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新型コロナの研究を支援するために日本のスタートアップ企業が始めた、AIを活用した取り組みとは?

2020.08.01

東京に拠点を置くスタートアップ企業の株式会社Elixのチームは、COVID-19の研究を支援するため、AIを活用した取り組みを行っている。

以下に同社の取り組みの詳細を紹介していく。

創薬を加速するべくディープラーニングを使用

研究者たちは COVID-19の治療に適した薬物分子の発見を急いでいる。しかし、存在しうる薬物類似分子の数は想像もつかないほど多く、その数は10の60乗と見積もられている。

株式会社Elixの共同創業者兼CEOである結城伸哉 (ゆうきしんや) 氏は次のように述べている。

「仮に毎秒1つの分子を調べられたとしても、ケミカル スペース全体を探索するには宇宙の年齢よりも長い年月がかかります。AIなら巨大な探索空間を効率的に探索でき、創薬や材料開発、あるいは囲碁のようなゲームなど、さまざまな難しい問題を解くことができます」

結城氏の会社は創薬を加速するためにディープラーニングを使用しており、コンピューターシミュレーションよりもはるかに速く分子の性質を予測できるニューラルネットワークを構築している。

COVID-19の研究を支援するため、Elix のチームはAIを使用して、FDA承認済みの薬や臨床試験中の薬の中で新型コロナウイルスの治療に転用できそうなものを探している。

「新薬を一から開発するプロセスには何年もかかりますが、特にこのパンデミックの状況においてそれは望ましくありません。スピードが何よりも重要であり、ドラッグ リポジショニング (既存薬再開発) ならば、すでに臨床的な安全性が記録されている薬から候補を特定し、薬の開発にかかる時間とコストを大幅に削減できます」

Elixは先日、同社のAIモデルが COVID-19 の治療薬になりうると判断した承認薬および臨床試験段階の薬について論文を発表した。ElixのAIツールが候補として選んだものの中には、5月にFDAから新型コロナウイルスの症例に対する緊急使用許可を受けた抗ウイルス薬のレムデシビルも含まれていた。

Elixは、スタートアップの迅速な市場参入を支援するプログラムであるNVIDIA Inceptionのメンバーであり、ディープラーニング アルゴリズムの学習と推論にNVIDIA DGX Stationを使用している。結城氏
は、開発者やAI研究者向けのNVIDIAのデジタル カンファレンス、GTC DigitalのInceptionスタートアップ ショーケースで、ElixのAIによる創薬の取り組みについて発表した。

創薬のためのElixのAI修正

分子レベルで見ると、成功する薬は、標的とするタンパク質、たとえばSARS-CoV-2 (COVID-19 を引き起こすウイルス) のエンベロープを覆うスパイク タンパク質などと結合するための完璧な形状、柔軟性、相互作用エネルギーの組み合わせを持っていなければならない。

SARS-CoV-2 (COVID-19 を引き起こすウイルス) は、表面がタンパク質のスパイクで覆われている。
画像提供: CDC/ Alissa Eckert, MSMI、Dan Higgins, MAMS。パブリック ドメインに基づきライセンス許諾。

これらのスパイクタンパク質が体内の細胞に付着し、細胞の中にウイルスを持ち込むと、人はCOVID-19に感染する。効果的な抗ウイルス薬はこの付着プロセスを妨害できるかもしれない。たとえば、有望な薬物分子はスパイクタンパク質と結合して、ウイルスが人間の細胞に付着するのを防ぐと考えられる。

そのための最適な薬を研究者が見つけられるように、Elixはさまざまなニューラルネットワークを使って候補となる分子の範囲を素早く絞り込む。これにより研究者は、問題を解決する見込みがより高い、より限定された範囲の分子のために、研究室での物理的なリソースを集中させることができる。

予測AIモデルを用いて、結城氏のチームはデータベース化された薬剤候補を分析し、特定の疾患の治療に適した物理的、化学的性質を持つ薬剤を推論できる。また、自然界では見られないような有望な分子構造を一から考え出すために、生成モデルも使用している。

そこで登場するのが3つ目のニューラルネットワークである逆合成モデルだ。これは、生成された分子が研究室で合成可能かどうかを研究者が判断するのを支援する。

Elixは複数のNVIDIA DGX Station システム (データサイエンス開発チーム向けのGPU搭載AIワークステーション) を使用してこれらのニューラルネットワークの学習と推論を高速化しており、1基のGPUで学習する場合CPUと比べて最大6倍の高速化を実現している。

結城氏によると、生成モデルには高速化が不可欠であり、もし高速化しなければ学習が収束する (ニューラルネットワークのエラー率が可能なかぎり最小になる) まで1週間以上かかるという。各DGX Station には4基のNVIDIA V100 Tensor コア GPUが搭載されており、これによってElixのチームはより大きなAIモデルに取り組んだり、一度に複数の実験を実行したりすることができる。

結城氏は次のように述べている。「DGX Stationは基本的にスーパーコンピューターです。当社ではたいてい数人のユーザーが同じマシンを同時に使って作業していますが、モデルをより速く学習できるだけでなく、実験を15個まで並列で実行できるのです」

Elixは、製薬企業、研究機関、大学などを顧客にしている。製薬業界にとって分子データは機密性の高い知的財産であるため、ほとんどの企業がAIモデルを自社のオンプレミス サーバーで実行することを選ぶ。

創薬の他に、Elix はタイヤおよびゴム メーカーのブリヂストンや日本最大の研究機関である理化学研究所などと協業し、AIを使ってマテリアルズ インフォマティクスのための分子設計も行っている。さらに、自動運転やエッジAI向けのコンピュータービジョンモデルも開発している。

あるプロジェクトでは、結城氏のチームは世界的な化学企業である日本触媒と協業し、インクに配合する材料として使える一方で皮膚刺激性のリスクが低い分子を生成した。

出典元:NVIDIA
https://www.nvidia.com/ja-jp/

構成/こじへい

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