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クロールの泳ぎ出し前のバタ足は減速の大きな原因になる、順天堂大学・筑波大学共同研究

2020.08.10

「クロール」はバタ足使用がパフォーマンスにデメリットとなる

「もっと早く泳ぎたい!」そんな人はぜひ読んでほしい。

競泳では、プールへの飛び込みや折り返しを行うターン動作の壁蹴り時の方が、実際に泳法動作を行なっている時よりも高い速度が出る。

そのためこの時の高い速度を維持しながらスムーズに泳ぎ出すことを目的に、クロールの泳ぎ出しではバタフライキックやバタ足が用いられてきた。

実際の競技会においても、バタフライキックのみで泳ぎ出す選手のほかに、バタフライキック後にバタ足を追加して泳ぎ出す選手が見られる。

バタ足の推進力はバタフライキックより劣るものの、クロールでは泳法自体にバタ足を使用することから、バタフライキック後にバタ足を追加することでスムーズに泳ぎ出せるのではないかといった議論がこれまでにもなされてきた。

そこで順天堂大学スポーツ健康科学部の武田剛准教授、および筑波大学体育系の高木英樹教授らの共同研究グループは、クロールにおけるバタフライキック後のバタ足の効果を明らかにすることを目的に、プール壁を蹴ってからの泳ぎ出し条件を、①「バタフライキックのみ」と②「バタフライキック後にバタ足を追加する」の2条件で設定し、条件間の速度変化を比較して、パフォーマンスへの影響を検討した。

内容

研究グループは、日常的に競泳のトレーニングを積み、日本国内の全国大会規模の競技会に出場経験をもつ男性競泳選手8名を対象とした実験を行いました。プール壁を蹴ってからクロールを泳ぎ出す前の動作を2条件設定し、2条件の練習期間を1週間設けた。

この2条件のうち、「バタフライキック条件」では、壁蹴り後にバタフライキックのみを5回行ってクロールへと移行し、15m地点まで全力で泳いでもらった。一方、「バタフライキック-バタ足条件」では、壁蹴り後5回のバタフライキック後に6回のバタ足を追加し、クロールを泳ぎ出してもらった(図1)。

図1:クロールの泳ぎ出しまでの基本局面構造と実験で検証した2条件の内容

壁蹴りから泳ぎ出しまでの区間を水中カメラで撮影し、対象者の泳速度を条件間で比較すると、「バタフライ-バタ足」条件では、バタ足を行っている局面の速度低下が明らかとなった(図2)。

図2:実験で実施した2条件の平均速度の推移

この泳ぎ出し前のバタ足の使用は、大きな減速の原因となるのではとの指摘が以前からされてきましたが、この実験によって、バタ足使用によるパフォーマンスへのデメリットが明確に示された。

これは全国規模の競技大会に出場するレベルの競泳選手にとってはパフォーマンスに大きく影響を与える結果であることから、クロールの泳ぎ出しには「バタ足を使用すべきでない」ことが広く周知されることを期待できる。

ただし、本研究成果は高度な技術レベルの選手のデータから明らかになったことであり、初中級者やジュニア世代ついては、育成段階や練習計画に合わせて応用していくことが望ましいと考えられる。

今後の展開

クロールのバタ足は、推進力獲得にはあまり貢献しないとされていましたが研究により、高い速度が獲得される飛び込み後や壁蹴り後の泳ぎ出しに使用した際には、デメリットとなることが示された。

主要動作である泳法動作の前に飛び込みや壁蹴りによって事前に高い速度(初期速度)が獲得される競泳の特性に着目し、研究グループは今後も初期速度を保つ泳技術の発見やその評価、メカニズムの解明に取り組むとともに、泳法や指導法の改善に貢献していきたいと考えているという。

原著論文

本研究はSports Biomechanics誌のオンライン版で(2020年4月27日付)先行公開された。

タイトル: Underwater flutter kicking causes deceleration in start and turn segments of front crawl

タイトル(日本語訳):競泳クロール泳のスタートとターン局面における水中バタ足は減速を招く

著者:Tsuyoshi Takeda, Shin Sakai, Hideki Takagi
著者(日本語表記): 武田剛1)、酒井紳2)、高木英樹2)
著者所属:1)順天堂大学スポーツ健康科学部、2)筑波大学体育系
DOI: 10.1080/14763141.2020.1747528

構成/ino.

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