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Jリーグと、藤井棋聖誕生に湧く将棋界を結びつけるアンバサダーに。マリノスのために奔走している元サッカー日本代表・波戸康広

2020.07.22

 新型コロナウイルス感染症の再拡大が懸念されているが、Jリーグは7月10日から有観客試合へと移行。スタジアムにサポーターのいる日常が少しずつ戻りつつある。2019年Jリーグ王者の横浜F・マリノスも有観客初戦だった12日のFC東京戦も上限の5000人に迫る4769人を動員。結果は1-3で敗れたものの、22日の横浜FCとのダービーを含めて今後の試合を盛り上げるべく、チーム全体が士気を高めている。

 2012年からアンバサダーを務めるクラブレジェンドで元日本代表の波戸康広氏も、クラブの広報・宣伝活動に注力する1人だ。

引退後、クラブ初のアンバサダーに

「J1再開初戦となった4日の浦和レッズ戦では、DAZN中継映像などで観戦するサポーターに楽しんでもらうべく、『F・マリノスデュアルスタジアム』をLINEライブで実施しました。僕と栗原勇蔵クラブシップキャプテン(CC)が出演し、キックオフ1時間前からトークをしたのですが、約1万7000人を超える視聴者が集まり、1万3000人がコメントを寄せてくれて、投げ銭も予想以上の金額に達するなど、大いに盛り上がりました。この企画は8日の湘南ベルマーレ戦、12日のFC東京戦、18日の鹿島アントラーズ戦も継続。スタジアムに足を運ぶことのできないサポーターにも楽しんでもらえるように努力をしています。もちろんスタジアムに来ていただける方には来場してほしいです。僕も頑張ってPRしていこうと思います」と意気込みを新たにする。

 つねに謙虚で、爽やかな笑顔の似合う波戸氏は76年生まれの44歳。兵庫県・淡路島出身で、95年に高校サッカーの名門・滝川第二高校から横浜フリューゲルス入りして、プロキャリアをスタートさせた元右サイドバックだ。98年末にフリューゲルスが消滅した後は横浜F・マリノスへ移籍。スピーディーな攻め上がりと献身的な守備が大いに評価され、2001年には日本代表入り。2002年日韓ワールドカップ出場こそ叶わなかったものの、フィリップ・トルシエ監督に高く評価された。そして2004年途中に柏レイソルへレンタルで赴き、2006年には大宮アルディージャへ完全移籍。2010年に古巣・マリノスに復帰した。若い頃から10慣れ親しんだチームで2年間、戦い抜き、35歳になった2011年末に引退を表明。クラブ初のアンバサダーという役職に就くことになったのだ。

「僕が引退した頃は、指導者として第2の人生を踏み出す人が圧倒的に多かったんです。自分は30歳を過ぎていろいろ考えることが増え、『現場以外からサッカーに携わりたい』という思いが強まった。それに向けて『(株)コラソン』という自分の会社を設立し、サポーターやスポンサー、クラブスタッフの方々により近い場所で仕事ができないかとクラブに相談したところ、幸いにも『アンバサダー』として契約してもらうことができた。僕は本当に幸運だったと思います。
 とはいえ、アンバサダーというのは、全く未知数な仕事。今でこそ、各クラブにそういった人材はいますけど、当時は皆無に等しかった。僕も最初はふれあい活動やチケット販売などマリノスがやっている取り組みをゼロから学び、スポンサー回りにも帯同するなど、手探りのスタートでした。
 ある時、自分なりに営業強化策をまとめた資料を作ってスタッフに提出したら『こんなんじゃダメ』とダメ出しを食らったことがありました。そこで『淡路の雑草魂』が燃えてきた(笑)。ワードやパワーポイントで企画書を作れるように勉強して、プレゼンの仕方にも工夫を凝らすようになったんです」

 波戸氏がトライ&エラーを繰り返し、失敗時間をかけて体得したプレゼンスキルのポイントは、「キーワードを使いながら、人の心に響くような話し方をすること」だった。
「効果的なプレゼン方法について本やネットで調べたり、営業担当の営業トークを横目で見ながら、どうすればいいのかが少しずつ分かってきた感じです。一番大事なのは、人と人との関係。いくら数字やデータで示しても、心に響かないと信じてもらえない。
 僕が現役時代に指導を受けたアントニオ・デラクルス(99年マリノス監督)や岡田武史監督(2002~2004年、現FC今治代表)にしてもそれだけの話術を持っていました。岡田さんなんかはメディアの前と選手の前での発言をきちんと使い分けていたし、選手の顔を見てほしい言葉をかけてくれる。距離感の作り方が抜群でした。素晴らしい監督との出会いも、引退後のアンバサダーの仕事に生かされたのかなと思っています」

将棋界とサッカー界の架け橋に!

