
巣ごもり生活が続く中、夜の寝つきがよくない、朝の目覚めがよくないなど、睡眠の満足度が落ちていないだろうか?そんなときに、試してみたいことがある。
今回は、三井農林による紅茶の香りの快眠効果の実験結果や、睡眠専門医の白濱龍太郎先生による解説、およびその他の快眠術について、コロナ自粛中のビジネスパーソン向けに紹介する。
【取材協力】
白濱龍太郎先生
睡眠、呼吸器内科、在宅医療の専門クリニック「RESM新横浜」院長。筑波大学医学群医学類卒業。 東京医科歯科大学大学院統合呼吸器病学終了。東京共済病院、東京医科歯科大学附属病院を 経て、2013年に「RESM新横浜」を開設
紅茶の香りで睡眠の質が向上
三井農林株式会社が行った実験では、紅茶の香りによって、睡眠の質の向上が期待できることがわかった。
被験者は、健常な日本人女性で、週4日以上、日中の時間帯に1日3.5時間以上働いている女性20名(平均年齢40歳)。就寝前1時間、就寝後2時間の計3時間に紅茶の香りを揮散させるアロマ条件または水を揮散させるプラセボ条件にて、それぞれ1週間ずつ睡眠時の身体活動量の解析を行った。
結果、入眠潜時(眠りにつくまでの時間)は水を揮散させるプラセボ条件では29分だったが、紅茶の香りを揮散させるアロマ条件では13分となった。離床潜時(起きてから寝床を離れるまでの時間)はプラセボ条件では13分だったが、アロマ条件では7分となった。睡眠効率、つまりベッドで過ごした時間と眠っている時間の比率はプラセボ条件で70%のところ、アロマ条件では76.4%に向上した。
この実験結果を受け、睡眠専門医の白濱龍太郎先生は、次のようにコメントを寄せている。
「夏は、概日リズムの変化により睡眠時間が短くなるだけではなく、寝苦しさなどの影響で睡眠質不足にもなりやすいと考えられます。さらに、今年は、新型コロナウイルスの大流行により感染を避けるために『stay home』することで、運動量の低下、相対的なスマホ、テレビ等視聴のための ブルーライト照射量の増加による睡眠関連ホルモンメラトニンの分泌不足、先行きの不安感等による ストレスの影響で不眠を訴える方が増えています。今回の実験は、あくまで香りの実験なので、紅茶の飲用については今後さらなる研究が必要になるとは思いますが、安易に睡眠薬等に頼る前に、寝る前に温かい紅茶を飲んで、リラックスした状態で眠りにつくと良いでしょう」
紅茶の香りの睡眠への上手な取り入れ方
紅茶の香りは睡眠に良い影響をもたらすことがわかった。そこで、うまく取り入れる方法を白濱先生に伺った。
―紅茶の香りは、寝るどのくらい前にかぐといいのでしょうか?
「香りに関する自律神経の受ける影響に関しては、ラベンダーの香りをかいだ10分後に有意に血圧が低下したとの報告もあり、比較的早期に現れると考えられます。就寝前に、徐々に副交感神経優位に切り替えていくためには、1時間前後から、遅くとも10分~15分前がよいとは考えられます」
巣ごもり生活でなんとなく睡眠の質が落ちていると感じているなら、寝る1時間ほど前から紅茶の香りをかいでみるというのも良さそうだ。
睡眠専門医が教える!巣ごもり生活で実践できるその他の快眠術
紅茶の香りの他にも、巣ごもり生活で実践できる快眠術がある。白濱先生おすすめの方法を3つ教えてもらった。
1.朝食時に味噌汁を飲む
「大豆製品である味噌には『トリプトファン』というアミノ酸が多く含まれています。トリプトファンは体内に入ると、精神を安定させる働きがある『セロトニン』というホルモンに変わ ります。人の体内では日中、セロトニンが分泌され、夜になると酵素の働きを受けて、自然な睡眠を促すホルモン『メラトニン』に変わります。そのため、朝に味噌汁を飲むことがおすすめです」
2.蒸しタオルを目の周辺に当てる
「スマホやPCの使い過ぎで目が疲れることで、睡眠の妨げになっている場合は、蒸しタオルがおすすめです。濡れたタオルをよく絞り、500Wの電子レンジで1分温めた上で、目の周辺に当てます。温まることによって血行が良くなり、筋肉の緊張がほぐれ、副交感神経が優位に働きます」
3.起床時はアラームよりも、ボーカル入りの曲を流す
「起床時の目覚ましは、アラームを利用している方が多いかもしれませんが、ボーカル入りの曲のほうがおすすめです。ボーカル入りの曲は脳が勝手に歌詞を認識するため、徐々に目覚め、すっきりと起きられる可能性が高まります」
紅茶の香り、味噌汁、蒸しタオル、ボーカル曲と、どれも簡単にできることだ。一度トライしてみて、自分の睡眠が変わるか確かめてみるのも良いかもしれない。
取材・文/石原亜香利
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