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主演女優はカンヌ国際映画祭女優賞獲得!新種の魔花に注ぐ母の愛から始まる新感覚スリラー「リトル・ジョー」

2020.07.19

■連載/Londonトレンド通信

 シングルマザーでもある花の研究者アリスが、新種につけた名前は、息子ジョーにちなんだリトル・ジョー。もう嫌な予感しかしない。それがどう発現していくか、見守っていく映画が7月17日に公開となるジェシカ・ハウスナー監督『リトル・ジョー』だ。

 見守っていく位置にさせるのが、この映画の持ち味だ。どっぷり感情移入するでもなく、かといって、他人事として突き放して眺めるのでもなく、距離はありながら添っていく位置だ。

 主人公とともに泣き、笑い、という一体感を求める向きには物足りないかもしれないが、地味なようで凝った美術と抑えた演技で構築された微妙に奇妙な世界を楽しみつつ、じんわり怖さを味わいたい。

 距離を感じさせるのは、汚れがない、違和感の一歩手前くらいな舞台、そして人物だ。主な舞台は、アリスが働く研究施設と、息子と2人で暮らす家になる。気温、湿度、採光など、きっちり制御された研究施設が人工的で生活感のない場所なのは当然としても、家もまた妙にクリーンだ。モノトーンの背景で、色の美しさが強調される。

 未来を舞台にしたSF映画のような硬質な冷たさまではない。描かれるのは現代の母と子の暮らしのようだが、整いすぎ、きれいすぎだ。

 その中で描かれる、子に対する母の情、研究対象にまでその情をかけてしまう研究者という、バランスと言おうかアンバランスと言おうか、独特だ。物語の核となる母の愛に添わせながら、巻き込まない。

 その独特の雰囲気に、主人公アリス役のエミリー・ビーチャムがよくはまっている。丸くセットされたヘアあたりに、母親らしさが漂う。それでいて、乱れのない化粧、衣装も華美さは排除しつつ妙にクリーン。白衣はおろか家での服も染み1つない。

 そんなヘアメイク、衣装で整えられたビーチャムがまた上手い。母としての愛情、研究者としての情熱を持ちながら、抑えの効いたキャラクター造形をしてみせ、カンヌ国際映画祭女優賞獲得となった。

 上手いと言えば、アリスの同僚である研究者クリスを演じるベン・ウィショーも、最近では007シリーズのQなど、ギークな役に無理なくはまる人だ。

 アリスとクリスで新種リトル・ジョーを完成させるのだが、この花がやばい。世話する人を幸福な気持ちにさせるのだ。アリスは、息子ジョーのため、持ち出し禁止のリトル・ジョーを家に持ち帰ってしまう。その後、ジョーの行動に変化が現れる。クリスも様子が変と言えば変だ。

 だが、ジョーは思春期、難しいお年頃でもあり、クリスの方はアリスに恋心を抱くようでもある。一方、研究施設でもリトル・ジョーを巡っての対立、事件が起こっていく。アリスとジョーの暮らしはどうなるのか、リトル・ジョーが市場に出回る日は来るのか。果たして...

 絶妙に差し込まれる伊藤貞司の曲「Running」も印象的だ。伊藤は約半世紀前にアメリカで映画、劇、バレエなどの音楽で活躍した作曲家、演奏家で故人だが、和を感じさせつつモダンで怖さもある曲が、映画の独特な雰囲気をさらに盛り上げる。

©2019 Magnolia Pictures.ALL RIGHTS RESERVED.

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com

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