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地元で愛されるJクラブに!コロナ禍でも2019年度並みの収入を目指す水戸ホーリーホック小島 耕社長の挑戦

2020.08.04

 2000年のJ2参入以来、ずっと同リーグで戦い続けているものの、近年は東京五輪世代の小川航基(磐田)や前田大然(マリティモ)ら若きA代表経験者たちがレンタル移籍して実力を蓄えたことで知られる水戸ホーリーホック。今季も2016年リオデジャネイロ五輪代表コーチを務めた秋葉忠宏監督を招聘し、アグレッシブなサッカーを目指している。6月27日の再開後は2勝3分2敗という成績。順位も15位とやや苦戦しているが、本当の戦いはここからだ。

 その水戸では7月16日、社長交代という大きな出来事があった。12年間に渡ってクラブ経営を担った沼田邦郎社長に代わり、小島耕副社長がトップに昇格。新たな経営体制で再スタートを切ったのだ。

メディアからJクラブ経営へ異例の転身

 1974年生まれの小島社長は地元・茨城県鉾田市出身。98年に明治大学を卒業してから、図書出版に入社し、そこからメディア畑を歩き続けてきた。もともと鹿島アントラーズのサポーターだった彼がサッカー界と接点を持ち始めたのは2000年頃。横浜FCのマッチデープログラムなどに寄稿する「フリーライター」になり、取材へ行くようになったことで、少しずつ関係者に知り合いができた、そして2004年に創刊したサッカー専門新聞・エルゴラッソの運営会社である「SQUAD(スクワッド)」に転職。2010年南アフリカワールドカップが終わるまでの6年間、編集・営業など幅広い業務に携わり、日本サッカー界全体に幅広いネットワークを築くに至った。

 そんな彼の大きな転機となったのが、映像制作会社「Production 9(プロダクションナイン)」の設立。2010年末に仲間2人と新会社を立ち上げたのだ。
「『Jリーグ・ラボ』などのJオフィシャル応援番組を作っていた会社がスポーツ部門を切り離すことになり、当時の責任者から『やらないか』と持ち掛けられたのが、新会社設立のきっかけでした。ちょうど南アワールドカップが終わり、サッカー専門新聞での仕事も一区切りというタイミングだったので、3人で『じゃあ、やろう』と格安の資本金で会社を立ち上げたんです。
 起業して4~5年間は映像制作中心でしたが、2016年からは日本フットサルリーグ(Fリーグ)のバルドラール浦安のアライアンスパートナーになり、広報やチケッティング、ファンクラブ事業などに携わり始めました。後から加わった会社のスタッフには仲介人(代理人)として活動を始めた人間もいて、選手移籍に関する知識も深めるチャンスを得られました。こうした数々の経験がその後に生きたんだと思います」

 自身の歩んできた道をこう振り返った小島社長。ただ、茨城出身でありながら、この時点までは水戸との接点はほとんどなかった。沼田前社長と初めて会ったのは2018年12月。仲介人の同僚とともに初めてオフィスを訪ねた際、面識を持つに至ったのだ。お互いに茨城生まれということで意気投合し、頻繁に連絡を取り合うようになり、2019年春には「会社の役員改選があるから社外取締役に入ってくれないか」と誘いを受けた。「いつかは地元に恩返しがしたい」と考えていた小島社長には願ってもない話。すぐさま快諾し、月1回は水戸に赴いて会議に参加し、経営にも関与するようになった。
 水戸は2018年度(2018年2月~2019年1月)の営業収益(売上高)が6億3000万円という小規模クラブ。J2の中でも下の方に入る。こうした業績を少しでも引き上げるため、小島社長は地元の友人関係や東京の人脈を駆使してスポンサー獲得に勤しむようになる。同年9月には出向扱いで常勤役員に就任。本格的に経営面に入り込んでいった。

「沼田前社長から『退任を考えている』と言われたのが昨年末くらいでした。東京でメディア・映像関係で長く働き、Jリーグ本体ともパイプを持ち、Fリーグのクラブで運営にも携わった地元出身の役員が自分だけだったのが大きかったんだと思います。あまりの急転直下に驚きましたが、水戸というクラブを成長させる仕事に大きなやりがいを感じていたのも事実。受ける方向で内々に返答をしたんです。正式就任は7月ということで、自分も10年間働いたプロダクションナインを退職し、クラブに転籍し、6月には副社長に就任するなど、新体制移行への準備を進めていくことになりました」

