
テレワークが急速に進み、WEB会議デビューした人も多いのではないだろうか。もはやメールやチャットを使いこなすように、WEB会議ツールを使いこなしている頃かもしれない。
そんなWEB会議によるコミュニケーションは、コロナ以前と比べてどう変化しているのか。
組織のインターナルコミュニケーションを中心にコンサルティングしている株式会社ソフィアのシニア・コンサルタントである築地健さんに、新型コロナの影響下における社内コミュニケーションの変化の中でも、特にWEB会議によるコミュニケーションについて現場の状況や見解を聞いた。
WEB会議コミュニケーションの変化
新型コロナウイルス感染拡大を受け、WEB会議によるコミュニケーションにはどのような変化が起きているのか。目立っていることについて、築地さんは次の点を挙げる。
●WEB会議そのものに対する“心理的抵抗感”が一気に後退した
「コロナ前は、WEB会議に慣れた組織は少ない割合でした。WEB会議導入が進まない原因は大きく2つあります。一つ目は、操作方法が分からないという技術的なもの。二つ目は、対面であることが礼儀正しさの象徴であり、また、対面こそが目的とするコミュニケーション、例えば営業提案・次期計画の決議等を完遂する手段であるという社会心理的なものです。
いずれも、コロナへの対応が拡大する中で社会のムードが変わり、『使い方がわからないから』『対面でないと失礼だから』とは言っていられなくなりました。コロナという外圧によって阻害要因がなくなったので、WEB会議アプリケーションの準備ができた企業から順次急速に拡大していきました」
●“WEB会議 at Home”で個人のパーソナリティを前提としたビジネスコミュニケーションへ変化
「従来のWEB会議との違いは、“WEB会議 at Home”である点。参加者の背景像から受ける印象は、オフィスにいる彼・彼女とは明らかに異なるものです。カメラに映り込む家具や書棚、突然乱入するペットや子どもはもちろんのこと、マイクが拾う窓の外の鳥のさえずりさえも、自身を印象づける、いわばセルフ・ブランディングの一要素となります。
そうしてビジネスパーソンたちは、自らの背に自らのブランディングがあることを認識し始めました。TeamsやZoomがWEB会議用の綺麗な化粧背景を用意しているのは、セキュリティだけのためではないでしょう。
多くのビジネスパーソンは、自らのパーソナリティを仕事仲間に表出させることになるとは想像すらしていなかったでしょう。
言い換えれば、個人のパーソナリティを前提としたビジネスコミュニケーションが、にわかに広がりを見せています。1ヶ月は隠せても、3ヶ月間隠すことはできません。相互に家庭の事情も考慮できるようになり、往年の課題であったダイバーシティへの理解にもつながっているのではないでしょうか」
WEB会議コミュニケーションで新たに生まれた「型」
WEB会議におけるコミュニケーションは、従来の会議と比べてどう変化したか。またWEB会議ならではの型などが生まれていないか。築地さんに現場の状況を聞いた。
●WEBファシリテーション・WEB対話の技術にプロ意識が
「対面会議と違い、WEB会議においては、その場で得られる非言語情報が少ないです。相槌やアイコンタクトを含むボディランゲージに頼ることができず、発言のタイミングも取りづらいです。そのような中、間(ま)を意識して丁寧に話しかける、丁寧に受け取ることや、相手の話に大きくうなずいたり、挙手をして発言のタイミングを知らせたりするなどして『サイン』を出すことが大切になってきています。
WEBファシリテーション・WEB対話の技術が研がれていき、このジャンルのプロ意識に注目が集まりつつあります。すでに、この手の研修プログラムは散見されるようになり、当社への相談も増えています」
●チャット機能との併用で話の理解度アップ
「WEB会議のチャット機能との併用は、コミュニケーションを変化させました。誰かが会議中に紹介した商材やサービスの動画や画像、サイトのURLを参考資料としてチャットで送信します。これはWEBのデリバリー性やタイムリー性をうまく活用した会議術だと思います。プレゼンを聞く側は、これらをその場で確認できるので、話の理解度が違います。理解度が違うので、その後の作業や連携も円滑に進みます。会議の質が、その後の各作業や業務の品質を高めることになることを改めて意識させられます。
質問がある人はチャットに投稿してくださいというような案内も有用です。口頭では質問事項を話す時間で会議時間を消費してしまいますが、チャットによる質問は非同期性を前提としているので、時間短縮になりますし、質問を受ける側も質問をメモする必要がないので効率的です」
●グループに分ける機能で発言数アップ、自分ごと化
「未経験者が多いかもしれませんが、Zoomの会議参加者を幾つかのグループに分ける『ブレークアウトセッション機能』は、会議における発言者数を増やす結果となり、会議への参加意識を高め、議題の自分ごと化を助長すると期待しています」
WEB会議によるコミュニケーションで工夫していること
築地さん自身、WEB会議の変化を踏まえ、コミュニケーション上、どんな工夫をしているのか。
●WEB会議疲れを予防
「とかくWEB会議は疲労するという話を聞きます。以前は年数回のWEB会議だったので大して気になりませんでしたが、今は、すべてWEB会議のケースも多いです。一日の集中力と生産性のことを考えると、WEB会議は一日3回を超えないよう心がけています」
●会議前後に短いWEB打ち合わせを設ける
「顧客やパートナーとの会議の事前事後に同僚や仲間内での短いWEB打ち合わせを設けている。以前は、電車待ちのホームで、会議の振り返りや今後の進め方について意見のすり合わせができましたが、WEB会議の場合は終了したら自宅の静けさが戻るばかり。ここは、自ら意識して、『次の動き方ですが』と5分程度の電話・WEBを用いた相談時間を設けたほうが良いと思っています」
新型コロナの影響で、テレワークが急速に進み、WEB会議ももはや当たり前の会議の形となった。WEB会議コミュニケーションは、今般、最も変化の大きい分野と思われる。
今後はWEBファシリテーション・WEB対話の技術に注力してコミュニケーション力をアップさせることが一つのポイントと言えるのかもしれない。
【取材協力】
築地 健さん
インターナルコミュニケーション・コンサルタント。企業の組織内DXを推進。専門はイントラポータル、社内SNS、業務プロセス改善。
株式会社ソフィア
https://www.sofia-inc.com/
取材・文/石原亜香利
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