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Withコロナ時代に安心して働ける職場とは?ウェルビーイング視点で取り組みが始まった「6フィート・オフィス」の定義

2020.06.18

 緊急事態宣言が解除され、少しずつ街に人が戻り、通勤通学の電車も以前ほどではないものの混雑し始めている。その一方で、「新しい生活様式」や「新しい日常」といった標語で、私たちは生活スタイルを変えることを余儀なくされている。その中には、オフィスの役割も含まれるだろう。ベルリン在住のメディア美学者の武邑光裕氏はFacebookの投稿で、propmodoの記事を紹介しながら、COVID-19による<パンデミックはどのように根本的なオフィス革命を引き起こすのでしょうか?>と問いかけいている。彼がシェアしている記事には、シカゴに本拠を置き、不動産サービス事業を世界的に展開するクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)の「6フィート・オフィス」が紹介されている。そのなかでは、オフィス内でも自然と社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)を確保するなどして、従業員のウェルビーイングを高める提案が数多くある。

 ウェルビーイングとは、WHO(世界保健機関)が設立の際に策定した世界保健機関憲章でも掲げているキーワードだ。健康とは、単に病気に罹っていないというだけではなく、精神的にも、社会的福祉(SOCIAL WELL-BEING)を得られるような状態であることが大切とする考え方で、ポストコロナを考える際、より注目されるはず。日本では、ウェルビーイングを「安心・安全」と言い換えることもあるようだが、それをやっておけば「安心・安全」といったお守りのようなものは、存在しない。コロナ禍は、安易に「安心・安全」を謳うマーケティングやセールストークは通用しないことを求めているのだから。

日本で取り組みが始まった6フィート・オフィスとは?

 いまC&Wの日本事務所では、「6フィート・オフィス」を段階的に導入し、顧客に提案し始めているとのことなので、取材することにした。

 そもそも、「6フィート・オフィス」とは何か。

「世界中の皆さんが、安心して職場へ復帰できるようにするために策定した6つのセーフルールに従うことを通じて、新しいオフィスの標準と、それにどう適応していくかを考える機会を提案するのが『6フィート・オフィス』です。私たちは、安全で健康的な職場こそ、“WHAT’S NEXT”(次なる潮流)であると信じています」(C&W 日本法人、オキュパイヤーサービスCOO オデュッセウス・マルケジニス氏)

 6つのセーフルールとは、人と人の間で6フィート(約1.8メートル)の距離を保つことなどのほかに、職場が従業員を歓迎していると同時に責任を意識しましょうなど、啓蒙的な内容になっている。

「6フィート・オフィス」で提唱されている6つのルール。

 そのオフィス入り口の受付には、床に「KEEP 1.5M APART」(1.5m離れてください)などと書かれたラインがあり、ここで入館手続きをする。

<私は、1.C&Wオフィスに訪問時に手の消毒をします。2.37.5度以上の熱がありません……>といったチェックリストを示され、これに同意後には、本当に熱がないかを確認するため、検温も行なう。この手続きが済むと、会議室に案内される。それぞれの会議室の入り口には、最大収容人数が大きく示されていて、それ以上は入室しないよう促す。

「現在当社では社内の会議はほとんどオンラインで行ない、会議室を使うのは主に来訪者のある時です。これは3密を防ぐ意味もありますが、それ以上に在宅勤務をしているメンバーと情報共有の隔たりが起きないようにするためです。情報共有度のばらつきを防ぎ、在宅勤務のメンバーが疎外感を感じることがないようインクルーシブなアプローチを取っています」(同社 ヘッド・オブ・マーケティング&コミュニケーションズ、ジャパン アソシエイト・ディレクターの岡安祐子氏)

受付手続きを行なうエントランススペース。床にはラインが設けられている(上左写真)。ここで来訪者はチェックシート(上右写真)を確認したうえで、検温する(中写真)。会議室入り口には最大人数が大きく示され、3密状態を作らないことを意識させる(下左写真)。下右写真は、アイソレーションルーム。

オフィスのあり方を考えることを通じて、働き方、従業員への心配りを考える契機に

 では、来訪者スペースからオフィスエリアに足を進めよう。 ここでも、少し驚く景色に出会う。

<ENTRY ONLY(入り口専用)>なのは、オフィス内を一方通行にすることで、従業員のすれ違いを軽減するための配慮。これは理解できるのだが、驚いたのはドアが全開なこと。

 従来、情報管理などの理由でオフィススペースへのドアは閉まり、施錠されているのが常識だった。だが、「6フィート・オフィス・プロジェクト」では、支障のない範囲でドアを開放しておくことを推奨する。

「来訪者スペースの入り口に受付スタッフがいるため、内部ドアは開放しています。情報管理を確保しつつ、従業員のウェルビーイングを考えるため、レイアウトと動線を見極めた判断が重要です」(岡安氏)。

 今後のオフィスは、まずは従業員のウェルビーイングを起点に考える。この入り口の景色からは、そのような意識改革をしていかないと経営者や管理者は従業員からの信頼を損なう、というメッセージが伝わってくる。