いい流れで迎えた2020年のシーズン、地元の支援でコロナ禍を乗り切る

 迎えた2020年。2月23日のJ2開幕戦・大宮アルディージャ戦に7029人を動員するなど、新シーズンの船出は順調だった。2019年2月~2020年1月末までの2019年度の売上も7億5000万円まで増え、2020年度は8億6000万円を目指す方向で営業活動も活発化させていた。新年度のスポンサーが増え、金額も増額されるなど、予想を上回る勢いがあり、このまま行けば9億円台に乗る可能性もありそうだった。
 そんな矢先に新型コロナウイルス感染拡大が襲った。J2は1試合を消化しただけで休止となり、中断期間は4カ月にも及んだ。すでにこの時点では副社長として沼田前社長とともに経営の陣頭指揮に当たっていた小島社長にとっても想定外だった。

「クラブスタッフも優れた人材を探して12人から22人に増強し、過去最高収益を目指して機運を高めていた時だったんで、ショックは大きかったですね。ただ、茨城の場合は2011年の東日本大震災で被災し、昨年の台風19号でも大きなダメージを受けていたんで、コロナのインパクトは他地域よりも少なかった気がします。スポンサー企業からも『返金してほしい』という申し出はほとんどなく、『むしろ地域を盛り上げるために頑張ってほしい』と応援していただいたくらい。地元に支えられていることを改めて実感しました。
 再開後は観客数上限5000人の制限もあり、入場料収入は大幅に減るでしょうが、売上自体は2019年度に近い7億円程度は何とか確保できるかなと考えています。ただ、コロナ感染者も全国的に急増していますし、先々の見通しが全く立たない。そういう中で自分たちに何ができるかをより真剣に考えていく必要があると思います」と小島社長は神妙な面持ちで語る。

 終息が見えないコロナ禍でも地元からの支援をより多く取り付け、応援してくれるサポーターを1人でも増やすことが当面の重要テーマだ。とはいえ、同じ県内に常勝軍団・鹿島アントラーズがあるため、水戸の営業範囲はどうしても限られる。茨城県には、水戸を中心とした県央、土浦・つくばを中心とした県南、日立・高萩などの県北、鹿嶋・神栖などの鹿行という4地区があり、鹿行地区はご存じの通り、鹿島の本拠地だ。県央と県南は歴史的にも難しい関係にあり、支持者を探すのは容易でない。しかも県北も日立製作所関係の会社は全て柏レイソルを応援している。水戸のマーケットを広げるのはそう簡単なことではないのだ。

「茨城県総人口270万のうち、県央地区は72万人。その中でホーリーホックへの理解者を増やしていくのが、第一歩になりますね。僕が鉾田の実家に住んでいた学生時代は、水戸の駅前にアントラーズのオフィシャルショップがあるほど、ホーリーホックの認知度は低かったんです(苦笑)。でも今は応援してくれる人も格段に増え、知名度も高まった。そんな実感を持っています。
 2016年に強化部長に就任した西村卓朗現GMの努力もあって、才能ある若手選手がレンタル移籍で来てくれるようになったのも、人気向上の一因になっていると思います。『水戸は選手を育ててくれるいいクラブ』という評判が仲介人や他クラブにも広まり、多少年俸が安くてもウチに送ってくれるケースが増えてきた。そうやって地道な努力をしつつ、身の丈に合った経営をしていくこと。それが新社長である僕の責務なんです」

2024年を目指して「新スタジアム構想」を発表

 クラブ運営規模を拡大するには、魅力あるチームと集客力の高いスタジアムが必要になる。2010年から本拠地になっているケーズデンキスタジアム水戸は1万2000人収容だが、アクセスが悪く、屋根付きはメインスタンドのみで、悪天候時には客足がガクッと落ちてしまう。しかも、観客数が6000人を超えると駐車場が足りなくなり、近所からクレームが殺到するということで、営業的には非常に厳しいものがある。
 そこでは昨年末、2024年を目指して市内に1万5000~2万人収容の自前の専用サッカー場を整備するという「新スタジアム構想」を発表。本腰を入れて動き始めている。今回のコロナ騒動で約100億円の費用捻出の難航が予想されるが、小島社長としては持ち前のアグレッシブさと社交性を最大限生かして、資金繰りのメドをつけ、構想の実現を図っていく覚悟だ。

「コロナという困難の中、スタジアム構想も営業面もゼロからのスタートになりますが、いろんな方々の知恵を借りながらクラブを少しでもいい方向へ導いていくことに集中したい。いつかはアジアに打って出ていけるような水戸ホーリーホックになるように、足元を固めていきたいと思います」

 明るく社交的で、誰からも好かれる小島社長のところにはつねに人が寄ってくる。人望ある新リーダーならば、未曽有の困難を必ず乗り切ってくれるはず。彼のチャレンジの行方を興味深く見守りたい。

取材・文/元川悦子

長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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