頭打ちといわれて久しいアパレルシーン。しかし独自の戦略で成長を続けるユニクロは別格の存在だ。躍進目覚ましい両ブランドにおける進化のカギとこれからの可能性を、頭脳派ファッションプロデューサーに聞いた。
「海外のファストファッションとは真逆の発想で進化」
ファッション・プロデューサー
MBさん
バイヤーやコンサル業など多方面で活躍するアパレル達人。自身のYouTubeには18万人が登録し、有料メルマガもホリエモンを凌ぐ1万8千人(個人配信)の読者を抱えるカリスマ。
和服の考え方と共通する部分がある
ひと昔前、ユニクロというと〝安い服〟というイメージばかり先行し、着ているのがちょっと恥ずかしいと思う人が多かったですよね。でも、今はむしろ「ソレどこの?」と聞かれたら、率先して「ユニクロ!」と答える人が増えています。意識としては「そう見えないよう上手に着こなしているでしょ?」といった感じ。今はもうユニクロを恥ずかしいと思うこと自体が恥ずかしい時代なのです。
そのターニングポイントとなったと僕が個人的に思うのは、ファッションデザイナーのジル・サンダーと組んだあたりでしょうか。〝素材吟味の鬼〟と呼ばれたこだわり派をユニクロが獲得したわけですから。彼女を口説き落とすに足る確固たる生産背景と強い信念がユニクロにあったのだと思います。
そもそもユニクロは年単位で開発し、その後何年もかけて同じアイテムを進化させつつ大量に販売します。大量に生産すれば1枚のコストは抑えられ、その分開発費に回せます。その繰り返しで完成度を高めていく。モードを次々変化させる海外のファストファッションとは真逆の手法です。昨今、海外でもユニクロが躍進しているのは、そういった手法によって高品位な素材の着心地のよさが認められたからだと思いますよ。
この考え方は〝和服的〟と僕は考えています。和服には洋服のようにジャケットやブルゾンにシャツやパンツといった多様な形がありません。大ざっぱにいって、冠婚葬祭用を含め身体全体を包む、あの形がすべてです。だから差別化を図るなら素材にこだわるのが手っ取り早い。この極めて日本的な手法が、逆に海外の人にウケたわけです。優れた素材で縫製も確実、なのに値段が驚くほど安いといった服がなかったのでしょう。
ユニクロの気になる次の一手
そんなユニクロですが、昨今は多くの著名デザイナーを起用し、ルックス的にも高感度な服を数多く展開しています。個人的には、あまりにお洒落になりすぎると一般の人が付いていけなくなる。そこはユニクロが配慮すべきポイントと思いますね。
ただ、現在は定番と最先端のバランスを図るため、トップが全商品の開発をチェックしているといいます。その〝神の目〟ともいえるさじ加減を継承できるかどうか――。それが今後のユニクロ発展のカギになるのかもしれません。
東京・銀座のほか、ロンドン、NYといった世界の主要都市など25の国と地域に店舗を構える。
同一アイテムを長年にわたり大量に販売。その利益を開発費に回し完成度を上げたアイテムは、最強の定番へと育つ。