コロナ禍の影響でテレワークとなり、今もなおその状態が続いているビジネスパーソンもいるだろう。特にテレワークは仕事とプライベートの線引きがむずかしく、「ワークライフバランス」がとりにくいともいえる。
そこで今回は、ワークライフバランスに詳しい識者にコロナ時期のワークライフバランスのコツについて聞いた。
【取材協力】
土内 麻美さん
ソリッドインテリジェンスでソーシャルメディアデータを用いた多言語での調査プロジェクトを担当。主に観光関連のプロジェクトに従事。ワークライフバランスの取れた働き方を推進している。
株式会社ソリッドインテリジェンス
https://solid-i.co.jp/
オーストラリアと日本のワークライフバランスが大きく異なるところ
世界中のソーシャルビッグデータの調査・活用やコンサルティングなどを行うソリッドインテリジェンス株式会社で、マネージャー職を務める土内麻美さんは、新卒で入社したコンサルファームでのハードな働き方に体がついていかず、退社してからオーストラリア大使館で働き、オーストラリアの仕事への価値観を目の当たりにしたことで、ワークライフバランスに興味を持ちはじめた。
そんな土内さんは今、ワークライフバランスのとれた働き方を推進しているという。
そもそも、オーストラリアと日本のワークライフバランスで大きく異なるところはどんなところなのか。
「オーストラリア人は仕事よりも、健康やプライベートの予定や家族が最優先という価値観を共通して持っています。休暇を大事にするので『休暇の飛行機のチケットを取ってしまったらもうキャンセルはしない』という風土で、後から重要な仕事が入った人も、予定通り休んでいました。自分の子どもが生まれるタイミングと重要な仕事が重なった人も、他の人を代理に立てて休んでいました。その方は男性でしたが、そのまま当たり前のように育休を数週間取っていました。それ以外にも、制度面では、時間単位の代休や、休暇用の有給と別に病欠用の有給がありました。根本的に日本とは価値観が違うので、制度的にも風土的にも違うと感じました」
在宅勤務でのワークライフバランスを保つ5つの方法
オーストラリアの価値観を知り、日本でもワークライフバランスを実践している土内さん。特に今、在宅勤務でワークライフバランスを保つにはどうすればいいか、5つの方法を挙げる。
1.適度な運動をする
「在宅勤務は通勤もなく運動不足になりがちなので、平日の仕事前・休憩中や、土日にランニングや筋トレなどの運動をしたほうが良いと思います。頭の働きも良くなりますし、気分の切り替えもできます」
2.昼休みはきっちり休みを取る
「在宅勤務はずっと働き続けてしまいやすい環境なので、休憩はしっかり取ったほうが良いです。仕事と休憩の時間のメリハリをつけることで、だらだらと仕事をしてしまいがちなのを防ぐことができます」
3.常に計画を立てる
「計画を立てて、それに沿って行動することが在宅勤務ではより重要になります。私の場合はOutlookで常に毎日の予定を立て、プロジェクトのタスクはWBS(Work Breakdown Structure/作業分解構成図)で管理し、急なタスクが立て込んだ場合はExcelで別途、予実と進捗を管理しています。自分が今することを可視化すると、無駄に時間を消費することがなくなります」
4.仕事の優先順位をつける
「特に仕事量が多い場合などは、仕事に優先順位をつけることが大切です。例えばいつまでにどのくらいやるべき仕事か、どこに注力すべきかを念入りに確認することで必要な仕事に重点的に時間を割くことができます」
5.決めた時間内で仕事をする
「時間を決めずにダラダラ仕事をすると生産性は上がりません。時間に厳格になり、決めた時間内で仕事を終わらせることが大切です。生産性は『アウトプット÷インプット』で表すことができますので、時間を意識して仕事をすることで生産性が高まります」
ONとOFFの区別をしっかりつける工夫とコツ
ONとOFFをしっかりすることが重要だと土内さんは強調する。しかし在宅ではなかなか区別がつきにくいのが現実だ。ONとOFFの区別をしっかりつける工夫やコツはあるだろうか?
「在宅でON/OFFの区別をつけるには、まず時間をしっかり意識することだと思います。いつもの始業時間に勤務を開始し、勤務終了時間に仕事をやめることが大事です。
在宅だと残業へのハードルが下がってしまうので、残業が長くなりがちですが、勤務時間が伸びると生産性を上げようという意識が低くなるので、まず時間で区切って、その中でやるべきことをやるようにすることが生産性を上げるコツだと思います。
また、今日は何時までに何をするか、明日は何をするかなどを事前に計画しておくと、限られた時間で必要なことに集中して時間を使えます。
その他、私自身、仕事前後で部屋の雰囲気を変える、仕事前後や昼休みに運動するなどしてリフレッシュ・運動を心がけています」
在宅勤務は時間にルーズになりがち。そこをいかに明確に意識するかが、ワークライフバランスを保つ分かれ道になりそうだ。
取材・文/石原亜香利