
コロナで一気に浸透したテレワーク。そこにはさまざまな課題が浮き彫りになったが、大きなものの一つに、チームのコミュニケーションの質の低下がある。
その解決のヒントとしてGoogleが提唱している内容を紹介する。
テレワークにより生じた心理的影響
リクルートマネジメントソリューションズが3月26日から28日にかけて会社勤務の正社員2,658名に対して実施した「テレワーク緊急実態調査」では、管理する側、される側、双方の不安や悩みなどの課題が浮き彫りになった。
そのうち、テレワーク環境下の「心理的変化」の問いについては、「変わらない」と考える人が最も多く、6割前後いたものの、増える(高まる)人が、減る(低下する)人を上回る項目として、「さびしさや疎外感を感じる気持ち」「仕事のプロセスや成果が適正に評価されないのではという不安」「会社に対する好意的・肯定的な感情(感謝、貢献意欲、誇りなど)」があった。
やはり対面からオンラインへとコミュニケーション形態が変化したことにより、「孤立感」を中心とした心理的不安が増えているようだ。
「つながりの質」の低下という課題
Googleが公表している「これからの働き方」の資料では、テレワーク等により「分散型ワークスタイル」になっている今、課題として「つながり質」の低下が取り上げられている。
Googleが実施した社内調査において「分散型ワークスタイル」を展開してきたチームと、同じ拠点で仕事を進める「集合型ワークスタイル」のチームとの間で、個人の仕事のパフォーマンスやチーム全体の生産性、Well Being(メンバーの身体やメンタルの健康)を計測したところ、それらに差異はなかった。
しかし、ミーティングの際、チームメンバーと直接会う場合とビデオ会議上でバーチャルに会う場合で、臨場感に大きな違いを感じないと答えている従業員は55%いた。一方、ビデオ会議に参加したときに他のメンバーとの一体感を感じている従業員は37%という結果も出ている。この結果に表れているのが「つながりの質」の低下であり、分散型ワークスタイルの課題として据えられている。
つながりの質を向上させるための3つのP
このつながりの質の低下という課題を受け、Googleは「つながりの質を向上させるための3つのP」を提案している。
つながりの質を保ったまま、より良い分散型ワークスタイルを実現するための対策だ。
「つながりの質を向上させるための3つのP」
●Place
場所の最適化
・プライバシーを確保する
・光を確保し高さのあるウェブカメラで最適なアイコンタクトをとる
テクノロジーの合理化
・チームメイトと共に使用するプラットフォームを決定し、全員がその使用方法を把握する
タイムゾーンの負担を共有
・異なる時間や場所で働くことで生まれる負担を軽減するため、ローテーションスケジュールを試す
・コアの勤務時間以外に働いている人がいることを認識する
●People
人として知る
・自分のことを共有する
・他の人のルーティン、場所、趣味、重要な人などについて聞く
「存在」する (be present)
・離脱したり、気を散らさない
・アイコンタクトをとり、相手に注意を払っているシグナルを与える。スマホやパソコンなどをいじらない
違いを認め、包括的な管理を
・柔軟な働き方を認め、家庭や健康などの理由によって生じる働き方の違いを尊重する
・時間の管理を個々人に任せ、お互いに干渉しない
チームアイデンティティ
・たとえ近くにいなくても、チームとしての親近感を保つ
●Practices
頻繁で、オープンなコミュニケーション
・ミーティングを頻繁に行い、信頼関係を構築する
チームのゴールや規範の明確化
・チーム連携のため、明確なゴールを設定する
・規範を明確にし、混乱を生まない
あえて連絡し、つながりを保つ
・積極的にチャットなどを活用してコミュニケーションをとる
一体感を意識したミーティング
・ミーティングで発言できていない参加者にあえて意見を聞き、誰かが会話に参加しようとしていたら、会話を止めてコメントするように促す
つながりの質を向上させるためには、「ウェブカメラによるアイコンタクト」、「自分のことの共有や他の人のルーティン、場所、趣味、重要な人などについて聞く」、「ミーティングで発言できていない参加者にあえて意見を聞く」といった一歩歩み寄る工夫が必要になるようだ。
「働き方のこれから」を実現するためのアクション
新しい生活様式は、すでに始まっている。しかし、まだまだ第二波の懸念が続いており、新生活を探っている最中ではないだろうか。
そのような中、Googleは「働き方のこれから」を実現するためのアクションも提示している。それは大きく分けて次の3つとなる。
1. コミュニケーションの活性化
2. 業務プロセスの変革
3. 透明性の高い情報共有
1. コミュニケーションの活性化については、すでに多くの企業が取り入れている。テレワークによるコミュニケーションの障壁を低減し、より活性化を促すためにツールやプラットフォームなどのテクノロジーを活用し、スムーズなコミュニケーションを実現することが求められる。
2. 業務プロセスの変革についても、テクノロジーの導入が欠かせない。資料作成をクラウドで共同編集、資料のペーパーレス化、承認プロセスのオンライン化など、従来の方法からの変革が求められる。
3. 透明性の高い情報共有については、まだまだ課題が残る。社員が持つ情報やナレッジ、チームメンバーの業務ステータスをオンライン上で共有するというものだ。社員の誰もが情報を検索し利用したり、お互いの状況を把握できるようにしたりすることで、つながりが強まり、より質の高いコラボレーションが可能になるという。また、社員間のコミュニケーションの機会創出にもつながり、業務の効率化が期待できる。
具体的には、カレンダーや業務スケジュールの共有、業務報告などのオンライン化、可能な限りコンテンツを共有、出退勤記録のオンライン化といったことだ。どこまで透明性を高められるかは、今後の課題といえそうだ。
【参照】
リクルートマネジメントソリューションズ「テレワーク緊急実態調査」
Google「働き方のこれからをつくろう。」
取材・文/石原亜香利