの時の状況下では相当なリスクにもかかわらず、来ていただけたのはありがたかったですね。

4~5月は、他人は誘えないと一人で来店する方が多く『久しぶりに人が作ったものを食べた』と、ランチでもお酒も飲んでいく方が多かったです。お店で食べる、お店で飲むということをみなさんが欲していたんだなと。それがレストランの存在意義なのではないかと再認識しました。こういう方が一人でもいる限り、絶対に続けていきたいと決意を新たにしました」(相澤さん)

クラージュパンをきっかけに店を知り、リピーター獲得にもつながった。接待は依然として厳しいものの、相澤さんに共感する人が人を呼び、売上は8割ほどまで戻ってきているとのこと。

8月からは新シェフの古屋聖良さんを迎えた。古屋さんは2016年にサンペレグリノ ヤングシェフ世界大会の日本代表に選抜され、その後The World's 50 Best Restaurantsにランクインしているオーストラリアの「Brae」で修業を積んだ若手のホープだ。

「食は好みなので十人十色。でも『おいしい』と言っていただけると、食のセンスの共通点ができる。そこからだんだん信頼関係が育まれ、おまかせでいいと言われるようになります。その繰り返しを何十年もやってきたので、シェフが変わるときは一番神経を使いますね。

僕は、レストランはお客様との遊びの場だと思っています。だから僕のうちに遊びに来てくださいというフレンドリーな感覚でお迎えしますが、料理は一皿一皿本気なものを出す。そこがうちのオリジナルです。古屋シェフはクラージュのスタイルを実現してくれる人で期待しています。とはいえ、うちは我流のレストランなので、スタッフには作法よりも、とにかく楽しく笑顔でと伝えています。シェフも積極的にお客様の前に出てもらい、お客様の生の声を聞くようにしています」(相澤さん)

withコロナの中で、飲食店は厳しい状況に立たされているが、相澤さんが構想中というのがシェフマッチング。

「パスタメニューも著名なシェフに協力してもらい、うちのメニューにはうちと関係ないシェフの料理がある(笑)。そこからヒントに考えたアイディアが、シェフマッチング。僕がサービスマンだからできることかもしれないけれど、今回の事態で店を閉めたり、休業しているフレンチ、イタリアン、和食などのオーナーシェフに、場をお貸しして腕を振るってもらうというものです。料理人は技術者であり、仕事を休むと腕が落ちるので、週に1回でもうちでなにか作っていただければと」(相澤さん)

現在はランチ、ディナーの対応でアイドルタイムは15~17時半。22時半ラストオーダー。コースは前日までに要予約。夕食のアラカルトや、ドリンクだけなら予約なしでも可能だが、席の空きがあるか確認を。テラス席、個室もあり。

【AJの読み】ハートのある店が最後には生き残る

クラージュパンは1本(2斤サイズ)で1㎏を超える重量。流行りのふわふわとした食パンではなく、かじると歯がパンにずしんと沈んでいくような、もっちりとした食感で食べ応えがある。黒豆も甘すぎず食感のアクセントになっており、パン自体も甘くないのでお酒を飲みながらおつまみにできる、まさに夜パン。相澤さんに私が日本酒好きだと話すと、すかさず日本酒のボトルを持ってきてくれた。

30年間ドン・ペリニヨンの醸造責任者だったリシャール・ジョフロワは、現在、富山で日本酒を作っており、それが5つの酵母を使った「IWA5」。山田錦、雄町、五百万石の酒米を使い、今は1893年の創業の桝田酒造店の蔵で作っている。来年に自身の酒蔵が完成する予定で、設計は隈研吾氏、ボトルデザインはマーク・ニューソン氏、ラベルは書道家の木下真理子氏とアートディレクターの中島英樹氏という錚々たるメンバー。シャンパン造りの技術を生かして複数の日本酒のブレンドした、いわば「ジョフロワ作品」ともいえる新感覚の日本酒で、取り扱っている店はとても少ない。

香りは華やかだが甘すぎず、しっかりとしたコクを感じる。パンと一緒にお酒を飲むと、パン単体では感じなかった甘みが口の中に広がる。パンをつまみに日本酒を飲んだのは初めてだが、パンもお酒も進んでしまう驚きのマリアージュ。

相澤さんとは初対面とは思えないほど話が弾んだ。いつもこんな感じで接客をしているのだろうなと察せられ、人を惹きつけるオーナーの魅力こそがクラージュが愛される理由なのだと感じた。レストランでの接待中に電話が来て大きな商談が成功した、来店前にケンカして険悪なムードだった夫婦が料理を食べて笑顔を取り戻したなど、クラージュの幸せエピソードは尽きない。

また、相澤さん自身がバブル時代に青春を謳歌した世代で、ラグジュアリーなレストランにもかかわらず、週1回DJパフォーマンスもある。上場会社の社長が接待で食事している中、ボビー・ブラウンが流れたりするそうだが、客層もバブルを経験してきた世代が多く、当時の武勇伝を語りだすなど、音楽もクラージュを楽しむ要素となっている。

「初めて店に来るときは少し緊張していて欲しい。迎える僕らも緊張していますが、料理を食べていただいてお話していく中で距離が縮まっていきます。一度でもいらしてくれたら、次からは堂々と常連面してデートの相手や上司を連れてきていただいて結構です(笑)。コロナ禍でどの飲食店も厳しい状況にありますが、ハートのある店が最後は生き残ってほしい。そう願っています」(相澤さん)

文/阿部純子

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