 マリノスで広報・営業面を本格的に担い始めた波戸氏がもう1つ、注力したのが、異業種とのマッチング。その最たるものが。将棋だ。アマチュアながら二段の腕前を持つ彼は、今月の棋聖戦で藤井聡太新棋聖に敗れた欧州サッカー好きの渡辺明二冠、熱心なコンサドーレ札幌サポーターの野月浩貴八段らと親交を深め、将棋とサッカーをつなぐ活動を意欲的に手掛けているのだ。

 将棋に関する最初のアプローチは、2012年のモンテディオ山形のJ2リーグ戦での将棋親善大使だった。将棋の駒の産地で知られる天童にNDソフトスタジアム山形がある縁で、波戸氏が呼ばれたのだ。他チームの試合だったが、マリノス側も快く送り出してくれて、いい布石が打てたという。
 その後、2014年に日本将棋連盟から「将棋親善大使」を正式に委嘱され、定期的にイベントに参加。マリノスでもサッカーと将棋のコラボイベントを積極的に開催するようになったのだ。

 とりわけ、規模が大きかったのが、2016年7月のアビスパ福岡戦での「将棋×サッカーコラボイベント」。波戸氏は将棋の阿久津主税八段、広瀬章人八段、野月七段らとともに参加。乃木坂46の伊藤かりんさんを招いた公開対局なども行って、将棋とサッカーの結びつきを強めるのに一役買った。
「自分はもともと将棋好きで、選手の頃から遠征先で詰将棋の本を読んだりしているタイプでした。この趣味がきっかけで、現役ラストの年にマリノスの雑誌の対談で佐藤和俊七段と対局するチャンスをもらえた。それを機に棋士の集まりに呼んでもらう機会が増え、人脈が広がっていきました。
 藤井新棋聖とも、3年前の竜王戦の前夜祭で会って一緒に写真を撮らせてもらって話しましたけど、本当に受け答えがしっかりしている。客観的に自分を見ることもできるし、とても現役の高校生とは思えない落ち着きぶりでした。近い将来、マリノスのイベントにも来てもらえるように、今から積極的に働きかけていくつもりです」と波戸氏は目を輝かせる。

 将棋界もかつては新聞社主催のタイトル戦が大半を占めていたが、ネット普及に伴い、大手メディアのスポンサー料が減少。棋聖戦の「ヒューリック」に代表されるように、他のスポンサー参入が目立つようになった。Jリーグもクラブによって環境はまちまちだが、このコロナ禍で新たなスポンサーを発掘しなければならない状況なのは間違いない。両者が協力し合えれば、支援先探しも円滑に進む可能性は高くなる。そういった相乗効果をもたされるように、波戸氏は将棋とサッカーの懸け橋として尽くしていく覚悟だ。

「115m×60mのピッチでゴールを奪い合うサッカーと、9×9マスの盤上で玉を取りに行く将棋はすごく似ていると思うんです。両者のネットワークを融合できれば、ビジネスチャンスも広がる。必ずいい方向に進むと確信しています。
 僕は足掛け10年間、マリノスのアンバサダーを続けさせてもらっていますが、そろそろ目に見えるメリットをもたらさなければいけない立場。今は各スポンサーさんもコロナによる大きなダメージを受けています。ご支援を継続してもらうように働きかけるのはもちろん、新規開拓も貪欲に進めていく必要がある。自分から率先して営業活動に乗り出し、これまで以上にクラブの役に立っていきたいと思いを強めています」

 恩義のあるマリノスを支える活動を最優先に考えつつ、自身の会社である(株)コラソンのてこ入れを図りたいというのが、波戸氏の今後のビジョンだ。現在は美容部門を担う妻との2人体制だが、いずれは引退した選手のセカンドキャリア支援、イベント実施、新たなサービス展開など多角化を進めていければ理想的だ。
 かつて猛然とタッチライン際を疾走していた韋駄天サイドバックは、引退後10年という節目を機に、ビジネスの世界でも一気に駆け上がって行くはず。波戸氏のさらなる活躍を楽しみに待ちたい。

取材・文/元川悦子

長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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