2020年6月1日から、通称「パワハラ防止法」が施行された。これにより、大企業はパワハラ対策が義務となり、あらゆる面で改善が求められている。教員や公務員など、あらゆる職種、業界でパワハラが問題になっており、会社員だけにとどまらない。
そこで本記事では、パワハラの被害を受けている方がどこへ相談をすべきか、自分が周囲からパワハラの相談を受けた時はどのように対処すれば良いか解説する。
社内の相談先
会社員の方の場合、はじめに相談すべきは社内の担当部署。具体的には、人事労務部、コンプライアンス担当部署、カウンセラーなどが在籍する専用窓口、労働組合が社内の相談先として挙げられる。
口頭で話すことに抵抗がある場合は、まずはメールで「いつどこで誰に何をされたか」を伝えてみようよう。できれば「その場に誰がいたか」「記録、証拠の有無」など、具体的な根拠があることが望ましい。
「パワハラ防止法」の施行により、相談したことによる不利益な扱いは禁止されるようになった。そのため、パワハラに該当する可能性が高い場合は、ためらわず相談するようにしよう。
社外の相談先
社内に相談できる場所がない、もしくは社内での相談に抵抗がある場合は、社外の相談先を頼るようにしよう。
具体的には、厚生労働省が設置している「総合労働相談コーナー」、ハラスメント対策を専門とする企業やNPOなどが挙げられる。ケースによっては、法テラスや弁護士・社会保険労務士事務所など、法律・労務の専門家に相談するのも有効だ。
社外の相談先の中でも特に「総合労働相談コーナー」は無料で利用できる上、どのように証拠集め(ボイスレコーダーで録音、メモを取るなど)をするかなど、助言も行ってくれるため、パワハラを最初に相談するのに適している。電話での相談も受け付けているため、ぜひ活用してほしい。
ただし、公的機関は平日の朝から夕方からまでなど、時間的な制約がネック。「まずは誰かに話を聞いてほしい」「周囲に相談できる人がいない」という場合は、24時間電話・FAX・チャット・SNSでの相談を受け付けている「よりそいホットラン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター)」を活用しよう。
フリーランス、個人事業主の場合
フリーランスや個人事業主は「労働者」ではないため通常、労働法の保護を受けることができないとされている。フリーランスは本来、「取引先と対等な立場の存在」ではあるが、実際には「仕事をもらっている以上、何も言えない」と泣き寝入りするケースも少なくないようだ。
しかし、パワハラ行為を理由とする「損害賠償請求」は、労働法ではなく民法(個人間におけるルールが定められている法律)に規定されており、民法上の「不法行為」に該当すれば、取引先に損害賠償請求をすることが可能。
ただしその場合は、パワハラ加害者本人ではなく取引先自体が請求相手となるケースが多いようだ。まずは弁護士に相談するか、法テラスなど無料の相談窓口を活用しよう。
もし自分がパワハラの相談を受けたら
同じ会社の人、友人や家族などからパワハラに関する相談を受けた場合には、しっかりと耳を傾けることが大切だ。どのような状況でどのようなことをされたのか、他に見ている人がいたかなど具体的に話を聞いてあげよう。
間違っても「思い込みじゃない?」「みんな我慢してる」などと突き放してはいけない。また、相談を受けたことを他の人に話すのも絶対にやめよう。
相談を受けているということは、相談者からあなたが信頼されている証。状況に合った窓口を紹介し、できれば味方になってあげよう。ただし、パワハラを定義するのははなかなか難しいもの。「それは絶対にパワハラだ!」と決めつけるのではなく、第三者として客観的な立ち位置を保つことも重要だ。
文/oki