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独居生活が急性冠症候群の長期予後に影響を与える、順天堂大学医学部附属静岡病院研究報告

2020.08.20

急性冠症候群(ACS)」は、心臓に酸素や栄養を供給する冠動脈の中で動脈硬化により生じたプラークの破綻とそれに伴う血栓形成により血管が急速に狭窄・閉塞し、心臓の筋肉が虚血・壊死に陥る致命的な疾患で、治療法や薬剤が進歩している現在でも世界の主要死亡原因であり続けている。

今回、順天堂大学医学部附属静岡病院 循環器内科の諏訪哲先任准教授、荻田学准教授、和田英樹助教、大学院生の竹内充裕らの研究グループは、独居生活が急性冠症候群 に対して経皮的冠動脈形成術(カテーテル治療)を行った後の長期予後に与える影響について解析を行った。

65歳未満の患者では「一人暮らし」が長期予後不良の要因に

今回1999年から2015年の間にACSで搬送され当院にて緊急カテーテル治療を施行した2548名の患者を対象に約5年間の死亡率に関して解析。患者背景は年齢の中央値が69歳で男女比は男性73%、女性24%だった。動脈硬化の危険因子である生活習慣病の有病率については糖尿病 37%、高血圧症 67%、脂質異常症 54%。

このなかで、治療を行った時点で独居の患者; 268名 (11%)と同居家族のいる患者; 2280名 (89%)の2群に分けて比較検討を行った。年齢は独居の患者の方が有意に高齢で、女性の比率が多く認められた。

全体では独居生活の患者と同居家族のいる患者の間で死亡率に関して有意差は認めれなかったが(図1) 、65歳未満の患者においては死亡率に関して独居の患者群が有意に高い(同居家族のいる患者と比較して約1.8倍)ことが明らかになった(図2)。この結果は年齢、性別および高血圧、糖尿病、脂質異常症などの動脈硬化リスクをなどの因子を含めた分析においても変わらなかった。

今後の展開

独居生活がもたらす影響として、孤独・抑うつなどの感情的な要素や、食生活の乱れ・怠薬などにより生活習慣病の管理が不十分になるという医学的要素が報告されている。特に今回、65歳未満の患者において死亡率に有意な影響が認められたのは労働環境下におけるストレスや経済的な問題などが影響した可能性が推察される。

一方、65歳以上の高齢者では両群間に差がなく、独居であることが必ずしも予後不良ではないことが示唆された。

平成30年に総務省より発表された「情報通信白書」では、近年の独居世帯の増加が報告され、2040年には全世帯の約40%の割合に達すると推測されている。

今後増加していく独居患者に対して適切な治療介入を行うことで、ACSに対して緊急カテーテル治療を行った後の長期予後改善につながっていくことが期待される。

現在も主要な死因である急性冠症候群に対しての治療は、急性期の緊急カテーテル治療を始めとしてその後の治療や外来通院まで多くの要素が含まれている。

静岡病院は今後も、「救急を断らない循環器内科」として質の高い急性期治療をより多く提供するとともに、その後の外来通院においても患者の皆様それぞれに必要とされる治療を行えるように、地域の医療機関と十分な連携をとりながら、日々精進していく所存だという。

原著論文

本研究はEuropean Heart Journalの学術雑誌「Quality of Care and Clinical Outcomes」オンライン版に(2020年2月11日付)公開された。

タイトル: Comparison of long-term mortality between living alone patients vs. living together patients with acute coronary syndrome treated with percutaneous coronary intervention

タイトル(日本語訳): 独居生活が急性冠症候群の長期予後に与える影響について

構成/ino.

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