
経営者と人事で異なる「人事課題」の認識
2019年4月1日に「働き方改革関連法」が施行され、2019年度は「働き方改革元年」となった。中小企業は段階的適用により対象外であった項目もああるが、自主的に法の基準に従った運用を行ったりその準備をしたりした企業もあったと考えられる。
今回あしたのチームは全国の従業員数5人以上300人未満の企業経営者および人事担当者を対象に、2019年度の振り返りに関するインターネット調査を実施した結果、2020年2月末時点で働き方改革に「現在取り組んでいる」と回答した中小企業経営者の割合は42.0%で、前年同時期に行った調査と比べ、働き方改革に取り組んでいる企業の割合が約10ポイント増となった。
「現在取り組んでいないが今後取り組むことが決定している」10.7%と合わせると、働き方改革に取り組んでいる、または取り組むことを決めた企業は半数を超えた。2019年度内に中小企業においても働き方改革の意識が高まったことがわかる。
また、調査では2020年度に取り組みたいことで人事担当者と経営者で温度差があることが判明した。
2020年度に取り組みたい課題は?経営者と人事担当者の回答割合のポイント差が大きい順
経営者と人事担当者の回答割合のポイント差が大きい順に見ると「残業時間の削減」(経営者:20.7%、人事担当者:37.3%、16.6pt差)、「人事評価制度の導入・改革」(経営者:9.3%、人事担当者:24.7%、15.4pt差)、「人材の定着化」(経営者:24.7%、人事担当者:38.7%、14.0pt差)となった。
人事担当の56.8%が「隠れ残業が発生し正確な労働時間が把握できないこと」を指摘していました。2020年度は隠れ残業をなくした上で、残業時間を削減することを課題と考える人事担当者が多いことがわかった。
「人事評価制度の導入・改革」はポイント差だけでなく、人事担当者はおよそ4人に1人にあたる24.7%が回答する一方、経営者の回答割合は1割未満の9.3%という点でも、経営者と人事担当者で課題の認識にギャップがあることがわかる。
人事担当者は自身も評価される立場であるだけでなく、周囲の社員から様々な不満も聞いていることから「人事評価制度の導入・改革」に取り組みたいと考えているのではないだろうか。
人事評価制度は社員の仕事に対するモチベーションに影響し、プロセスを含め成果を出している社員を高く評価することで全体の生産性が上がり、「残業時間の削減」にもつながる。
また適正に評価され、納得のいく処遇が得られるようになれば、「人材の定着化」にも貢献する。「人材採用」はもとより、人事評価を「人材育成」に活用することも可能だ。
人事担当者は「頑張りがきちんと評価されること」で様々な人事課題解決に近づくことに気づいているのかもしれない。
構成/ino.