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メディア美学者・武邑光裕氏の提言「パンデミックより恐ろしいインフォデミックに備えよ」

2020.06.27

 発売中のDIME8月号では「新しい働き方マニュアル」と題し、コロナ時代を生き抜くヒントを識者31人に取材している。今回はその中の一人である武邑光裕氏の取材の中からスペースの都合で本誌に盛り込めなかった内容を大幅に追加し、ご紹介する。

 ドイツのベルリンで最先端のスタートアップの動向や、テクノロジーのトレンドを追いかけるメディア美学者の武邑光裕氏。彼から見えるの視点は、日本語優位の情報空間とは違う、新しい気づきを与えてくれている。

武邑光裕(たけむら・みつひろ)。メディア美学者。日本大学芸術学部や東京大学大学院な
どで教授職を歴任。80年代よりメディア論で注目され、インフォデミックの研究講座を持つなど、この分野にいち早く警鐘を鳴らしていた。ベルリン在住。

[武邑氏の考えるコロナ時代の3つの提言]

・イノベーションの注目分野はグリーンテックとオフィステック
・パンデミックより恐ろしい「インフォデミック」に備えよ
・平時における危機想定でリーダーシップが問われる

危機を好機に変えるイノベーションが加速

 いま世界的なスタートアップの集積地としても知られるドイツのベルリンに在住し、テクノロジーのトレンドや、時代の新しい潮流を発信するメディア美学者の武邑光裕さん。彼は、「一足先に経済の再起動を始めたベルリンに暮らしていると、こうした危機をイノベーションの好機と捉え、社会を進化させる動きが目立ちます」と話す。

 そのひとつが、テレワークへの急激な対応を余儀なくされているのと同じくらいに求められている、オフィスを見直そうとする「オフィステック」の分野だ。

「コロナ後の世界では、そもそもオフィスが必要なのかという根源的な問いから始まり、人と人の間を6フィート(約1・8m)を空けて作業ができるレイアウト、夜間はUVでオフィス内の殺菌、非接触で操作するエレベーターを備えるなど、様々な試行錯誤がされています」

 武邑氏は、テクノロジーがオフィス環境を改善する余地はまだまだある、と考え、従来のオフィスのワークポリシーの再定義が迫られていると言う。

「こうしたオフィステックやレジデンステックの分野は、コロナ前からありましたが、その動きはコロナ後に加速している印象です。

 前提として認識しておくべきなのは、ワクチンや特効薬が開発されたとしても、2~3年後には、次のコロナウィルス、次のパンデミックが来るかもしれないことです。私たちは、今後も大規模な感染症と共存していかないといけません。これを見越した対応が求められているのです」

 また、「オフィステック」と並んで動きが活発化しているのが、「グリーンテック」だと武邑氏は話す。

「地球温暖化や気候変動への対策を加速させる『グリーンテック』の動きも目立ちます。ヨーロッパではロックダウンが行なわれたことで、空気がきれいになりました。大都会のベルリンでも、満天の星空が見えるようになったのは感動的です。これを一度体験したら後戻りはできません。そうした新たな日常のために、イノベーションを加速させる動きは活発です」

 武邑氏は、もう以前の社会には戻らないのだから、コロナ禍を受動的に受け止めるだけでなく、能動的に受け止めるプロアクティブな動きによって新しい社会に変えていく動きを、イノベーションが牽引しているという。これは、時代の要求であり、それをリードするスタートアップの成果を押し上げているのだとか。こうしたテックラッシュの軌道修正がベルリンではトレンドだ。

 また、コロナ禍を気に新しい取り組みにチャレンジするスタートアップを応援する機運が日本でも高まることを、武邑氏は期待しているようだ。

パンデミックよりも「インフォデミック」を怖れよ

 メディが美学者の武邑氏の活動のひとつとして、メディアやインターネットなどの公共空間において医療情報が伝わることを研究する日本予防医学リスクマネージメント学会で、2003年から理事を務めていた。その当時から、科学的根拠に基づかない不正確な情報や、フェイクニュースなどの蔓延が情報感染、いわゆる「インフォデミック」を引き起こすことに警鐘を鳴らし続けていた。

