
Withコロナ時代のビジネスパーソンは、「テレワーク」と上手に付き合っていく必要がある。しかし、テレワークには不安や孤独を感じやすいという課題があるのも事実だ。
そんなテレワークの浸透に伴う不安感や孤独感の実態及び解消法を探ることを目的にした意識調査がこのほど、パーソル総合研究所によって実施されたので、紹介していきたい。
テレワークに関する不安
■(1)テレワーカー本人の不安
テレワーカー本人が抱いている不安の1位は「相手の気持ちが察しにくい」で39.5%、2位は「仕事をさぼっていると思われないか」で38.4%(図表1)。
テレワーカーの不安に関する設問として12項目を用意したが、いずれの項目についても30~40%程度の人が不安を抱えていた。また、12項目のうち1つでも不安を持っている人の割合は 64.3%であり、何かしらの不安を持っている人は多い。
■(2)テレワーカーをマネジメントしている上司の不安
テレワーカーをマネジメントしている上司の不安の1位は「業務の進捗が分かりにくい」で46.3%、2位は「相手の気持ちが察しにくい」で 44.9%(図表2)。
上司の不安に関する設問として9項目を用意したが、いずれの項目についても30%後半~40%後半の人が不安を抱えていた。9項目うち1つでも不安を持っている上司の割合は75.3%であり、テレワーカー本人よりも多い。
■(3)テレワーカーに対する出社者の疑念・不満
テレワーカーに対して出社者が抱いている疑念・不満の1位は「さぼっていると思うことがある」で34.7%、2位は「相談しにくい」32.3%(図表3)。テレワーカーに対して1つでも疑念・不満を持っている出社者の割合は58.1%。
■(4)テレワーカーと出社者の気持ちの比較
テレワーカーが不安に思っているほどには、出社者はテレワーカーに対して疑念・不満を抱いていない(図表4)。ただし、出社者も20~30%程度の人が疑念・不満を持っているため、注意は必要。
■(5)テレワーカーの孤独感
テレワーカーで「孤立していると思う」と回答した人は 28.8%(図表5)。また、テレワークの頻度が高いほど孤独感は高くなる(図表6)。
職場のテレワーカー比率と心理的ストレス
■(1)テレワーカー比率と不安感・孤独感
職場におけるテレワーカーの比率が2~3割のときに、テレワーカーの不安感や孤独感がピークとなった(図表7)。職場においてテレワーカーと出社者が混在している「まだらテレワーク」がもたらすテレワーカーへの心理的ストレスには注意が必要。
■(2)テレワーカー比率と出社者の疑念・不満
職場におけるテレワーカーの比率が高くなるとともに、テレワーカーに対する出社者の疑念・不満も高くなっていく(図表8)。
テレワーカーの不安と転職リスク
テレワークで評価面の不安を持っている人は転職意向が強くなっている。上司からの公平・公正な評価に対する不安が当てはまる人は、当てはまらない人に比べて転職意向が1.8倍。仕事をさぼっていると思われないかという不安が当てはまる人は、当てはまらない人に比べて転職意向が1.7倍(図表9)。
テレワーカーのマネジメント
上司とのコミュニケーションについて、リアルな場で顔を合わせる「対面」の場合と、リアルな場で顔を合わせない「非対面」の場合を比べると、「非対面」の方が「報告」「連絡」「相談」「雑談」のすべてが行われない傾向にある。
また、「非対面」の中でも、テレワークでよく使われるだろう「Web会議、テレビ会議」では、それらがさらに行われていない(図表10)。
観察力が高い上司は、テレワーカーと信頼関係を築いている。上司と部下の信頼関係はテレワーカーの評価面の不安や孤独感を抑制していた。さらに、出社者のテレワーカーに対する疑念・不満感の抑制も確認された。
分析コメント~「まだらテレワーク」のリスクに注意すべき。マネジメントに工夫が求められる~
今後、テレワーカーと出社者が混在する「まだらテレワーク」と言える職場が増えていくだろう。
「まだらテレワーク」の職場では、テレワーカーが少数派になることで周囲の目が気になって心理的なプレッシャーが増し、不安感が増す。最も不安感が高いのはテレワーカーの比率が2~3割程度の職場だ。出社者がテレワーカーに対して疑念・不満を抱いている点も無視できない。マネジメントとして以下が求められる。
■(1)観察力(部下に関する情報を把握するスキル)を高める
上司が把握すべきなのは、部下についての「スキルに関する情報」「業務に関する情報」「キャリアの意向に関する情報」である。これらをきちんと把握することで、テレワーカーが抱える評価面の不安を緩和できる。
また、ただ上司が把握すればよいわけではなく、部下に「見ていること」が伝わることも重要だ。きちんと見ていることを共有することで部下と信頼関係を築き、不安感や孤独感を軽減することにつながる。
■(2)部下とのコミュニケーションを意識的に増やす
遠隔地での部下とのコミュニケーションは、実際に顔を合わせたときよりも、量と質を一層充実させる必要がある。雑談から部下の情報が得られることもある。
■(3)出社者の疑念・不満感も無視しない
「まだらテレワーク」の職場では、テレワークが原因となって職場の人間関係に“ギスギス感”が生まれる可能性がある。このことを念頭に置き、テレワーカーだけではなく、出社者をフォローすることも忘れてはいけない。一人ひとりに寄り添ったフォローをしていくことがマネジメントの鍵になる。
<調査概要>
調査名称:パーソル総合研究所「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」
調査目的:テレワーカーの不安感や孤独感の実態を把握し、それらの解消法を探る。
調査手法:調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
調査時期:2020年3月9日~3月15日
調査対象者
●共通条件:
全国、正社員、20~59歳男女、企業規模10名以上
●個別条件:
1 テレワーカー【メンバー層 n=1000】テレワーク勤務の条件は以下。
【1】モバイルワーク・在宅勤務・サテライト勤務のいずれかの実施者
【2】テレワークの勤務時間は問わず、1時間でも実施したら「1日」とカウント
【3】テレワーク3形態の合計頻度(カウント方法は【2】)で、2019年12月~2020年2月の期間内に1ヵ月あたり平均2日以上 テレワークを実施した者
2 同僚にテレワーカーがいる出社者(非テレワーカー)【メンバー層 n=1000】
3 テレワーカーをマネジメントしている上司層【n=700】条件は以下。
2019年12月以前から、1ヵ月あたり平均2日以上テレワークを実施した部下をマネジメントしていること
※1、2は性年代構成比が極力同質になるようにコントロールしてサンプル回収を実施
実施主体:株式会社パーソル総合研究所
出典元:株式会社パーソル総合研究所
構成/こじへい
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