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高校野球監督からBリーグクラブの社長に異色の転身!B2群馬・阿久澤毅社長のやる気の源

2020.07.29

 新型コロナウイルス感染拡大によって、19-20シーズンの終盤戦が打ち切りになってしまったバスケットボール男子Bリーグ。この7月に就任した島田慎二新チェアマンは「B1・B2の全36クラブを1つもつぶさない」と宣言し、10月開幕の20-21シーズンに向けてコロナ対策や経営面のテコ入れを図っている。しかしコロナ再拡大によって、8月1日に予定されていた大規模イベント規制緩和の延期が決定。最大観客5000人が最低でも8月末まで延長されるなど、プロスポーツ界を取り巻く環境は極めて厳しい。

高校野球監督からプロバスケクラブ社長へ

「我々の運営規模は2億円程度。今年からオープンハウスの完全子会社になりましたが、来季は観客をどこまでお呼びできるか分かりませんし、地元スポンサー企業もダメージを受けていて、経営環境が厳しいのは確かです。それでも『ピンチをチャンス』と捉えて取り組むしかない。まずはB2優勝・B1昇格を目指して取り組んでいきます」と力を込めるのは、B2・群馬クレインサンダーズの阿久澤社長。7月1日に就任したばかりの同氏は、高校野球監督からプロバスケクラブ社長に転身するという「異色の経歴」の持ち主なのだ。

 1960年生まれの阿久澤氏は、地元では名の知られた高校球児だった。群馬の強豪として知られた桐生高校時代には、78年春のセンバツ高校野球大会に出場。王貞治以来となる2試合連続ホームランを放つなどの大活躍し、ベスト4に進出。ドラフトの注目株となった。結局、プロには進まず、群馬大学を経て教員となり、太田、桐生、渋川、勢多農林の4高で野球部監督を歴任。教え子たちを甲子園に連れていくことは叶わなかったが、つねに「甲子園を目指す」という高い目標を掲げ、選手たちのやる気と向上心を促してきたという。

「最後の10年間を過ごした勢多農林は特に勝てないチームでした。農業高校ということで『自分たちにできることはないか』と探し、赴任2年目から校庭緑化にも取り組んだ。芝の品種や植え方を研究し、芝を育てて管理するという地道な作業を生徒と一緒にやって、4~5年がかりで全面緑化が叶った時には、全員で喜びを分かち合いました。保護者会をなくすなどの新たな取り組みも着手するなど、野球のレベルアップ以外のことに積極的に目を向けたんです。
 そういうチームでも、私は『甲子園だ!』と言い続けていました。高校球児にとって『日本一!』とほぼ同義で、シンプルですごく分かりやすかった。『よほどの努力しなければ高い領域にはたどり着けない』という現実を認識し、向上心を持って取り組む大切さを知るいいきっかけにもなったと思います。やはり『夢は大きくないとダメ』。それが私の得た教訓なんです」と阿久澤氏は高校監督教師時代を懐かしそうに述懐する。

 教員の定年まであと1年3カ月となった昨年末。予期せぬ連絡が入る。桐生高校時代のチームメートから「B2・群馬の吉田真太郎常務がコンタクトを取りたがっている」と言われ、今年1月に初めて会う機会を持ったのだ。そこでいきなり社長就任のオファーを受けたのだから、本人にとっても青天の霹靂だった。
「次期社長を探している吉田常務が、前々から親交のある元プロ野球選手の金石昭人さんに相談したところ、『<群馬の怪物>と呼ばれた阿久澤さんはどうか』と私を推薦したと聞かされました。私自身は金石さんと面識はなかったのですが、高校3年の夏、大阪で行われた招待試合でPL学園のエースピッチャーだった金石さんから連続ホームランを打ったことがある。それを彼が記憶していたというんです。まさに42年間の空白を超えた夢のような巡り合わせ。驚きと喜びの入り混じる感情に包まれました。
 バスケットボールのことは正直、門外漢だったんですが、地元の人たちをワクワクさせられる仕事ができると思い、やる気が湧いてきた。定年後も高校野球に携わろうと思っていた気持ちが変わり、早期退職してバスケに身を投じようと決意したんです」

一度おもしろさを知ったら、絶対にまた足を運びたいと思うはず

 4月から運営会社である群馬プロバスケットボールコミッションの顧問に就任。ところが3月以降のコロナ感染拡大でリーグ戦が中止になるなど、バスケ界は混乱の最中にいた。群馬も東日本大震災から丸9年が経過した3月11日に高崎アリーナで福島ファイターボンズ戦を開催する予定だったが、中止を余儀なくされる。その時点で4連勝中でB1昇格も見えていたが、結局、リーグ打ち切りが決定。B2残留という後味の悪い幕切れを強いられてしまった。

「そういう苦しい中でも、スポンサーさんやブースター(観客)からは『応援したい』『何とかバックアップしたい』と声をかけていただいています。本当に熱い気持ちが伝わってくるんです。僕はこれまでバスケと関わりの薄い人生を過ごしてきましたけど、こんなに情熱を持って向き合ってくれる方が数多くいるのかと日々、驚かされている。俄然やる気が湧いてきましたね。
 正直、会う人会う人に『大変な時に社長になっちゃったね』とも言われますけど(苦笑)、こういう時だからこそ、やれることもある。クラブスタッフは13人と少数精鋭ですが、全員が同じ方向を見て、新シーズンへの体制強化に乗り出している。昨季の平均観客は約1200人で、来シーズンはその数字をどこまで引き上げられるか未知数な部分もあります。それでも、B1ライセンスも取得できましたし、チームがいい結果を残して、少しでも観客動員を増やすように努めたい。コロナの逆風を跳ね除けて、全てが右肩上がりになるように、全力を注ぎます」

 どこまでも前向きな阿久澤氏。彼はコロナ拡大前に生観戦し、迫力に圧倒されたバスケの魅力を広く伝えていきたいという思いを強めている。
「バスケは『24秒・1本勝負』みたいな要素があって、目まぐるしく攻守の入れ替わるスピーディーな展開にハラハラさせられます。手拍子や拍手、歓声といった応援も熱狂的だし、チアリーディングや光・音響などの演出も魅力的。アリーナ全体が『異空間』になるんです。その面白さを知ったら、絶対にまた足を運びたいと思うでしょう。
 私の86歳になる母親も『本当に楽しいね。また来たいね』と心からの拍手を送っていました。母のような高齢者にとっては新たな生きがいになる。アリーナスポーツは野球やサッカーのような屋外競技に比べるとコロナ感染リスクは高いかもしれないですけど、冬は寒くないし、悪天候でも問題ない。『群馬に物凄く楽しいところがあるから、家族みんなで行こうよ』と胸を張って言える場所にすることが十分可能なんです」

 B1王者のアルバルク東京、運営規模17億円超という収益ナンバーワンの千葉ジェッツらと肩を並べるのは至難の技だが、地道に群馬の人々の理解を得て、支持者を増やしていくしかない。そのためにも、知名度の高い阿久澤氏が精力的に動き回り、人々の関心を高め、売上を増やしてことが肝要だ。高校野球で長年培った気力・体力・人間力を駆使して、群馬、そして日本のスポーツ界を変えていってほしいものである。

 

取材・文/元川悦子

長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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