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「いつかは、電気、ガス、水道、アルビレックスに!」アルビレックス新潟・是永大輔社長に聞くWithコロナ時代のクラブ経営論

2020.08.19

 (C)ALBIREX NIIGATA

 Jリーグが再開されて約2カ月。6月27日から前代未聞の夏場の連戦に突入しているJ2は8月15日までに12節が終了し、V・ファーレン長崎が首位を走っている。2018年のJ2降格から3シーズン目を戦っているアルビレックス新潟は4勝6分2敗の暫定8位。今季はJ1昇格プレーオフがなくなり、上位2位以内しかJ1に上がれないため、ここからギアを上げていかないといけない。

「今季から指揮を執っているアルベルト監督はFCバルセロナのアカデミーダイレクターの経験もある人物。目指すスタイルは明快ですし、ユース上がりの本間至恩をはじめとした有望な若手選手も沢山います。けが人が回復してくればここからよくなるでしょう」と前向きに語るのは是永大輔社長。2019年にJクラブのトップになり、2年目を迎えた43歳の若き経営者だ。

持ち前のアグレッシブさでバルセロナ、マンU、リバプールの携帯サイトも運営

 千葉市出身の是永氏は77年生まれ。学生時代からサッカーに勤しみ、長身を生かしてGKとして活躍した。日本大学時代は芸術学部に在籍。小劇場での舞台活動にも取り組んだ。是永氏は今もメディア露出やSNSでの発信に積極的に取り組んでいるが、人前に出ることを厭わないのも当時の経験によるところが大なのかもしれない。

 ただ、進路は芸術系ではなく、サッカー業界を選択した。大学卒業年の2002年に日韓ワールドカップがあり、「サッカーに関わりたい」とIT企業にアルバイトで入社。同社が携帯電話サッカーサイトの運営を開始すると、1年ほどで編集長に就任。取材活動に乗り出す。筆者は当時から是永氏を知っているのだが、高原直泰(沖縄SV)がハンブルガーSVに移籍した2003年1月、クラブ練習場に大きなスーツケースを抱えて現れ、全く面識のない我々に声をかけてきた若かりし彼に驚かされた記憶がある。
 その大胆な行動パターンに象徴されるように、持ち前のアグレッシブさで多彩なネットワークを構築し、ビジネスに結びつける能力が彼にはあった。同社では2007年まで働いたが、FCバルセロナやマンチェスター・ユナイテッド、リバプールの日本語版公式携帯サイトの運営権を入手し、実際に立ち上げるという大きな仕事も手掛けた。

「バルサの時はインタビュー時に『日本で携帯サイトを作りませんか』とアプローチしたら話が具体化しましたし、マンUやリバプールの時はFAXで提案書を送ったら話が進みました。海外クラブとの事業の他にも、サッカーCDのプロデュースや雑誌作り、物販などさまざまな経験をさせていただきました。全てが大きな財産になっています」と是永氏は言う。

30歳でサッカークラブの社長へ

 しかしながら、テクノロジーの進化は早い。29歳だった2007年にiPhoneが発売されたのを見て、彼は「携帯サイトの未来は厳しい」と痛感。編集長として次の一手を考えていた時に「アルビレックス新潟シンガポール(略称=アルビS)の社長を探している」という話を耳にする。
「携帯サイトに広告を出す案件でジャパンサッカーカレッジの関係者と会っていた時、その話を聞きました。実は20歳の時に『10年後の自分』というのを100個くらい書き出したんですが、その中に『サッカークラブの社長』というのもあった。30歳でサッカークラブの社長になっている人は世界でもその頃にはいなかったので、チャレンジしてみたかったんです」

 トントン拍子に話が進み、2007年中には会社を辞めてシンガポールへ赴いた。当時のアルビSは親会社・新潟からの運営費に依存傾向が強かったが、独立採算へ舵を切るべく、コスト削減を筆頭にあらゆる改革に着手した。そのうえで営業活動に奔走し、初年度から黒字化に成功。シンガポール国内での飲食業やカジノ業、スペイン、マレーシア、カンボジア、タイ、キャンマー、香港などでスポーツビジネスも展開した。クラブ売上高はグングン伸び、2019年段階の予算規模では就任前の40倍に当たる約35億円にまで上昇。同時にクラブ強化も着実に進め、2016~2018年にかけて3シーズン連続ですべての国内タイトルを獲得するに至った。さらに、社会貢献モデルも推し進め、シンガポール政府から個人的な表彰もいくつか受けるなど、彼は異国で大きな成果を残したのだ。

