リアル会場は閑散!
株主が集まって会社の経営成績や経営方針などを議論する株主総会をオンラインで行なう「バーチャル株主総会」の開催事例が増えている。ITソリューションを活用して、株主とうまくコミュニケーションを行なおうとする現場を取材してきた。
企業の1年間の経営成績を発表し、新たな年の活動に必要な議案を審議する「株主総会」は、コンサートホールのような会場に大勢の人々が集まるイメージではないだろうか。だが、2020年3月期に決算を迎えた企業では、そんな従来の株主総会の様相とは打って変わり、新型コロナウイルスの感染予防のため、オンラインで開催することが多かった。
今回取材したアステリアのバーチャル株主総会では、株主が議決権を行使する投票システムにブロックチェーンを活用、質問もオンラインで受け付けた。登壇者は別室からオンライン会議システムを使って登壇。株主はパソコンやスマホからリアルタイムで動画配信を視聴し、質問もオンラインで行なう。株主が動画配信を視聴できる部屋も社内に用意されたが、実際に足を運んだ株主は7人と僅少だった。ちなみに昨年は184名が会場に足を運んだという。
同社が開発したソリューションでは、株主による投票の結果をブロックチェーン上に保存するのが特徴だ。ブロックチェーンによって、投票結果データの改ざんを防ぎ、より公正な投票ができるようになっている。今回ブロックチェーン投票を行なった株主は約500名、昨年の約200名と比べてもかなり増えている。
今回の株主総会について同社の平野社長は「株主の反応が見えにくかったり、実際に経営者と株主が顔を合わせるライブ感は今後の課題ですが、地方や海外にいても参加できるので株主価値の向上につながったと思います」と述べた。
Withコロナの日常は今後しばらく続くであろう。どうしても密にならざるを得ない株主総会や選挙などで、データの信頼性と公正な投票を実現するブロックチェーンへの期待は今後も高まりそうだ。
議案に対して株主が賛成または反対の議決権投票をオンライン上で行なえるソリューション。アステリア社が自社で開発した。投票情報をブロックチェーンに記録するので、記録した後の改ざんができず、公正な投票が可能に。
投票はスマホで行なえる。投票ページにアクセスして株主総会の招集通知に記載のあるログインIDとパスワードでログインするだけと簡単。
登壇者は密にならないように仕切られた区画から登壇。オンライン会議システムを活用してトラブルなく議事が進行していた。
「感染拡大対策が必要とされる企業と株主の双方にとって、
非常に大きなメリットになるはずです」
アステリア 代表取締役社長
平野 洋一郎氏
取材・文/久我吉史