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コロナ禍においても自助努力と工夫が半端ないヴァンフォーレ甲府の奮闘記

2020.06.30

新型コロナウイルス感染拡大を受け、4カ月間休止していたJリーグが27日にようやく再開された。同日はJ2・J3の合計16試合が行われたが、ともにJ1昇格を目指すヴァンフォーレ甲府とアルビレックス新潟の「川中島ダービー」は3-3のドロー。「今季はJ1・J2ともに降格なしになったんで激しい打ち合いが増える」と元北朝鮮代表の鄭大世(清水)も話していた通り、アグレッシブに点を取りに行く姿勢が目についた。

 甲府の伊藤彰監督は5人の交代枠を全て使い、終盤には元日本代表のハーフナー・マイクとベテランFW金園英学の大型FW2枚を前線に並べる「ツインタワー攻撃」を披露。それが奏功し、後半ロスタイムに3点目を奪って、勝ち点1を拾った。本拠地・山梨中銀スタジアムでの再開試合を引き分けるか落とすかというのは、今後への影響が非常に大きい。そういう意味でも、彼らにとっては前向きなゲームだったのではないか。

売上10億を死守できるか、地域のスポンサーの支援がカギ

 その甲府だが、2018年から3シーズン連続でJ2に参戦中。営業収入(売上高)はJ1に在籍していた2017年度の17億2700万円から2018年度の15億1100万円、2019年度の14億5500万円へと減少し、「今季はJ1復帰機運を高め、売り上げも伸ばしたい」とチーム一丸となっていた。そんな矢先に今回のコロナ騒動が発生。クラブにとって最大の商品である試合がない状態が続き、売上のさらなる減少が避けられない見通しとなった。

 佐久間悟代表取締役GMは「今季は10億円を死守することが必須」と強調する。彼らの場合、今季2億5700万円以上の赤字が出ると債務超過に陥ってしまうため、それだけは絶対に回避すべく、売上10億円確保という大目標に向かって営業スタッフが奔走している。
 とはいえ、コロナ対策のため、開幕から7月10日まではリモートマッチ(無観客)、7月10~31日までが最大5000人、8月1日以降がスタジアム収容規模の50%というルールが決められているため、入場料収入減は避けられない。そこで、全売上の約半分を占めるスポンサー死守は必須テーマとなっているが、そのスポンサーも甲府の場合は飲食業者や観光業者の比率が高い。彼らもコロナ禍で大ダメージを受けていて、甲府の支援を継続できるか微妙な情勢だ。
 それでも「地域のシンボルであるヴァンフォーレのために一肌脱ぎたい」と言ってくれる会社が複数あるという。

「『借金をしてもヴァンフォーレのスポンサーは継続したい』と言ってくださる会社、この厳しい時にスポンサーのカテゴリーをランクアップしてくださる会社があったりと、地域に支えられていることを実感しています。私たちも緊急事態宣言が出ていた間は飲食店のテイクアウトの宣伝を手伝ったり、ホテルの営業協力をしたりと、少しでもお役に立てることを考えて駆けずり回りました。
 そういう中、27日の新潟戦を迎えられましたが、リモートマッチで観客不在。それでも何とかスポンサーさんの露出を増したいと考え、中継映像に映りやすいように看板広告をメインスタンド側向けに配置。バックスタンドの低い位置にスポンサーバナーを大量掲示する取り組みを行いました」と営業担当の井尻真理子さんもしみじみと語る。

 実際、新潟戦当日の山梨中銀スタジアムでは260社の看板広告やバナーが所狭しと置かれ、企業名が多くのサポーターに見えるような配慮がなされていた。甲府のリモートマッチはこの1試合だけで、このトライも1回のみだが、チームの営業努力をスポンサー企業も好意的に受け取った様子だ。録音されたサポーターの応援歌を試合中に流す取り組みも行われ、選手や監督も熱気と興奮を強く押し出しながら奮闘した。こうしたピッチ内外の必死さはDAZNの中継越しにも十分、伝わったはず。試合に関わる全ての人々の試行錯誤が甲府の新たな一歩になったと言える。

新応援スタイル』の中で観客の安全をいかに守るか?

 次なる課題は、観客動員が可能になる7月10日以降の対策だ。この段階では「前後左右の間隔を1m空ける」と定められているため、山梨中銀スタジアムの場合は座席の横2席と前後1列ずつを空けた状態でお客さんに入ってもらうことにしている。となると、入場可能なのは3100人。うち1000席程度はスポンサーにチケットを割り振るため、一般観戦者は2000人強しか入れないという

「今季はシーズンチケット購入者が5000人、ヴァンクラブの会員が2000人いますから、その合計7000人に対してまずチケット優先販売を実施。2日後に一般販売を行います。8月以降は7500枚程度売れるようになるのでまだいいですが、熱心なサポーターにどれだけ入っていただけるかが心配ですね」と運営担当の植松史敏氏は言う。
 ただ、観客入場が可能になっても、応援スタイルは様変わりする。コロナ対策のため、飛沫の飛びやすい応援歌や大声援を送るのは禁止。横断幕だけは持ち込めるが、これまでのようにゴール裏で肩を組んでチャントを歌ったり、ハイタッチをしたりといったことは一切できなくなってしまうのだ。
「今後も録音の応援歌を流すかどうかは今、検討しています。自然発生的な手拍子や掛け声はいいんでしょうが、それだけだと雰囲気が盛り上がらないと考えるお客さんもいる。これから『新応援スタイル』を一緒になって模索していかなればいけないですね」(植松氏)

 これまでとは違った形で「観客のいるスタジアム」は戻ってくるが、入場時の厳戒態勢は継続せざるを得ない。今回の新潟戦でも、報道陣はゲートで名前や住所、電話番号や体調の記入を求められ、サーモメータ-で検温してからスタンドに上がったが、今後は観客も全く同じことを要求されるのだ。
「3100人が入れるようになった時、入場時の対応がスムーズに行くかは懸念している点です。今、Jリーグからはサーモメータ-7台を借りていて、スポンサーの『くすりのサンロード』さんからも検温機器を提供していただいたので、それも活用しながら対応します。ただ、全入場ゲートでボランティアや委託スタッフに作業を一任するわけにはいかないので、20人程度しかいないクラブスタッフが手分けして当たることになる。本当に大変ですが、安心安全の試合開催を実現するためにクラブ一丸となって必死になって取り組みます」(植松氏)

 今までのようにスタジアムに気軽に足を踏み入れられなくなるため、「面倒だ」と感じて足が遠のく観客が出る恐れも否定できない。それは経営面にとっては大きなマイナスだ。何とかその事態を避けつつ、万全なコロナ対策を講じて「安心」と「楽しみ」を両立させていくことが重要だ。甲府のような有力な親会社を持たない地方クラブの場合は、全てが自助努力と工夫に委ねられる。何とかこの苦境を乗り越え、J1昇格の悲願を果たすべく、前進していってほしいものである。

取材・文/元川悦子

長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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