「今回のコロナ禍で心に留め置きたいのは、感染症が世界規模で起きるパンデミックと同じくらい、デマやウソが出回ることで人々が不安になる『インフォデミック」が恐ろしいことです」

「インフォデミック」は、従来は正確な情報を伝えると信じられていたマスメディアへも匕首を突きつけた。それまでは、情報を取捨選択し、正確な情報を伝える存在として期待されていたマスメディアは、その役割を果たせなかった、と痛烈に批判する。

「従来は真実の守護者とされたマスメディアは、SNSやWebメディアにおいて、エビデンス(科学的な根拠)に基づかない情報の洪水が押し寄せ、為す術がありませんでした。そこでは本来行なわれるべきトリアージ、つまり報道されるべき優先順位の選別が全く機能しませんでした」

 そして、こうした「インフォデミック」に一般大衆は踊らされた。

「情報の受け手も、十分に内容を確認しないままフェイクニュースに踊らされた。今後は発信元やエビデンスを検証し続けていく必要があるでしょう。これは今後の大きな課題です」

 武邑氏が「インフォデミック」に危惧する背景には、フェイクニュースや陰謀論を「駆使」して大衆を扇動したナチスドイツの記憶が呼び起こされたベルリンに住んでいるからだけではない。ソーシャルメディアのプラットフォームにおける公共空間が、前近代のような様相を呈しているからだ。

「(米国の)トランプ大統領や、一部のポピュリスト、そして権威主義的な国家体制を持った指導者たちは、このパンデミックを、インフォデミックに利用していこうという詐術に長けていると思います。そして、いまソーシャルメディアの公共空間は、まるで君主制の社会のようです。

 なぜならば、ソーシャルメディアでは、それぞれの『絶対君主』たちが、評価や、評判を取り付けるための装置に堕している。そして、知らない間に市民たちは『公共空間で自由な意見を言える』という幻想のなかで、君主を褒め称えることに邁進し、結果として、君主制を維持するための搾取の環境になっているようです」

 あなたは、ソーシャルメディアの中の「専制君主」の発言を褒め称えていることはないだろうか。また、「専制君主」のように振る舞っていたり、そう有りたいと思っていることはないだろうか。武邑氏の指摘は、ソーシャルメディアが持つ根源的な課題を浮き彫りにしているようだ。

 その一方で、〝信頼できるけれど、古くさい、VWのビートルのようだ〟と形容されていてメルケル首相の、理性的で誠実なリーダーシップは、強烈に印象に残ったと武邑氏は話す。

「今回、ドイツでは支持率も下がり、死に体だったメルケル首相が強力なリーダーシップを発揮し、再評価されました。これは平時における危機想定、危機における指導力の発揮がリーダーに求められるという示唆を与えてくれます」

 とくに武邑氏は、ドイツ国民の6割が視聴したとされる、3月18日に行なわれたテレビ演説が決定的だったと振り返る。そして、日本のリーダーとの違いを指摘する。

「一方、日本のリーダーはどうだったでしょうか。あまりにも危機に脆弱で、外からは迷走しているように見えました。「自粛」「お願い」で非常事態を乗り切る発想は、海外では理解されません。そもそも「自粛」は外国語に翻訳不能です。政府が謳う「日本モデル」とやらは厳しく検証される必要があるでしょう」

 メルケル首相のテレビ演説はドイツ大使館のウェブサイトに日本語訳が掲出されている(こちら)。一方、安倍首相が緊急事態宣言を発出した4月7日の会見内容も首相官邸のウェブサイトに全文が掲出されている(こちら)。

 まずは、これらの情報源にアクセスし、自分の頭で考えてみる--武邑氏が怖れる「インフォデミック」に罹らないためには、そうしたアクションが必要なのだろう。

※この記事は、6月16日に発売された『DIME』8月号「各界の識者31人が大胆提言![ポストコロナ時代を賢く生き抜く!]新しい働き方マニュアル」の内容を、加筆修正したものです。特集の詳細は、本誌をご覧ください。

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※電子版には付録は同梱されません。

取材・文/橋本 保

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