
2020年8月8日、この日をずっと待ち望んでいた、ある鉄道路線がある。
阿蘇の急勾配を登るための「スイッチバック」、そしてさわやかな山地の車窓や空気が魅力のJR九州豊肥本線。2016年の熊本地震で大きな被害を受けたこの路線が4年4か月ぶりに全線で運転を再開する!
豊肥本線ってどんな路線? 実は空港アクセスのお得ルート!
JR九州豊肥本線は熊本駅と大分駅を結ぶ九州のほぼ真ん中を横断する鉄道路線だ。途中、阿蘇の山々の麓を走り、風光明美な路線というだけでなく、沿線には湧水が渾々と湧く南阿蘇エリア、阿蘇外輪山の絶景や、温泉、グルメなど観光地も多く、九州の中でも特に人気の高い観光スポットのあたりを走行している。
さらに途中の立野駅では、阿蘇地区に登っていくために列車の方向を変えつつ、ジグザグに坂道を登っていく「スイッチバック」区間があり、豊肥本線のハイライトともなっている。熊本から出発してこのスイッチバックで阿蘇に駆け上ると、それまでの風景や空気とは一変し、高地のさわやかな風が吹き渡る。
さらに隠れたポイントとして、豊肥本線は熊本の空の玄関口、阿蘇くまもと空港との相性が非常に良い。阿蘇くまもと空港は熊本の中心地まで約20km、リムジンバスでも1時間程度と熊本中心地から東側に位置し、やや遠い。
そんな阿蘇くまもと空港、実は豊肥本線の肥後大津駅から車で15分の距離にある。「列車で行っても最後はタクシー?」と思ったそこのあなた! 何と肥後大津駅南口と阿蘇くまもと空港の間には「空港ライナー」という予約不要のジャンボタクシーがおおそよ30分に1本運行されている。そしてうれしいのは運賃が無料なのだ!
「阿蘇くまもと空港駅」という別名もある豊肥本線の肥後大津駅。乗り換えはあるが、鉄道なら市内の渋滞も回避できる。
肥後大津駅〜熊本駅は豊肥本線で480円約32分。空港ライナーや列車の待ち時間を考慮してもリムジンバスと所要時間は大差なく、運賃はリムジンバスが空港〜JR熊本駅が800円なので、豊肥本線+空港ライナーのルートも悪くないはず。
実際、筆者はこのルートを知って以来、空港までは豊肥本線を利用している。肥後大津駅の周りにはホテルもあるので、飛行機利用の前泊、後泊などにも対応できる。
なお、熊本〜肥後大津は現在でも運転されているので今日からでも利用できるぞ! 同区間ではSuicaなどの交通系ICカードも利用できる。
豊肥本線の復旧現場を見てみよう
さて、8月8日に復旧するのは豊肥本線のうち、熊本地震で被害を受けた肥後大津〜阿蘇間の27.3Km。途中に立野のスイッチバックを含む区間だ。
この区間のうち立野地区の被災状況が甚大で、熊本地震の大きな揺れで山の斜面が広範囲で大崩落。国道57号の横にかかっていた「阿蘇大橋」が谷底に崩落してしまった。
この国道57号に沿って豊肥本線は走っており、豊肥本線の線路も大量の土砂の下に埋れてしまった。さらにこの地震後に降った豪雨によりさらに土砂が崩落。豊肥本線は甚大なダメージを負ってしまい、震災からずっと部分的な運休を余儀なくされていた。
今回の運転再開に先立ち、JR九州は報道陣に立野エリアの復旧現場を公開。「初めて被災状況を見た時は『果たして直せるのか』と思った」と関係者が語った現場を見て歩いた。
スイッチバックを登って赤水駅に向かうあたり。運転再開日まで工事が進められている。
今回の復旧のポイントは、「現場の狭さ」と「再発を防ぐ」という二点だ。立野エリアは、スイッチバックをしながら坂道を登らないといけないほどの急勾配区間。加えて現場は狭く、作業用車や資材の運搬に苦慮した。
そこで、まずは立野駅の工事を重点的に行い、ここを工事の前線基地として活用。現場までオンレールで資材などを運搬できるようにすることで、工事の効率化を図った。
また、再発を防ぐという点においてはJR九州だけでなく、熊本県と連携しながら山体の大規模な補強工事などを実施。この補強工事に時間を要した関係で復旧までに時間がかかったそうだ。
地震後の豪雨で崩落した山肌。熊本県主導で補強工事が行われた。
1000m進むと33.3m登ることを指している「パーミル標」。列車にとっては大変な急坂だ
立野名物スイッチバックポイント。ここも山肌からの土砂が降り注いだ。
スイッチバックで方向転換する場所を見る。補強された斜面が見える。クルーズトレイン「ななつ星」の入線にも対応する!
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