 入り口には、長らく在宅勤務をしていた従業員に向けてウェルカムキットが配られる。その中身は、マスク(使い捨てマスクと布製マスクの2種類)と除菌用のアルコール。これらを自分で用意していなかったときに向けた心配りだ。オフィスの入り口では、自分で検温して、体調を確認。これが済むと、毎日交換できる紙製デスクパッドをピックアップして、自分の机に向かう。机の上を清潔にできるうえ、気分をリフレッシュできる。

写真は、ドアが開放されたオフィススペースの入り口。入り口でウェルカムキット(中左写真)を受け取り、自分で検温して、記録する(中右写真)。使い捨てのデスクパッド(下左写真)が用意されているだけで、衛生的であり気分は違う。ドアを開放することが出来ない入り口では、順番待ちができるような工夫がされている(下右写真)。

 デスクエリアは、人が交差することを防ぐために、時計回りに移動することを原則とする。そして、それをガイドする指示用プレートが床に貼られている。

 前述した「6フィート・オフィス」の6つのセーフルールは、いずれも既にあるオフィスに少し改良を加えることで、職場のウェルビーイングを達成することを目指す。床に貼られた指示用プレートも、簡易的な粘着材がついたものなので、すぐに取り外して、貼り付け直すことができる。それぞれのオフィスにあった「6フィート・オフィス」を試行錯誤することを前提にしたコンセプトであることは、少し強調しておいたほうがいいだろう。

 そのスタンスが顕著にうかがえるのが、デスクをジグザグ座りにするレイアウトプランだ。記者が訪問した日本法人オフィスでは、従来のオフィスのレイアウトのままで、出社する人を交互にすることで、ソーシャル・ディスタンスを実現するような取り組みが行なわれていた。ちなみにフリーアドレスのオフィスは、誰が座ったかがわからないため、決まった席に座るプランのほうが、働く人の安心感を得られるとのこと。フリーアドレスのオフィスでは、少し違ったプランが求められる。

日本で一般的なオフィスを想定して作られたプラン。上左図はオフィス内を時計回りで一方通行に誘導するプランを示している。上右図は、既存のオフィス机のレイアウトのままでソーシャルディスタンスを確保する「ジグザグ座り」のレイアウトプラン。2枚の下写真は、その一般的なイメージ。手前の机の人は出社しているが、その奥のデスクの人は在宅勤務を行っている。床には、時計回りの一方通行の向きを示すプレート。

 さらに、C&Wのオーストラリア法人では、よりスペースを活かした「6フィート・オフィス」のコンセプトを提示しているが、日本のオフィスは一人ごとに割り当てられているオフィスの使用面積がそもそも少ない。

「私たちが見積もりをご提案する際の大まかなイメージですが、外資系企業では一人あたりのオフィス使用面積は約20平方メートル(6坪弱)、日系企業のそれは約13平方メートル(4坪弱)です。ここには会議室、受付、社内通路などの共有スペースが含まれているので、実際に各人に割り当てられる(ワークステーション毎の)スペースはさらに狭く、約10㎡(3坪強)とも言われています」(前出・オデュッセウス氏)

 こうした日本の実情に合わせて、どうすれば「6フィート・オフィス」で掲げるウェルビーイングな職場に近づけられるのか。いまあるオフィス空間で、在宅勤務なども導入しながらオフィスを改善していく。

 Withコロナ時代の企業の経営者や管理部門には、そうした発想転換をしないと、従業員の会社のロイヤルティは低下してしまいかねない。そうした意識改革を促すのが、「6フィート・オフィス・プロジェクト」の本当の狙いなのだろう。

 こうした職場環境を用意しようとするか、否かで、雇い主の従業員に対する意識が垣間見えてるくるはず。なぜならば、今回のコロナ禍への対応では、雇用側が「6フィート・オフィス」のような取り組みをするかしないか、どれくらいのスピード感で着手するかが可視化されてしまうからだ。たとえ、会社がどのような状況であっても、働き手のメンタル面を含めた健康、つまり社員のウェルビーイングを大事にしない会社は、今後は選ばれなくなってしまいかねない。

「6フィート・オフィス」は今後の日本のオフィスの在り方を見直すきっかけを提供してくれている。今後、オフィスや働き方に抜本的な見直しを迫られる企業も出てくるだろうが、これを前向きに捉えられるプレイヤーには好機となるのだろう。

上/C&WがYouTubeで公開している動画で提案されているデスクスペースのソーシャルディスタンスのイメージ。働く人同士が自然と距離を確保できるように、しっかりとスペースが確保されている。下/C&Wのオーストラリアオフィスの様子。ちなみに、WHOでは、社会的孤立を連想させかねないソーシャルディスタンスという表現ではなく、身体的な距離を確保することを示す「フィジカル・ディスタンス」という表現を使うことを推奨している。詳しくは、こちらの動画で紹介されている。

クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド『「6フィート・オフィス」とは』
https://www.cushmanwakefield.com/ja-jp/japan/insights/six-feet-office

取材・文/橋本 保 撮影/篠田麦也

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