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ガソリンエンジンの前輪駆動、ハイブリッドに試乗!トヨタの新型「ハリヤー」に欲しかった、4代目ならではの個性と独自の存在感

2020.07.29

■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

 1997年にデビューしたトヨタ「ハリアー」の4代目が発表された。なだらかに傾斜するテールゲートを持った背の高いシルエットは、初代のイメージから変わらない。4代目では、ボディーサイドのキャラクターラインの抑揚が強く、併せてトランクとバンパーの間の凹んだ造形が眼を惹く。それに合わせた薄いテールライトユニットや切れ上がったリアクォーターウインドなども新鮮味を打ち出している。

 パワートレインと駆動系の組み合わせによる違いは4種類ある。2.0L、4気筒ガソリンエンジンを搭載する前輪駆動版と4輪駆動版。2.5L、4気筒ガソリンエンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリットユニット「THS2」を積んだ前輪駆動版と電気式4輪駆動版。そのうち、ガソリンエンジンの前輪駆動版を30分間、ハイブリッドの両方を60分間ずつ試乗した。

 3つのグレードに共通した美点は、パワートレインのスムーズなところだった。滑らかに加速し、音やショックもなく変速していく。もうひとつは、運転した感触だけでなく、ドアの開閉や各部分のスイッチやノブなどの操作感覚などもグレードによる大きな違いがなく、クオリティーが高いレベルで保たれているところも優れていた。販売価格299万円(消費税込み)のガソリン前輪駆動版から、504万円(同)のハイブリッド4輪駆動版まで、グレードが違っていてもクオリティーが統一されているのはトヨタならではだろう。

 ただ、インテリア各部分の意匠と考え方が、2020年に発売される新車としてはどうにも古くさい。樹脂製のリアルの針を持ったメーターがいくつも並び、センターコンソールには太いシフトレバーが生えている。センターのモニターパネルも外寸は大きいのだが、空調やシート位置調整画面などを収納することができず、また外枠も太いので、実質的に各種情報を映し出せる面積は広いわけではない。

 さらに、エンジンスタートボタンがセンターコンソールの物入れの内側に出っ張っているので使いにくい。ドライバーインターフェイス全体を、少人数で時間を掛けて総合的に吟味すれば、持てる多機能をもっと有効に活用しやすくなるのではないか。

 古くさいといえば、運転支援だ。LKAS(レーンキープアシスト)を有効にしても、車線逸脱を把握する範囲が狭く、ステアリングをアシストする力も弱い。メルセデス・ベンツやBMW、ボルボ、テスラなどと較べると、ひと世代前の印象だ。開発者の一人に、この件について質問すると、彼も「その認識は持っています。次の機会に(他車に)追い付くようにしたい」と認めていたから、早急なバージョンアップが期待できるだろう。

商品として魅力的か? ★★★3.0(★5つが満点)

 思い返せば、初代「ハリアー」は偉大なクルマだった。今日、世界中の自動車メーカーが競って送り出しているアーバンSUV、乗用SUVと呼ばれるカテゴリーの先駆けだったからだ。それまで、乗用車以外のRV(レクリエーショナルビークル。まだ、SUVという呼び方はなかった)を選ぼうとすると、同じトヨタで言えば「ランドクルーザー」などのフレーム付きで副変速機が装備されているような、ヘビーデューティーな“オフロード4輪駆動車”しかなかった。

 ジャングルの道なき道を分け進むようならいざ知らず、ほとんどの人とほとんどの用途には明らかにトゥーマッチだった。そこまでの悪路走破性の代わりに、乗りやすさや静かさなどを求めたい。そんな要望を丁寧にすくい上げ、生産技術の進化やマーケットの変化なども追い風になって初代「ハリアー」は生まれた。そのコンセプトは初めはなかなか理解されなかった。

「あんなヤワな仕立てで、悪路を走り切れるのか?」

「シティー向けのオフロード4輪駆動車って、矛盾していないか?」

 無理もない。どんなジャンルでも、先駆ける者というのは初めはなかなか理解されないものなのだ。それでも、初代「ハリアー」は国内外でヒットした。乗用車と変わらない乗りやすさや快適性を確保しながら、4輪駆動だから多少の雪や未舗装路などに強く、荷物もたくさん入る。

 オンタイムは、仕事や家事などを的確にこなし、オフタイムには家族や仲間とフィールドに出掛けてリフレッシュすることができる。何度も繰り返すけれども、初代「ハリアー」のヒットの理由を今、思い返すと当たり前のように聞こえてしまうが、当時はそんなクルマは他に存在していなかったから、魅力と価値が理解されるのに時間を要したのである。
 クルマに限らず、この世にそれまで存在していなかった商品の魅力と価値がマーケットと人々に理解され、ヒットに結び付くのに時間を要する場合は多い。初代ハリアーは画期的で、存在自体が新しい商品だった。乗用SUVというジャンルそのものを生み出したと言ってもいい。23年後の2020年は、そのフォロワーたちで溢れ返っているではないか。

 しかし、4代目には初代のような“新しさ”はどのくらいあるのだろうか?

「ユーザーとクルマの付き合い方が変わるような性能や装備が備わっているか?」

「クルマの新しい使い方や、新たにクルマを所有してみようかと気持ちを掻き立てるフックとなるような何かを訴求しているのか?」

 前述したように、新型『ハリアー』はパワートレインをはじめとした走行面での洗練はかなり行き届いている。ハイブリッド版の万能感が間違いないが、ガソリン版の前輪駆動仕様もプレーンで良いと思った。

 しかし『ハリアー』に期待するならば、初代のような新しさをどこかに埋め込んでおいて欲しかったところだ。もちろん、ジャンルそのものを新しく作り出すようなことは、簡単にできるわけではないことは知っている。23年前と今とではクルマを巡る状況は大きくさま変わりしているからだ。

 この連載でもたびたび触れてきた通り、現代のクルマで進境著しい部分といえば、CASEだろう。Connectivity(インターネットへの接続)、Autonomous(自動運転)、Share(カーシェア)、Electlification(電動化)だ。中でも、新型ハリアーにとって最も重要なのはAutonomous(自動運転)だ。

 ご存じの通り、完全な自動運転を実現したクルマはまだこの世に存在していない。運転操作の一部をクルマに任せつつも、つねにドライバーが運転を行い、クルマはあくまでもアシストに徹しなければならない。自動運転とは呼ばずに運転支援と呼ばれるゆえんだ。前述したように、新型ハリアーではその運転支援機能であるLKASが弱い。ドライバーインターフェイス全般についての考え方も古い。

 デジタルインナーミラーや調光パノラマルーフなどが新たに選べるようになっているけれども、他車も採用しているので目新しさは乏しい。個々の新装備ではなく、初代『ハリアー』のようなコンセプトや発想の新しさで少しだけでも驚かせて欲しかった。

■関連情報
https://toyota.jp/harrier/

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

撮影/望月浩彦

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