
緊急事態宣言が解除された後、生活は微妙な状況が続いている。第二波、第三波が懸念される中、外出も思い切ってできないところもある。今後の生活はどうなっていくのか。
Googleのデータサイエンティスト尾崎隆氏によるレポート「『外出したい』けど……揺れる気持ちが検索動向に──Google トレンドに見る緊急事態宣言解除後の変化」では、6月3日までに Google トレンドに反映されたデータを活用し、さまざまな角度から生活者の変化が考察されている。この中から気になる内容をピックアップし、今後の流れを探ってみた。
外出したいがなかなかできない微妙な心情
●「国内旅行 いつから」に切実な欲求が
新型コロナの影響で低迷していた「国内旅行」の検索が、ゴールデンウィーク明けから大きく回復。5 月後半には一時的に2019 年、2018 年同時期の傾向を上回った。
「国内旅行 いつから」は、ゴールデンウィーク明け以降、大きく上昇。その真意は?
Twitter上を見てみると、「国内旅行っていつから許されるんですか」「楽しみないとがんばれない」「〇〇に早く行きたいのに…」などの投稿が目立つ。多くの人の欲求が感じられるキーワードといえる。
別の調査でも人々の欲求を知ることができる。女性向け動画メディア「C CHANNEL」が、F1層を対象に緊急事態宣言解除後に関する意識調査を実施したところ、今後、やりたいことのトップ3は、1位「友だちに会う」(84.6%)、2位「外食」(74.2%)、3位「国内旅行」(68.3%)となった。
また、ヴァリューズが、2020年4月30日~5月7日に国内の20歳以上の男女25,884人を対象に、新型コロナウイルスの感染拡大によって変化した働き方や消費意識に関するアンケート調査を実施した結果、コロナ収束後にやりたいことのトップ3は、1位「国内旅行」(55.4%)、2位「外食」(51.9%)、3位「遊園地・テーマパーク・動物園などへのお出かけ」(31.8%)となった。
国内旅行のみならず、そろそろ友達と気軽にご飯を食べに行きたいニーズもあることがわかる。
●「カラオケ」はテレワーク需要も
具体的な外出ワード「キャンプ」や「動物園」、「美術館」や「博物館」「水族館」などの室内施設の検索も5月末より少し上向きに。
また興味深いのが「カラオケ」検索が上昇している点。分析によれば、カラオケは 1 人で行くことも可能だし、誰かと行く場合も、部屋の中にいるのは自分が知っている人だけ、ということが関係しているかもしれないという。また「カラオケ」の関連検索に「テレワーク」があり、仕事場としての需要もあることがわかる。
ちなみに「ジム」の検索も回復傾向にあり、外出自粛、テレワークで運動不足の中、再開の目処を確認している人たちの存在がいることがわかる。
「テイクアウト」は減少、「レシピ」は高い水準のまま
食生活にはどんな変化が出ているのか。
3月から5月のゴールデンウィークにかけ「テイクアウト」や「持ち帰り」といった検索が上昇したが、現在の検索量はピーク時の半分程度だ。それでも新型コロナウイルスが猛威をふるう以前よりも、高い水準ではあるそうだ。
外食店の利用がそれほど増えたようには感じられないため、人々はどのように食事をとっているのか。それがわかるのが「レシピ」の検索量。5 月末でも高い水準のままだという。
これは、これまであまり料理をしてこなかった人が、外出自粛をきっかけに料理をするようになり、それを今も続けているという背景が考えられる、と分析されている。
レパートリーがなくなってきた、マンネリ化してきた感も読み取れる。
Twitter上では、テレワークになって自炊しやすくなった人たちからの快適さや節約効果のメリットが投稿されている。外出自粛期間は、自炊のメリットを痛感させられた期間でもあった。今後、テレワークが解かれても、続けて自炊する人たちも多いのかもしれない。
おうち時間の楽しみは引き続き継続
外出自粛により、おうち時間が楽しむ流れもあった。
5月は「おしゃれ 家具」「ソファ」などの検索が引き続き高い水準を維持しており、自宅を快適にしたいというニーズは継続して高いという。
これは、緊急事態宣言が解除されてからも、まだ自宅で過ごすことになるだろうと考える人が多いのかもしれないと分析されている。
5月に入ってから「観葉植物」という検索が急上昇。
観葉植物といえば室内でも育てられ、インテリアの一つにもなる上に、癒し効果も期待されるという説もある、まさにおうち時間を楽しむアイテムだ。
実際、TwitterやInstagram上では、外出自粛で観葉植物を購入して育て始めたという人もちらほら見られる。新たな自宅での楽しみを見出しているようだ。
とはいえ「運動不足」の検索は引き続き高い傾向で、「ダイエット」は3月から高まり、6月頭なっても高い水準のままだという。おうち時間を楽しみながらも、運動やダイエットニーズはまだまだ続きそうだ。
昨年より上昇した特有キーワード
今年は、昨年より特有キーワードの検索が上昇したという。
変化が顕著だったのは「寄付」や「クラウドファンディング」で、4月末から上昇し、5 月に入ってピークを迎えた。「クラウドファンディング」に関しては、新型コロナウイルスの影響を受け、資金に困りはじめて利用しようかと検索する人と、困っている人を支援したいという検索、両方が考えられるという。
また、今年の5月10日の母の日は、例年以上に多く検索されたそうだ。これはECサービスで贈る傾向があったからだという。
6月21日の父の日はどうなるか。Googleトレンドの「父の日」の関連キーワードをみてみると、「父の日 2020 いつ」「父の日 ギフト 2020」が急激に増加しており、父の日市場も例年と比べて活性化の兆しが見えている。
今後は、外出自粛で覚えたおうち時間の楽しみや節約メリットを引き続き感じながら過ごしつつも、国内旅行や外食の欲求も出てきていることから、感染拡大予防に努めつつも、うまく自宅と外出、両方を活用しながら生活していくのかもしれない。いずれにしても現状、どっちつかずの微妙なラインというのは変わりない。
【参照】
「「外出したい」けど……揺れる気持ちが検索動向に──Google トレンドに見る緊急事態宣言解除後の変化」
取材・文/石原亜香利
こちらの記事も読まれています