「最初から独立採算制にこだわったのは、横浜フリューゲルス消滅の記憶があったからです。僕は当時、学生でしたが、クラブがなくなることは応援する人々も含めて関わる人々の人生を奪ってしまうことになる。本当に悲しいことだと感じました。最悪の事態を回避するためにも、誰かに大きく頼ることなく自分の足で立って稼げるクラブにしないといけない。
 僕がこれまで社長業を経験して必要だと思った能力は、①観察力、②想像力、③実行力の3つ。情勢を見極め、未来像を描き、前進する。その繰り返しなんです。カンボジアなどですぐに撤退したビジネスもありましたけど、ダメだと思ったらすぐに手を引くことも大事。失敗に明確な理由を見出せたということだし、同じ失敗を繰り返さないことにつながる。次にも進みやすいですね」

 (C)ALBIREX NIIGATA

チームを存続させるのが自分の使命

 シンガポールで足掛け10年過ごした2018年、是永氏は親会社である新潟から取締役就任の打診を受け、翌2019年から社長に就任した。1年目だった昨季はJリーグからの配分金減少の影響などで22億4700万円と売上高が前年比で2億弱減ったものの、有料観客数は増加。体質改善を図り、今季に勝負を賭けようとしていた。

 その矢先に新型コロナウイルスの感染が拡大し、2月23日の開幕節を消化しただけで、4カ月もの長期中断期間に入ってしまった。試合がないというのは、Jクラブとっては「売る商品がない」ということ。その苦境を是永氏は包み隠すことなく明らかにし、地元メディアにも「このまま行けば、秋にはキャッシュフローがなくなる」と発言。そのうえで、地元一丸となってクラブを支えてほしいと改めてお願いした。

「『人事』と『メディア』がサッカークラブの仕事だと僕は考えているんです。新潟には地元テレビ局と地元紙がありますが、その力を借りるのは本当に大切なこと。『みなさんの力がチームを勝たせるんです』と常日頃から話して、味方になってもらうように心掛けています。SNSに関しても、サポーターと一緒に戦っていくうえで重要なツール。そもそも僕はサポーターと同じ気持ちですし、彼らの代表として社長をやらせてもらっているだけ。そう考えて発信しています。

 正直、コロナ再拡大で観客数の5000人制限が長く続き、経営的に厳しいのは確かです。2019年は平均観客数1万4497人とJ2トップだった分、入場料収入の減少幅も大きくなります。他クラブと比較して入場料収入が重要な収入源である我々にとって、今季の収支がどうなるのか見通しが立たないところもありますけど、どんなことをしてもチームを存続させるのが自分の使命。資金繰りのメドを立てながら、営業強化を図るなど、できる限りのことをやっていくつもりです」と是永氏は改めて気持ちを奮い立たせる。

 ビッグスワンが完成し、2002年日韓ワールドカップが開催され、J1に初昇格した。右肩上がりの軌跡を辿った2003~2005年頃、新潟の試合はつねに4万人の大観衆で埋まっていた。「当時はよかった」と懐かしそうに言う人も少なくない。だが、是永氏は「当時とは違う世界線で4万人のアルビを実現させなければいけない」と強調する。2019年にホームタウンを拡大し、新たに28市町村を加えて全県下30市町村に支えられる形になったことも今後の追い風になりそうだ。コロナ禍の今は難しいが、再びスタジアムが賑わいを取り戻すための基盤作りをここでやっておかなければならないのだ。

「『電気・ガス・水道・アルビレックス』とよく言っているんですが、新潟にとってアルビをインフラと同じくらい重要にしなければなりません。アルビの存在で勇気が出る人をもっと増やしたいんです。実際、県内の人に調査したところ、アルビを興味対象のトップ2に挙げた人が48%もいた。J1最多観客数の浦和でも15パーセントですから、どれだけ県民のみなさんから関心を持たれているか分かるでしょう。

 そういう人々に支えられているクラブですから、4万人のスタジアム再現は可能。そのためにも経営基盤を強化し、J1昇格を果たさないといけないと強く思います。J1に上がれば配分金の額も増えます。注目度も高まるわけですから、売上も上がる。J1は目的ではなく、手段なんです。プラスのサイクルになるようにできることを全てやって、100年存続するクラブになれるように頑張ります」
 明るく気さくでオープンな人柄は20代の頃と全く変わらない。Jクラブの社長らしからぬキャラクターとフットワークの軽さを生かしながら、是永氏はこれからも地元に愛されるクラブ作りを精力的に進めていく。

取材・文/元川悦子

長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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