東京の地下を駆け抜ける東京メトロに副都心線・有楽町線向けの新型車両「17000系」が登場! 2021年2月の営業運転開始予定に先立って、その快適な車内をご紹介していこう!
東京メトロの車両はハイスペック!
17000系は副都心線・有楽町線に投入される新型車両で、まず10両編成が投入され、その後8両編成も登場する予定だ。これにより、1974年より活躍してきた7000系を引退させてこの17000系に置き換える予定になっている。
信頼性の高い走行装置と利用者目線にこだわって設計された17000系
東京メトロの路線はスペースが限られた地下を走るということもあり、急勾配や急カーブ、加えて駅間が短い区間も多い。さらに待たずに乗れる高密度輸送、一本の列車で多くの利用者を運ぶ大容量輸送が求められるという非常にシビアな路線環境となっている。
その上、副都心線・有楽町線は、東京メトロ線だけでなく、東急、西武、東武、横浜高速鉄道と相互直通運転を行なっており、各会社のシステムに合わせた保安装置の搭載や高速走行性能なども求められる。
そのため、この17000系を含めて東京メトロの車両はどれも求められるスペックが高い。この17000系についても安全性・安定性を重視された台車や走行機器を採用し、求められるスペックに応えられるように設計がされている。
手前から17000系、10000系、7000系。10000系と7000系のデザインエッセンスを17000系は汲んでいる。
外観については現在活躍中の7000系、10000系のデザインの流れを汲みつつ、ブラッシュアップ。有楽町線のゴールド、副都心線のブラウンの2色のラインカラーをまとっている。どこか丸めのデザインが可愛らしいヘッドライトにはLEDを採用。省エネ性能と視認性を向上している。車椅子やベビーカーなど向けのフリースペースがある部分には、上部にわかりやすいピクトグラムも配置されている。
ホーム上からもわかりやすいようにフリースペースがある場所には、ピクトグラムを配置
一方で利用者が一番気になる車内空間だが、こちらについても、今までの東京メトロで培ってきたノウハウを生かし、地下鉄車両でありながら開放感と明るさを兼ね備えたインテリアになっている。
東京メトロ初! ちょっとの傾きの「おもてなし」
さて注目のインテリアだが、一目で感じるのが明るさと開放感。車両間の「貫通引戸」や荷棚、シート横の袖仕切には強化ガラスを採用することで車内空間を広々と見せている。最近ではこの箇所を透明にして開放感を演出するのがトレンドのようだ。
シートには明るいカラーを採用。このカラーは有楽町線のゴールドをモチーフにしている。では、副都心線のブラウンは? と思うかもしれないが、ちゃんと存在しているぞ!
シートのゴールド、つり革のブラウンで車内にも副都心線、有楽町線らしさをふんだんに取り入れている。ドア上の車内情報表示器は17インチワイド液晶を2画面配置。多言語案内はもちろん、乗り換え案内、運行情報、各種PRや広告なども表示できるようになっている。この液晶モニターの横にはセキュリティカメラを搭載。車内の安心空間を作り出しているぞ。
隠れたポイントとして、車内放送用のスピーカーにも注目したい。通常の鉄道車両で採用されるものよりも高品位なステレオ音声対応型のものを設置。車内放送の聞き取りやすさを向上している。
この高品位スピーカーは日比谷線で活躍中の13000系にも搭載されており、過去には営業列車でBGMを流す実証実験も行われた。その時の記事はこちらも見てほしい。
車椅子やベビーカーでの利用者に嬉しいフリースペースは、10両全ての車端部に設置。「ちょっと座り」に最適なヒップレストも搭載されている。
一方、丸ノ内線の新型2000系で採用された電源コンセントは、丸ノ内線のように走行区間が東京メトロ線だけで完結せず、相互直通運転を行うことから、17000系での搭載は見送られている。
注目したい点としては、このフリースペース横の乗降ドア。実はドアレールの一部に切欠け加工がされている。これにより、車椅子やベビーカーの車輪が引っかからずにスムーズに乗降することが可能になっている。また、旧型の7000系に比べ床面の高さを60mm低くしてホームとの高さのギャップを軽減。さらにドアの下部部分を約10°、高さにして約10mmホーム側に傾斜させることでさらに車椅子などの利用性をしている。非常に小さく目立たない工夫だが、ここが今回17000系の最大のポイントのように僕は感じている!
フリースペースそばの乗降ドアのレールはこのように切り欠けがあり、車椅子などの車輪が引っかからない。ホーム側への傾斜加工は全ドアに行なっている。
17000系登場で副都心線・有楽町線はどう変わる?
さて、そんな17000系だが営業開始は2021年2月とまだしばらく先だ。これからは乗務員の訓練などが行われていくが、これも乗り入れ先4社すべてで行う必要があることからしばし時間がかかる。
ちなみに、東京メトロを含めると副都心線・有楽町線実に5社の乗り入れが行われているわけだが、各社それぞれ異なった車両や社風を持っている。そのため、運転機器配置などそれぞれの会社の車両で異なっているポイントが多く、それが乗務員の負担につながっている。さらにフリースペースの位置が異なるなど、利用者側にもデメリットがある。そこで、各社では会議を重ね、この17000系のように今後登場する車両は細かな違いはあるかもしれないが、大まかな仕様を揃えていくようにするそうだ。
様々な機器の配置や、運転操作を行うハンドルの形状なども共通化されている17000系の運転台
2022年までに現在活躍している7000系を全て置き換え、有楽町線・副都心線を走る東京メトロの車両は17000系と10000系に揃えられることになる予定だ。17000系のデビューを楽しみにしつつ、1974年の有楽町線開業から活躍を続けてきた7000系の引退を見守っていこう。
取材・文/村上悠太