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【部長のヨワネ】「部下に覇気や執念が足りないと思いつつ自分も空回り…」アートネイチャー・藤岡毅純さん

2020.08.19

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「若手社員のホンネ」で現場の社員の本音を、「リーダーはつらいよ」で現場のリーダーである課長たちの奮闘ぶりを紹介してきた。2本の連載の続きとして彼らを統括する部長の話も、ぜひ聞きたい。そこで新シリーズ「部長のヨワネ」だ。

部長ともなると経営の中枢に参画するポストで発言も重みを増す。取材に応じてくれる企業は狭まるが、部長も伝えたいことはある。

「部長のヨワネ」シリーズ第一回は株式会社アートネイチャー 執行役員 外販商品営業部長 藤岡毅純さん(59)。アートネイチャーはカツラ(ウィッグ)で知られているが、藤岡部長が率いる外販商品部の主力商品は増毛用ヘアパウダーと、主に白髪を染めるヘアカラートリートメント。藤岡部長はなんと自ら増毛用パウダーのテレビCMに出演している。頭にパウダーをかけるテレビCMの笑顔は芸人と見間違えるほどだが、実は藤岡部長ご本人だ。そんな藤岡さんは大手銀行の支店長を務め5年前、54歳でこの会社に入社した。

問題開示で話し合いのテーマが明確に

銀行出身の藤岡毅純は数字に強い。部長に着任すると適正在庫、仕入れ原価、販売価格等の数字を精査。在庫過多が大きな問題の一つとして浮かび上がる。

在庫を圧縮するためには、商品を売らなくてはならない。そのためには知名度を高める必要がある。広告と広報に力添えをしてもらう一方、藤岡部長と担当者は全国の問屋やドラッグストアを回った。価格の交渉をしたり、目に付くようなポップを店舗に置かせてもらったり、販促物を制作したり。

そんな努力が結果につながり、最終的な収支はプラスになったが、かかった広告費を考慮すると、満足のいくものではなかった。

「これまでは、大きなドラッグストアの棚に置いてもらう販売方法が主流だったが…」

みんなで話し合い、意見を出し合いながら数字を作っていく。それは銀行時代からの藤岡のやり方だ。外販営業部長の部下は13名。以前紹介した吉田和樹課長もその中の一人だ。部内の問題があることは部下も気付いていたに違いない。藤岡が問題を開示したことで、解決すべき点が話し合いのテーマとなった。

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独自の販売チャンネルの強化

「うちの商品は決して安いものではありません」部下の言葉に藤岡はうなずき、「いいものは高い」と語尾を強める。例えば他社のカラートリートメントは、強い薬剤を毛染めに使用するが、自社製品はそういうものを使わず、身体に優しいものだけを配合している。

「シャンプーにしても、機能性のあるものは原価も異なるし、類似品より値段は高くなりますよ」

「いいものは売れると思っていたけど、消費者の値段に対する目は厳しいな」

さて、どのように売って行くのか。

「うちの商品は、ドラッグストアに置くものじゃないのもしれません」部下の言葉に藤岡もうなずく。

ドラックストア以外の販売チャンネルを強化する必要がある。独自の販売チャンネルとは何か。

「我々の商品は、お客様自身がパソコンやスマホを見て買うほうが性に合っています」

「実際に製品の価値を理解してもらい、高くても買ってもらえるのは通販だな」

Eコマースに力を入れる。部内にその戦略が浸透していき、販路の見直しは功を奏していく。在庫の過多等の問題は徐々に解決していく。

藤岡毅純が銀行に入社した1984年は、バブル期前夜。金融業界は生き馬の目を抜く活気に満ちていた。

「携帯電話のない時代は、テレビドラマじゃないけど、大きなお金が入ったお客さんの預金を獲得しようと、家の前で夜9時まで粘ったことがありました。帰宅したお客さんは僕の見て、あきれたように笑っていましたよ」

そんなモチベーションで、サラリーマン人生を貫いた藤岡部長としては、今の会社の部下たちはマジメで慎重な半面、覇気や執念が足りないと歯がゆさを感じる時もある。

例えば時間の使い方も、「時間がありません」「手一杯です」部下からそんな言葉を聞くことがある。だが、「時間は自分で作るものですよ」と、藤岡は言葉を続ける。

「銀行に入って間がない頃、電車が遅れて遅刻したことがあったんですよ。『電車が遅れまして』上司に報告したら、『遅れる前に会社の前にいればいいんだよ』と言われまして。それ以来、今も朝7時には会社の最寄り駅に着くようにしています。早く出社して、仕事の整理をして、新聞を読んだり」

「私は根っからの営業マンですから」

――先日、「リーダーはつらいよ」のシリーズで紹介した同じ部署の吉田課長は、“部長はせっかちだ”と評していました。藤岡部長の時間を有効利用する性格を、言い表しているのかもしれませんね(笑)

「私はせっかちですよ(笑)じっくりと耕してから種をまくタイプではない。耕す前に種をまいちゃう。そのくらいせっかちです」

――その一方で、“よし、やってみろ!”と、背中を押してくれる頼もしい部長だと。ところで課長の取材の時にお聞きした、ロシア進出の話はどうなりましたか。

「今のコロナ禍で中断しているといいますか…。私は根っからの営業マンですから、販路を次々に広げていきたいと思うのですが。先日、銀行からこの会社に来た先輩に、『今ある販路を育て上げて、太くしてから次を手掛けないとダメだ!』と、私のウィークポイントを突かれまして」

藤岡部長は人懐こい笑顔で頭をかく。部下に足りないと感じている覇気や執念だが、部長の場合、時にそれが空回りすることもあるようだ。

部長に着任して5年、アートネイチャーに来てよかったという。銀行では金融商品という既製品を販売したが、この会社では一からモノ作りに携える。商品デザイン、ネーミング、OEMの選択等、自分やみんなの意見を反映して、製品が形になっていく。

銀行員では考えられないことも体験できた。彼は現在、自分の部署が扱う増毛のための男性用パウダーのCMに出演している。CMへの出演は経費節減と、「藤岡くんの笑顔はいいよ」という社長の言葉が決め手となった。

藤岡毅純、59歳――夕食を取りながら、妻に職場であったことをすべて話すのは、若い頃からの習慣だ。引退した暁には、「私が銀行に入社したのは昭和59年ですが、60年入社の同僚と、“ゴクロー会”という集まりを作っていまして。その仲間は生涯大事にしていきたいですね」

サラリーマン一筋の人生、脱帽ものである。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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